第60話初音と本屋さん
俺と初音は帰路に着く途中で本屋さんに行くことにした。こんな誤解を招かないためにも少しでも本のことを知りたいという初音の提案だ。まあ、改心しようとしてくれる向上心はものすごく嬉しいので俺はもちろん承諾し、初音と二人で少し歩いたところにあるかなり大きな本屋さんに行くことになった。
だが、本屋さんに行った瞬間に俺は後悔することになる。
「そーくん、なに他の女に目移りしてるの?」
「いや、他の女って・・・」
そう、今時のラノベなんてものは大概の表紙が可愛い女の子だ、そして初音は紙にすら嫉妬することがさっき証明された。それなのに・・・俺はなんであんなにすんなり承諾してるんだ!
そして俺はなぜか目隠しをする形で初音が選んだラノベだけに目を通すことを許された。
「・・・・・・」
いや、全部彼女を溺愛している男主人公の話なんだけど・・・俺の趣味じゃない。
「そーくんはこれを読んで勉強すること!」
「ええ・・・」
そして俺はなぜかそのラノベを買わされ・・・というよりは初音がそのラノベを買って俺に無理やり渡した。な、なんで俺がこんなものを・・・これ完全に女性用だろ。
「ん?」
少し先に見覚えがある人がいる。・・・いや、見覚えがあるどころかクラスメイトで俺の初友達だ。
「月愛、こんなところで合うとは・・・」
そう、月愛が現代ラブコメ物のコーナーにいた。・・・なんかイメージと違うけど、まあ、うん。
「あら、本好きがこの本屋さんに来るのはごく自然な行動だと思うけれど?」
「あ、ああ」
そんなセリフを甘々なタイトルのラノベを持ちながら言われてもなんかなあ・・・
「・・・最王子君ってそういうラノベも読むの?」
「いや、これはーーーー」
「うんうん!そーくんがどうしても私のこと勉強したいっていうから、私が買ってあげたんだあ♪」
・・・咄嗟に言った言葉がこんな形で現実化するとは。ラノベを読むものとしては女性向けのラノベを持ってるなんてだいぶ息苦しいというかなんというかなんだけど・・・
「へえ・・・」
・・・月愛の顔が完全に引き攣っている。
「いや、俺が自分の意志で購入したんじゃないからな?」
俺は月愛にだけ聞こえる声で伝えた。これからの学校生活で‘女性向けのラノベを自ら望んで買う人‘みたな印象を付けられたくないからだ。
「・・・ああ、なるほど」
月愛は色々と納得してくれたらしい。・・・まさかちょっと本屋さんに寄り道するだけでこんなに頭を悩ませることになるとは思わなかったな。
「もうダメ、そーくん話すぎ、早く行こ?」
「あ、ああ、ごめん」
そして俺は軽く月愛に手を振り初音と一緒に帰ることにした。
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