第57話初音ごはん
俺が歯を磨き、顔を洗い終わったぐらいの時に初音が俺の部屋から出てきた。いつもは初音の方が俺より一時間ぐらい早く起きているけど、今日はちょっと遅かったみたいだ。
「初音、おはよう」
「おはよう、そーくん、ごめんね、今からご飯作るけど、ちゃんと登校時間には間に合わせるから」
「いや、いつも作ってくれて助かるよ」
俺がお礼の言葉を言うと初音は満足げにキッチンに向かった。実際初音がご飯を作ってくれていなかったらカップラーメンかコンビニ弁当とか、そういう感じになっていたかもしれない。
「さて・・・」
俺はこの空き時間を埋めるために教科書の整理を始めることにした。
「えーっと、今日は数があったな・・・ん?」
ノートの本来なら名前を書くべきところにこんなことが書いてある。
<そーくん×私=×××>
と、血で書かれている。・・・×の所は自主規制したいレベルの下ネタ・・・っていうかそういう系のことが書かれている。
「い、一体何を考えてこんなことを・・・」
こんなノート持っていけないぞ、まあ、一応予備のノートがあるから助かったけど・・・
そして、しばらくしてから初音が朝ごはんを持ってきた。
「・・・は、初音?」
「なに?」
「いや、何って・・・」
今日はだいぶ朝ごはんの量が少ない。どう考えてもおかしいレベルだ。なんかわかめみたいなのと魚のじゃこみたいなのが白ご飯にふりかけられている。・・・しかも、俺のだけこんな感じで初音のは至って普通のチャーハンだった。
「な、なんで俺だけこんなーー」
「ああ、安心して!それは私の髪の毛と爪で作った‘初音ごはん‘で愛情がいつもよりこもってるから物量が少なくても目に見えない何かで満腹になると思うよ!・・・そう、愛情でね♥」
「・・・・・・」
は?髪の毛と爪で作った白ご飯・・・?今まででもこんなことは初めてーーな、わけでもないけどなんだって今日はいきなりこんなことを?さっきもなんかノートに変なこと書いてたし・・・何かあったのか?
「はい、そーくん、あーん♥」
「えっ・・・」
初音が曇りのない笑顔で‘それ‘を俺の口元に近づけてきた。
「いやいやいや!そんなの食べれないって!」
「食べれない?なんで?」
「なんでって、人の髪の毛と爪なんて人間が食べられるわけーー」
「人のって何?なんでそんなに他人行儀なの?私達恋人なんだよね?だったらこれぐらい普通に・・・っていうかむしろ喜んで食べられるよね?私だったらそーくんの産毛から体液まで余さず体に取り入れれるよ?」
・・・初音の厄介なところの一つがこういう時をしている時に悪気が一切ないところだ。まあ、それは自分がされて嬉しいことをしているつもりなんだと思うけど、そのされて嬉しいことっていうのが俺とは違いすぎる・・・
「はい、そーくんっ♥」
初音が力任せに俺の口にそれを入れようとしてきたが俺は両腕を使いそれを防げーーたわけもなく、初音のもう片方空いている手で俺の両手は軽々と横に促され口の中にそれは入って来た。
「・・・んぐっ」
「あはっ♥」
初音が歓喜の声を上げているが俺にはそれが悪魔の雄たけびにしか聞こえない。しかも、口に入れただけじゃ飽き足らず無理やり口の中に入っているものを噛み砕かせてきた。俺はすぐに吐き出す。
「ごほっ、ごほっ」
俺がそれを口から吐き出した・・・が、その瞬間に初音が一瞬で怖くなった。
「何?そーくん、私のこと食べられないの?」
「いや、そういうわけじゃないんだけどーーは!?」
俺がそう言った瞬間に初音は俺が口から吐き出したものを口に含もうとしていた。
「お、おい!」
俺はすぐに初音を押さえ、テーブルから遠ざけた。
「おいおい、何やってんだよ!」
「何って、まずは私から証明しないとダメでしょ?私が本当にそーくんのどんなものでも食べられるのかどうか」
「いやいや、そんなことしなくていいって!」
「で、でもーー」
「そ、それより、もう時間だから、学校に行こう!」
俺はかなりの早口でそういうと、急いで制服に着替えて不満げな初音と一緒に学校に登校することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます