第55話初音と結愛の口論

 私はすぐにエントランス・・・あの女がいるであろう所に向かった。まさか半日だけでここまで面倒くさいやつに絡まれるなんて・・・そーくんの過去ももうちょっと洗った方が良いのかな?いや、でもアルバムを見る限りはあの女ぐらいしか仲がよさそうなのはいなかったし。








「・・・仲がいい?」








 私以外の女とそーくんが仲がいい・・・?自分で言っていて吐き気を催してきた。違う違う、それは過去の話で今は私のことを好いてくれてるんだからそーくんのことを信じないと。でも、やっぱり不安の芽は摘んでおいた方が良いからここであの女には消えてもらう。








 そしてエントランスに向かうと、やはりあの女がいた。








「そっちから来てくれるなんて思わなかったけど、そーちゃんにしか用は無いの、かまってあげられなくてごめんね?」








「いや、かまいに来たのはそっちでしょ?わざわざ私とそーくんの同棲先まで来てさ」








「同棲・・・」








 一瞬顔をゆがめたけどまたいつもの顔に戻った。おそらく私とそーくんが同棲しているのをショックに思ったんだろう。








「っていうかあなたにかまいに来たんじゃなくてそーちゃんに会いに来たんだって、もしかして自意識過剰なの?」








「でも本当に私に用が無いんならそんな事話さずにどっか行ったらいいと思うんだけど?それなのにここで私と会話してるってことは私にも少なからず用があるからなんじゃないの?」








 私は見透かしたように言う。・・・と言うよりこれは誰にでもわかること。そーくんだけが木鉄器なら私なら他の女と会話なんてしない。








「はあ・・・そうね、じゃあ、あなたに対する要件を言うけど・・・今すぐそーちゃんと別れて」








「え?無理」








 私は一言で断る。でもそんなことは当たり前だ。せっかくそーくんが決意を決めて私と恋人になってくれたのにそれを無碍にするなんて・・・もし本当にそんなことになったら次こそ自殺することにしよう。








「でもそーちゃんのことが本当に好きなら傷つけたりしないと思うんだけど?」








「形ある愛を理解できないなんて可哀想な女・・・あなたこそなんで何年も前のことなのに今でもそーくんに寄生しようとするの?そーうんだってもう忘れてるよ?」








「なんでって、愛してるから、だけじゃダメ?」








「・・・・・・」








 確かにそれには納得できるから特に何も言えない。相手を愛しているなら発信機を付けるのは当たり前だし住所を特定するのも当たり前なのに・・・私としたことがちょっと野暮なことを聞いちゃったかもしれない。でも・・・だからこそ。








「私もあなたと同じ・・・いや、それ以上にそーくんを愛しているし、そーくんもようやく私を愛してくれる決心をつけてくれた、だからもうそーくんは私の・・・誰にも渡さない」








「あっそ・・・」








 何かを考えこむとこの女は予想外の言葉を発した。








「じゃあ今日はもう帰ろうかなあ、夜遅いし」








「えっ・・・」








 そういうと、本当にエントランスから外に出て行ってしまった。・・・いや、出て行ってくれた。こんなのはあくまでも一時的なものにすぎないけど、それでも一時の事態は免れた。




 ・・・でも何かひっかかるあんなにレベルの高い寄生虫がこんな簡単に寄生をやめる・・・?








「ありえない」








 私は今後どうするかを考えながらそーくんのいる地下室に向かった。

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