第87話俺の恋人はお前だ
「そーくん・・・♥」
「・・・・・・」
初音は喜んでいる様子だけど結愛の様子が少しおかしい。もっと落胆するかと思いきや、なぜか薄気味悪く無言で笑っている。でも、そんなことはもう関係無い、俺は真実を言っただけだ。今まで何かと結愛に対しては曖昧になっていた真実を・・・
「とにかく、そういうわけだから、これからも俺と友達としてーー」
「そーちゃん・・・私のものじゃないそーちゃんなんてそーちゃんじゃないよ、でも、もしここで私が感情任せにポケットの中とジャケットの内側にあるナイフ100本を同時に投げてもそーちゃんがいなくなるだけ・・・だから、私、昔のそーちゃんを取り戻すよ」
「昔の・・・俺?」
「うん、私に怯えていて、でも私のことを好きでいてくれていた、あの時のそーちゃんを」
「・・・・・・」
怯えているのに、好き?そんなのまるでーー
「私に‘依存‘していた時のそーちゃんに」
「・・・は?」
俺が結愛に・・・っていうかその前に依存していた時があった?そんなわけがない。
「何言ってるんだよ、俺が誰かに依存なんてーー」
「アルバムとか見ればわかるけど、小学校4年生ぐらいからかな?そーちゃんの私を見る目が怯えた子犬見たいか目でものすごく可愛いんだあー♥」
「小学、4年生・・・」
そういえばアルバムで小学4年生あたりから俺の顔が引き攣っていたのを覚えてるけど・・・だからって俺が依存していたなんて、信じられるわけがない。
「ははっ、結愛、冗談も大概にーー」
「冗談なんかじゃないよ、人間は記憶を人為的に消す方法があるらしいからね?しかも、自分一人だけで、脳内だけで、簡単に、ね?」
「いやいや・・・」
まあ、それが本当のことだったとしてもーー
「それが本当のことだったとしても過去は過去でしょ?」
「その過去の経験の経験で、今のそーちゃんができてると思うんだけど?」
「そう、その今のそーくんがあなたではなく私を選んでくれたの、いい加減認めたら?」
と、俺が思っていたけど言えなかったことを初音がそのまま言ってくれた。だが・・・
「悪いけど、そーちゃんの気持ちなんてどうだっていいの」
「・・・え?」
「だって、そーちゃんは私のだもん」
「・・・・・・」
こ、これは、何を言っても無駄かもしれない。
「もういいや、行こ?そーくん」
「ああ・・・」
もちろん一時的にだが、俺と初音は結愛がいる教室を後にした。・・・そう、これからはクラスメイトとして、嫌でも毎日会うことになる。
「今はダメでも・・・」
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