第47話お花見と俺の答え
今日は日曜日、お花見の日の朝だ。とうとう答えを出す時が来た。今日こそ答えをだしてみせる。
「ん?」
前にアルバムを片付けた棚の近くに何か一枚のメモ用紙が落ちていた。
「なんだこれ?」
俺がそのメモ用紙を広げてみると、桜の絵とともにある一つの言葉が書いていた。
<しょうらいおよめさんにしてね>
「な、なんなんだこれ・・・」
しょうらいおよめさんにしてねって将来お嫁さんにしてねってことだよな?まあ、字的には多分小学生ぐらいの時に書いた奴だろうし、ふざけて書いたのかな。
まあ、せっかくだし、これを今日のお守り代わりにしよう。と、思いいたった俺はそのメモ用紙をポケットの中に入れた。
「そーくん、じゃあ、行こー」
「うん」
そして、俺は初音と今度はバスでお花見する場所まで向かった。そこは春には絶対に満開で桜が咲く場所であり、人気も高いらしい。こんなところのチケットを取れるなんて・・・さすがは師匠だ。しかもそれを譲ってくれるなんて。今度お礼を言った方が良いのかもしれない。
「見てみて!そーくん!ピンクだよ!」
「そ、そうだな・・・」
お花見場についた俺たちの第一声はそれだった。どうやら初音は桜が好きらしい。そういうところだけは女の子なんだと思う。いや、まあ別にほかに女の子っぽいところが無いわけじゃないけど久しぶりに可愛いところを見た気がした。
「じゃあ、とりあえずあそこにシート敷こっか」
そういうと、初音は満開の桜が咲く大木の前に持ってきていたシートを敷いた。
「じゃあ、とりあえずお弁当食べよ?」
「ああ」
そして俺たちはシートについた。初音が作ってくれたものすごく美味しい桜弁当を用意してくれた。美味しい。美味しいんだけど・・・この後のことを思うと生きた心地がしない。
「美味しい?」
「うん、美味しいよ」
そして、俺たちはお弁当を平らげた後、急にシリアスな空気になった。
「で、そーくん、答えは決まった?」
「ああ」
俺は初音に返答する。すると、初音は俺の返答を待つように頬を赤らめる。それに呼応するように大木に咲く桜が吹雪のように舞う。俺たちを歓迎しているように。
「初音、俺はーーーー」
「そうそう、言い忘れてたけど・・・」
と、言うと、どこから出てきたのかわからないけど、包丁を取り出した。いや、取り出しただけじゃなくてこっちに包丁を向けてきた。
「もし、断ったりしたら、一緒に心中しようね?」
「・・・・・・」
初音に告白された日のことを思い出す。そう、初音に告白された日もまさにこんな状況だった。まだその時は桜が咲いていて、そして包丁を向けられる。でも、今の俺にはーーーー
「そんなことしなくても、断ったりしないよ」
「そう?じゃあ、答え、聞かせて?」
「ああ」
俺は今までのことを振り返り初音とまた付き合うかどうかを真剣に考えた。今までの初音の行動はすべて気温的には俺に基づいて行われていたものだ。つまり、初音としては俺のためにやっているという認識なんだと思う。それがちょっと行き過ぎていたとしても、その愛は本物だ。だから、俺はーーーー
「初音、俺と改めて付き合ってくれ!」
「うん///」
そして、さらに桜は舞う。本当に俺たちを歓迎してくれているみたいだ。ようやく、ようやく実ったと言わんばかりに。これからきっと色々な苦難があるだろう、それでも、とりあえずスタートラインに立った。ここから、ここからだ、まずはここからーーーー
「あ・・・」
俺がポケットにしまっていた桜の絵が描かれた一枚のメモ用紙が風でどこかに飛んでいった。もしかしたらあのメモ用紙のおかげかもしれない。
俺はそのメモ用紙を目で追う。すると、一人の女の子がそのメモ用紙を手に取った。
「なにこれ・・・え!?これって・・・」
その後、俺は思い知ることになる。あれはお守りなんかじゃなくて厄災を引き起こす紙だったことに。
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