第78話結愛との遭遇
水族館の中に入ると早速見慣れない生物がいた。あれは・・・
「クラゲ・・・?」
「そうみたいだね」
クラゲなんて生で初めて見たけどテレビとかネットで見るより全然綺麗だ。ふわふわと浮遊していて水の中だからかわからないけど少し光っている気がする。
「綺麗だな・・・」
「そーくんの方が綺麗だよ♥」
いや、だからそれ前にも似たようなことあった気がするけど俺が言うやつだと思うんだけど・・・
今からでも遅くないか?よし!言うぞ!
「いや、初音の方が綺麗ーー」
「あれ?そーちゃん?」
後ろから少し前に聞いた声が聞こえてきた。
「あっ・・・」
俺が振り返るとやっぱりその正体はあのお花見の時の女の子だった。っていうか名前いまだに知らないんだけど・・・
「この前もそうだけどせっかくそーくんが私に何か褒め言葉を言ってくれようとしたのに邪魔して・・・しかも、また私たちの前に現れるなんて、まあいつかは遭遇すると思ってたけどそれは家に押しかけてくると思ってたからで外で遭遇するなんてーー」
なんか初音がいろいろとぶつぶつ言っているけど今はその事よりもこの子をどう‘躱す‘かだ。この子には悪いけど、俺はもう初音と恋人だからこの子がどういう気持でも俺はその想いに答えることはできない。
「あんなメスのことなんて放っておいてそーちゃんは今から私と一緒にーーそーちゃんが私と一緒に回りたいなら回ってあげてもいいけど?」
だからその下手なツンデレみたいなやつやめてほしい。それのせいでさらに反応に困る・・・
「いや、大丈夫だ、じゃーー」
俺が初音の腕を引っ張って水族館を回ろうとしたら、すぐにこの子が俺のもう片方の手を握ってきた。
「待ってよ、そんなメスと一緒に居たって楽しくないってーー」
と、言った瞬間、初音が「はっ・・・」としてすぐにこの子の手を俺から振りほどいた。それも当然だ、自分のことをメス扱いされたんだしーー
「なにそーくんに勝手に触れてるの?」
いや、そこ?メス扱いされたことに対してじゃないのか?
「なにって、そーくんは私の‘婚約者‘なんだから」
「・・・は?」
な、何を言ってるんだ?
「もちろん子供の時の話だから誓約書なんてないけどちゃんと書いてあったでしょ?前のメモ用紙に・・・」
「えっ・・・」
「そーくん?」
た、確かに書いてたけど・・・
「いや、まあ、昔の話だしーー」
「でも言った発言と行動には年齢問わず責任が課せられるんだよ?しかもこれは私とそーちゃんの‘個人‘でのやりとりだから余計に、ね?」
いやいや、俺なんか法人とか個人とか言われてもわからないんだけど。
「いやいや、でもあんなの子供のお遊びみたいなものでーー」
「お遊び・・・?」
と、言った瞬間一瞬初音が二人いるとかいう地獄絵図のような雰囲気を頭の中に感じた。
「お遊び?おあ・・・おあそ・・・お遊び・・・」
「お、おい・・・?」
「ああ、そっか・・・ごめんねそーちゃん、そのメスに毒されちゃってるんだったよね、ほんと困っちゃうよね、雑なメスの求愛コードはさ?」
「いや、だから毒されてるとかじゃなくてーー」
「大丈夫!あともうちょっとでそーちゃんのもっと近くに行けるから!それまで待っててね!」
そういうと、あの子は足早に去っていった。・・・‘あともうちょっと‘ってなんだ?
そんな空気を切り替えるように初音が「早く行こ!」と、元気よく言ってくれたので俺と初音は水族館を見て回った。
「・・・・・・」
「あともうちょっとだよ、そーちゃん♥」
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