第31話初音の妹
家庭訪問が終わり、初音が作ってくれた鍋料理をおいしく食べ、初音が洗い物をしていると家のチャイムが鳴った。
「ま、また・・・?」
特に宅配便も頼んでないし、先生もさっき帰ったはずだ。忘れ物をして帰って来たにしても、戻ってくるのが遅すぎる。もう、夜九時だ。だとしたら、一体誰だ?
俺はインターホン越しに誰なのかを聞いてみることにした。
「えーっと、誰ですか?」
「えっ?そっちこそ誰?」
あれ、もしかして押し間違いとかそういうオチ?それならすべてのつじつまが合う。っていうか女の子だ、初音に浮気してたとか勘違いされたらどうしよう・・・
「もしかして、押し間違えてませんか?」
「えー?そんなはずないんだけどなー」
俺が反応に困っていると、初音が洗い物を止めて、こちらに向かってきた。
「どうしたの?そーくん」
えっ、ま、まずい、初音が来た。こんな知らない女の子が来たとなれば浮気を疑われてしまうかもしれない。
「い、いや、初音?こ、これは浮気じゃーー」
「あー、彩音?何しに来たの?」
彩音・・・?もしかして初音の知り合いだったりするのか?
「あ、やっぱりお姉ちゃんの家だよね、じゃあ今の人が‘そーくん‘って人なの?」
俺のことも知っているのか・・・っていうかお姉ちゃんってことは初音の妹っていうことでいいのか?
「うん、そうだけど、そーくんと会話したの?死ぬの?」
まさかの妹にまでそんなことを言うのか・・・さすがに妹ぐらいには気を許してあげてほしい。
「死なないってー、冗談言わないでよー」
・・・さ、流石妹。初音の扱いに慣れている。
「冗談じゃないよ、なんなら一思いにしてあげようか?」
「まあまあ、その話はあとでじっくり聞くとして、今日はお姉ちゃんの彼氏・・・そーくんっていう人を見に来たんだあ、だから見てみてもいい?」
と、これまた軽く受け流し、自分の本題を告げた。
「何?もしかしてそーくんを狙ってるの?そんなのいいわけーーーー」
「へえ、そんなに彼氏さんの見た目に自信が無いんだねー、そーくんさん可哀想ー」
「そんなわけないでしょ、開けるからちょっと待ってて」
「はーい♪」
・・・す、すごい!もう初音と会ってから一年ぐらいだけど、こんなに初音の扱いがうまいひとは俺を含めて初めて見た。・・・師匠と呼ばせてほしい。
そして、俺と初音は玄関に行くと、扉を開けて、初音の妹さん、彩音さんが姿を見せた。茶髪で顔は初音と似ていて、やっぱり美少女だ。身長は俺や初音より小さく、胸も初音より小さい。
・・・最後のは分析しなくてよかったな。
「へえ、顔は思ってたよりもかっこいいんだね!まあ、お姉ちゃんにはちょっと釣り合わないけどねー」
じゅ、重々自覚してるからそういうことは言わないでほしい。
「でも、ちょっと細いかなー、これなら私でもぽきっとできそうだよー」
「・・・・・・」
さすがの俺でもこんな小さくて細い子にやられるほど弱くはない・・・はず。初音の例があるからわからないな。
「わかってないなあ、そこがいいんだよ?」
「えっ」
そこは細くないって否定してほしんだけど。そんなに俺って細いのか?まあ、確かにあんまり運動もしないし、筋トレとかもあんまりしてないけど・・・ちょっとショックだ。
「で?それだけのために来たの?」
「もちろん違うよ、ほら、これ」
そういうと、彩音は何かを手から取り出した。それは何かのチケットのような感じだった。
「これは・・・」
初音はそれを見ると、目をぱあっと明るくして、チケットを見たまま固まった。いや、俺にも見せてほしいんだけど、なんか怖いし。初音が喜ぶものってなんだ?
まさか、前に言っていた拷問器具みたいなやつか・・・?
「ねえ、そーくんさん」
と、そんなおぞましいことを考えていると、彩音‘さん‘が話しかけてきた。
「な、なんですか?」
「なんで敬語なの?私年下だよ?」
初音の扱いがあんなにうまい人を呼び捨てになんてできるわけがない。むしろ、師匠と呼ばせてほしいぐらいだ。
「は、初音の扱いがあんなにうまい人を初めて見ました!師匠と呼ばせてもらってもいいですか!?」
「師匠・・・?なんかかっこいいね!いいよ!」
「ありがとうございます!」
・・・さあ、俺は忘れていないぞ。初音との会話のキャッチボール制限を・・・
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