第70話総明の苦行は初音も苦行

「・・・・・・」




 ついさっきまでちょっといい感じのムードでお互いのことを抱き合っていたのにそれが何故か今はまたしても地下室に監禁されている。なぜ監禁したのかと聞くと、初音は「ありえない誤解を招いて、私を不安にさせたから」と、いうことらしい。


 まあ、その言い分もわかるので特に何も言えなかったけどだからって監禁することはないと思う。




「初音、悪かったって、だから早く地下室から出してくれ」




 そう、俺は今一応口を塞がれてるわけではなく、体も拘束はされていない。今まではなぜか拘束監禁が当たり前だったけど、今回はなぜかそんなことはされていない。




『だめだよ、一応地下室にはトイレだって用意したんだし、もう困らないでしょ?それにこれはソー君が悪いんだって認めてくれたでしょ?』




「ま、まあ・・・」




 こういうことを想定して初音は地下室の強化をしていたらしく、トイレや簡単なキッチンやあとは監視カメラが以前より増え、マイク付きスピーカーなんて言う高そうなものも設置してある。




『そういうことだから、学校の時以外はしばらくこの地下室で生活してもらうから』




「えっ!?今日一日だけじゃないのか!?そんなーーーー」




『何か言った?』




「いや、何も・・・」




 そういうわけで俺は今日から何日かわからないけど監禁生活を送ることになった。でも一応学校には登校させてもらえるらしい。・・・それすらもありがたく感じてしまう俺はもしかしておかしくなってしまったのかもしれない。




「まずは料理か・・・」




 初音曰く、私がいないと何もできないことを証明するために材料はあるけど料理は俺が作れと言うことらしい。




「はあ・・・」




 料理なんて全然できないんだけどなあ・・・まあ、それをわからせるためにやってるらしいし、そう考えると初音の作戦通りに行っていると言えるだろう。




「熱っ・・・」




 ちょっと調子に乗ってかっこよくフライパンを振ってみたけど熱いな・・・




「痛っ・・・」




 包丁で指をちょっと切ってしまった。・・・いや、俺絶望的に料理下手だな。いつもは常に任せているから仕方ないけど。




ー初音saidー


「ああ・・・」




 そーくんあんなに頑張って・・・ああ、でも痛そう、可愛そう、あんな料理私がすぐに・・・




「いや、だめ・・・」




 私がいないと何もできないことをまずはそーくんに示さないと。そう、そのためにはこの苦行を成し遂げないといけない。




「でも・・・」




『難し・・・』




 ああ、だめ、そーくんを助けたいっていう思いが勝ってしまいそうになる。でも・・・負けられない。見ているだけで苦しいけど、今はまだ・・・

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