第86話初音と結愛の口論

 その後、約30分間ほど2人は口論を続けた。今は教室なので周りにいた生徒達もこの‘修羅場‘を感じ取り、そそくさと教室を後にしていた。・・・わかる。むしろ俺も早くこの場を後にしたい。だって・・・




「だから、今そーくんは私と恋人なの、それが分からないほど言語理解能力が追い付いてないなら義務教育をもう一度受けるかそれでもだめなら一回学校の屋上から落ちて来世に賭けてみるのもおすすめだよ?」




「言語理解能力が無いのはどっち?家畜のメスなんだからもし会話が嚙み合ってないとするならそれは私の言語理解能力が低いんじゃなくてあなたの知能が低いだけなんじゃないの?責任転嫁しないでもらえる?あっ、語彙力がないから責任転嫁するしか脳が無いんだね、ごめんね?」




「責任転嫁?今の私の発言のどこに責任転嫁要素があったのか簡潔に説明してもらえる?あと、私のことを人間と認知できない時点であなたの認知能力が低いことは明らかだよね?」




「家畜のメスって言うのはあくまでも比喩的表現であって実際にそうだと思ってるわけないでしょ?もしかして私が実際にそう思ってるとか思ってるならあなたの理解力がーー」




「・・・・・・」




 みたいな会話を延々と続けている。正直俺の入り込む隙なんてなさそうだからこの場を去りたいんだけどなんとこの2人、それぞれが俺の腕を掴んでいる。そして俺が抜け出そうとすると女の子の力とは思えないほどの握力で俺の腕を握ってくるので抜け出すことも不可能だ。


 これぞまさに‘修羅場‘だと思う。




「じゃああなたはなんで私にメスという表現を使ってるの?一般的には人間の性別の表現の仕方は男女のはずだけど?動物学的にはオスメスで表現するのかもしれないけど別に動物学に詳しいわけでもないでしょ?」




「だから、何度も言ってるけどメスって言うのは比喩的言い回しだってーー」




「比喩的言い回しに話を戻さないでもらってもいい?さっきからずっとそれだけだよね?」




「それはあなたがずっと同じことを言うからでしょ?数学でも1+1=2だし、1×1=1でしょ?それと同じであなたは式を変えてるだけ、わかる?」




 ・・・そろそろ俺の頭が追い付かなくなりそうだからやめてほしい。っていうかなんで恋愛関係で数学の話が出てくるんだよ、もしかして相当な理系だったりするのか?




 そして、さらに10分後、ようやく話はまた戻った。




「で?さっきからずっと黙ってるけどそーくんはどっちを選ぶの?」




 いや、あの空気で割り込めるほど俺は頭もよくなければ機転も効かない。多分超一流の詐欺師ぐらい口が回らないとあの会話に口を挟むことすらます不可能だろう。




「そうだね、こんなメスと話すのも飽きたし、そーちゃん、早く現実を教えてあげて」




 そうだな、現実を教えることとしよう。




「俺が選ぶのは・・・っていうか俺の恋人は初音だけだ」




 俺は2人に向けて堂々と言い放った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る