第83話結愛と校内探索

 校内を案内するとは言ったものの俺自身まだこの学校に来てから約二週間だ。そんなに校内の地理について詳しいわけではない。




「俺も転校したてだからそんなに詳しくはわからないぞ?」




「うん、いいよ、そーちゃんと二人きりで話したかっただけだし」




 それが本音か・・・




「ねえ、そーちゃんあんな女より私の方がーー私といたほうが安全だよ?」




 だからその下手なツンデレみたいなやつはやめてくれ。




「っていうか安全って、なんのことだ?別に命の危険なんてーー」




 ・・・感じてないわけじゃないけど、それでも俺はまだ生きてるわけだし初音だって本気で俺を殺そうとなんてしないはずだ。




「でも、私だったらそーちゃんのことを傷つけたりなんて絶対にしないよ?」




「いや、でも俺は結愛のことほとんど覚えてないし・・・」




「じゃあなんで結愛って呼んでるの?」




「えっ・・・」




 それは初音にも言われたけどしっくりくるからなんだけど、そんなことを言ったら結愛に「ほら、やっぱり私たちは過去からの赤い糸で結ばれてるんだって♥」とか言って変に結び付けられそうだからここは嘘をついて凌ごう。




「いや、別に結愛だけに限らずみんな下の名前で呼んでるぞ?」




「嘘、一応そーくんのことを好きなあのメスがそんなことを看過するとは思えない」




 なっ・・・まだ少ししか話してないはずなのに、初音のことをそこまでん分析していたのか。




「いや、その・・・も、桃雫ってちょっと長いだろ?だからーー」




「そんなくだらない理由でそーくんが呼び方を決めたりするわけがない」




「うっ・・・」




 全ての言い訳が論破されてしまった。




「で?本当は?」




「そ、その方がなんかしっくり来たから・・・」




「ほら、やっぱり私たちは過去からの赤い糸で結ばれてるんだって♥」




 おい、俺が予想した通りの文章を言ったぞ!これは俺の分析力もなかなか高いってことでいいはずだよな!?だとしたらなんでことごとく他の色んな事は予想が外れるんだよ・・・




「はいはい、そんなことより俺ができる限りの校内探索をーー」




「だからそんなのおまけだって」




 そう低い声で言うと、結愛は俺のことを壁に押し倒し壁ドンをしてきた。




「な、何してーー」




「そーちゃんは私のなんだからちゃんと所有権は示しとかないとだめでしょ?」




 そういうと、結愛は俺の首元に自分の口を近づけてきた。ま、まさか・・・




「や、やめろ!」




 俺はそう強く言うと、結愛を突き放した。すると、結愛は地面に背をついた。




「わ、悪い、ちょっと力入りすぎた」




 そう言いながら俺は結愛に手を差し出した。すると、結愛は入れが差し出した右手の甲にキスをしてきた。・・・って!




「何してるんだっ!?」




「何が「わ、悪い、ちょっと力入りすぎた」、なの?かっこつけちゃって、そーちゃんそんなに力ないでしょ?昔も、今も」




「なっ・・・」




 そういう自分でも恥ずかしいセリフだとわかってるのに傷口にタバスコをふりかけるだけではなく塗りたくるのはやめてほしい。




「さっ、そろそろ教室に戻ろっか」




 そして結愛は自分の教室へと戻っていった。




「・・・一発で来た道覚えられるのか、天才か?」




 なんていう疑問を抱きつつ俺も結愛の後を追いかけるようにして教室の中に入った。


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