第82話キスの価値
「・・・そーくん?」
「いやいや、違うって!結愛が勝手にーー」
「なんでさっき知ったばっかりのはずの名前をもう下の名前で呼んでるの?」
いや、そこは別にどうでもーーよくはないかもしれないけどなんか結愛の方が‘しっくり‘くるし・・・しっくり?
なんで俺は今知ったはずの名前にしっくりきてるんだ?
・・・やっぱり昔の知り合いなのは間違いなさそうだ。
「いや、深い意味は無いって、と、とにかくーー」
「話逸らさないで?なんで私以外の女のことを下の名前で呼んでるの?」
「呼び方なんて今はどうでもーー」
しまった・・・完全に地雷を踏んでしまったかもしれない。
「どうでも?なに?まさかどうでもいいとかいうつもり?」
「いや、まあ、どうでもよくないことはないだろうけど、別に下の名前で呼ぶぐらいーー」
「・・・・・・」
や、やばい、初音が怒っているのが目を瞑っててもわかりそうなレベルで怒っている。
「あっ、そ、その、ご、ごめん・・・」
「・・・本当に謝る気があるならキスして?」
「わ、わかった、帰ってからーー」
「待てない、今すぐ」
・・・文脈だけ見れば可愛いけど訳すると「そんなに待てるわけないでしょ?今すぐだよ、それとも何?できないの?できない理由でもあるの?あっ、そっかー、浮気してるんだもんね、ごめんね、じゃあ死んで?」と言っているのが俺にはわかる。
この文脈だけでここまで察せられる俺はもう常人ではないのだろう。
「わかった、じゃあせめて廊下でーー」
「ここでに決まってるでしょ?そーくんは私のものだってちゃんと顕示しとかないと」
「だからって、キスは見せびらかすものじゃないだろ?別にほかの誰に何と思われようとも俺たちだけは恋人でいればいいんだし」
「ーーっ!///」
初音がぽっと照れた後、顔を下に向けた。・・・自分でも思った、今のセリフは恥ずかしすぎる。でもここで俺まで下を向いてしまったらさらに気まずい空気になりそうなので俺は何とか堪えた。
そして、初音は冷静さを取り戻したのか、顔を上げるとーー
「そうだね、ごめん、キスは見せ物じゃないよね・・・」
どうやら納得してくれたらしい。
「そーちゃんっ!」
その間にあの包囲網を抜け出してきたのか結愛は俺たちの目の前に来ていた。
「結愛・・・」
「こんな女なんて放っておいて早く校内を案内してよ!私そーちゃんと‘同じ‘転校生なんだから!」
「そーくんと・・・同じ?」
「うん♥あなたは違うけど私とそーちゃんは同じ♥」
いや、同じって言っても転校生っていうことで同じってだけなのになんでそんなに得意げなんだよ・・・
「そうはいかない!」
そういうと、初音は先生の所まで早歩きで歩いて行った。・・・何をするつもりだ?
「まあ、とにかく邪魔者は消えたことだし、早く校内を案内して♪」
「あ、ああ・・・」
そして俺はなぜか結愛に校内を案内することになった。
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