第89話初音の不満
俺たちはくっつけた唇を静かに離した。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
あれ、沈黙?ここはもっといろいろあるところじゃないのか?
「そーくん・・・」
「・・・え?」
なぜか不満そうな初音に俺は思わず「・・・え?」と言ってしまう。
「何今の・・・」
・・・は?何今の・・・ってなんだ?
「何って・・・キスをしろって言ったのは初音だろ?」
「・・・は?今のがキス?」
「き、キスだろ・・・」
「・・・全然ダメ、まず愛がこもってないし、そもそも何今の薄いキス、ただ一瞬触れただけじゃん、もっとちゃんとキスしてよ」
「えっ・・・」
・・・嘘だろ!?俺的には今のでもだいぶ勇気振り絞ったんだけど・・・
「早く」
「・・・はい」
よくわからないけどとりあえずさっきより強めにキスをしてみることにした。
「ーーっ!」
「・・・・・・」
俺がキスをすると、今後は俺のことを突き放してきた。
「っはあっ、はあっ、今度は強すぎ・・・」
「ごっ、ごめーー」
「けど、いい♥」
「・・・え?」
強すぎッて文句言った割に満足げなのは何なんだ?
「でも、やっぱりいつも私からしてたのは失敗だね、おかげでそーくんのキスがここまで下手だとは気づかなかったよ」
「・・・・・・」
「っていうことで、今度キスの仕方についてまとめとくからちゃんと見てね?」
「・・・あ、ああ」
ま、まとめるってなんだ?まさかそれだけのためにわざわざ何か書くのか?そんな疑問を抱きつつ俺たちはそれそれが自分の部屋に入った。
「さあ・・・」
キスのこともなんかいろいろ考えないといけないけど、今はその事よりも結愛のことだ。明日からどうやっていい感じにあしらおう・・・俺的には普通に友達としてなら全然大歓迎なんだけどあの感じだと友達としては認めてくれなさそうだしな・・・
「月愛にでも相談してみるか?」
いや、だめか、今こんな不安定な状況で俺がさらに他の女の子と話したりしたら今度こそ足を削ぎ落されるかもしれない・・・冗談抜きで。
「うーん・・・」
師匠ならぎりぎりセーフか?うん、初音も師匠ならぎりぎり妹として見てるっぽいし過度な接触はダメにしてもちょっとぐらいなら大丈夫なはず。
「まあ、っていっても月愛の連絡先も師匠の連絡先も当然知らないんだけど・・・読んだら出てきたりして、なんてーー」
‘ピンポン‘
「・・・えっ、師匠?」
俺がインターホン越しの画面を見てみるとそこには笑顔の師匠が立っていた。・・・いやいや、怖い怖い怖い、まさか本当に聞こえてたのか・・・?
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