第61話彩音の気分転換
私はちょっと気分転換にお姉ちゃんと総明の家に行くことにした。・・・っていうかお父さんが作ったマンションだから私もお姉ちゃんも今年の四月にはここに住むように言われてるんだけど。
・・・私も早く引っ越さないとなあ。
『ピンポン』
私は2002のインターホンを鳴らした。すると、いつもの声が聞こえてきた。
「はい」
総明の声だ。なんでいつもお姉ちゃんじゃなくて総明なんだろ。まあ、別にいいけど。いや、むしろ・・・
「総明?開けてー」
「ああ」
そう軽く流すと、総明はエントランスに続く扉を開けてくれた。本当はお父さんが作ったマンションだから私とお姉ちゃんは各部屋以外を開けられるマスターキーを持ってるんだけど、まあいいよね。
そして私がエントランスに入ると同時にお姉ちゃんと出会った。
「ん?彩音?どうしたの?」
「うん、ちょっとね」
「ちょっとって何?そーくんに何かちょっかいかけようとしてるならーーーー」
「はいはい、お姉ちゃんは総明のご飯の材料でも買いに行くんでしょ?だったらここで私と話すより早く行かないと、総明がおなかすかせちゃうよ?」
「・・・そうね」
そういうと、お姉ちゃんは足早にエントランスを後にした。・・・実の妹にまで警戒心を怠らないなんて一体どうなんてるんだろう。なんであんな天が二物を与えたどころじゃないほど何でもできちゃうのに心配性なんだろ・・・心配性っていう表現は柔らかいかな。
そんなことを考えながら私はエレベーターに乗り、20階に向かった。
そしてまたもピンポンを押した。すると、総明が中から扉を開けた。
「こんばんにゃ!総明!」
「・・・あ、ああ」
・・・完全に失敗した。ネットの記事で男子はこういうのが好きっていうブログを見たんだけど、まさかガセネタ・・・?だとしたらあのブログを書いたブロガーを・・・いや、それはあとでいっか。
「で?何しに来たんだ?」
「さっき言ったでしょ?気分転換だって」
「は、はあ・・・」
総明は呆れたようにため息をする。・・・むっ、総明のくせに生意気な。ちょっとからかおう。
「そういえばエントランスでお姉ちゃんにあったんだけど、ものすごく怒ってたよ?」
「えっ!?なんで!?」
総明が唐突に焦りだした。お姉ちゃん関連になると頭が回らなくなるのが総明のダメなところだけどそれは教えないことにする。こうしてからかう時の材料として有効だからだ。
「確か・・・「そーくんがまた浮気した」って連呼してたよ?」
「えっ!?本当か!?」
「ううん、嘘♪」
「はあ!?なんでそんな心臓に悪い嘘を・・・」
その顔が見たかったから、なんて言えるわけないよね。
「はあ、まあいいや、とりあえず上がってくれ」
と、総明が言ってくれたので私はとりあえず部屋に上がらせてもらうことにした。そしてこの家にはまだリビングというものが存在しないため、総明の部屋に招かれることになった。
「へえ・・・」
なんか意外と綺麗だなあ・・・もっと汚いと思ってたのに。それに本とかも全然ないし、フィギュアは・・・まあ、あるけど。
「なんか思ったより綺麗だね」
「まあ、初音が‘掃除‘してくれたからな」
「ああ、なるほど・・・」
これはあくまでも推測だけどお姉ちゃんが女の子の表紙のものを片っ端から‘掃除‘した結果が今のこの状態なんだろうなあ。本棚とか寂しすぎるし・・・
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