第80話転校生の噂

 俺は今日もいつもと相変わらないように初音と登校し、いつも通り自分たちの教室の中に入った。けど、教室の中は何か同じ話題で盛り上がっている様子だった。




「なあ、転校生って女の子らしいぜ」




「えっ、まじで!?」




「しかも、かなり可愛いらしい」




 ・・・転校生?まだ四月の終わりぐらいの時期なのに俺含めてもう二人も転校生が来るのか。まあ、やむにやまれ事情があったんだろう。




「しかもかなりの巨乳らしい」




「巨乳!?まじで!?」




 ・・・俺は同じ失敗は二度しない男。っていうわけではない、むしろ同じ失敗を何度もしまくって何度も初音に殺されかけている。でも俺はこの失敗だけはしない。


 そう、頭の中で他の女の子のことを考える、ということだ。初音はどういうことか俺がほかの女の子のことを考えている時にものすごく敏感に反応してくる。




「巨乳かあ・・・」




「俺は白雪さんぐらいの胸がーー」




「何?」




 男子生徒たちの話に初音が割り込む。




「いや、な、なんでもないです・・・」




 そういうと、そそくさと男子生徒たちは足早に去っていった。




「はあ、本当男って馬鹿、あっ、もちろんそーくんは違うよ?」




「は、はは」




「でも、胸が大きい人が転校してくるんだね・・・」




 ・・・あれ、前の初音なら巨乳の人のことを‘贅肉‘っていう表現をしてたけど今は‘胸‘っていう表現をしている。・・・もしかしてかなり落ち込んでたりするのか?これは彼氏として励ました方がいいのかもしれない。




「い、いや、気にするなって、俺は胸なんて気にしないから」




「うん、そうだよね・・・」




 そういうと、初音は机にうずくまった。・・・ほ、ほんとに大丈夫なのか?




ー初音partー


「・・・・・・」




 贅肉まみれの豚が転校してくる。もしそいつがそーくんに色目を使ってきたらと思うと・・・




「こほっ、こほっ」




 だ、だめ、考えただけで吐きそうになる。今日はより一層そーくんから離れないようにしないと。それにしても、なんでこの時期に二人も転校生が・・・?いくらなんでも急すぎる。




「・・・急?」




 何か引っかかる。贅肉まみれでもしかしたらそーくんの近くに来そうなやつ・・・まさかっ!


 私が答えにたどり着くと、担任の女教師が扉を開けて教室の中に入って来た。そして・・・




「じゃあ、みんなー、今日は・・・いいあ、今日も?どっちでもいいやー、転校生を紹介します!はいっ!入って来てねー」




 そう女教師が言うと、廊下から一人の女が入って来た。




「・・・やっぱり」




 私がつぶやいた直後そいつは自己紹介を始めた。




「桃雫結愛です、これから一年間よろしくお願いします」




「はあ!?」




 私はある程度想定内だったけどそーくんは違ったらしい。・・・でも大丈夫、そーくんは絶対に渡さない。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る