第29話初音の変化の理由
「い、いや、なんでって、ドアが閉まってーーーー」
「だから?」
「え、いや、あの・・・」
まさかあの初音が塩対応になるなんて思ってもみなかったから塩対応になった女の子への対処法なんて調べてない!どうする!?
「あ、あのさ?初音?お、俺なんかしたっけ?」
「・・・別に?」
「な、何かしたなら言ってくれ!」
「・・・・・・」
ガチャ
「あ、ありがとう、初音」
そして俺は玄関にいた初音と向き合い、初音に真剣に問い詰める。
「初音、俺、何かしたか?」
「・・・・・・ごめん、そーくん」
「え?」
そして初音はとある雑誌を見せつけてきた。そこには・・・
【押してダメなら引いてみろ! 奥手なカレも一日中あなたのことを考えます!】
と、書いてあった。
「・・・は?」
「そ、その、いつも私から押してるから引いてみたらそーくんの気を引けるかと思ったんだけど、なんかどのくらいが適切なのかわからないし、やっぱりいつもの私の方が良いよね!」
「・・・は!?」
な、なにそれ!?本当に一日中俺が何かしてしまったのかと考えていたことがバカみたいだ。
「ごめんね、そーくん、でもやっぱりこんなことするのは失敗だったね・・・」
「そ、そうだな、本気で心配するからこういうことはやめーーーー」
「それはそれとして・・・」
初音の雰囲気が‘いつもの雰囲気‘に戻る。
「今日なんでこんなに帰りが遅いの?そーくん部活とかやってないし何か委員にも入ってるわけじゃないのに」
「えっ!?えーっと・・・」
ま、まずい、一応相談という名目だったけど、最終的には月愛と普通に話してしまった。初音との約束で三回までしか会話のキャッチボールはダメなのを今日の初音の変化のせいで忘れてた・・・
で、でも、ここで嘘をついてあとでばれたらその時こそ本当にすべての終わりだ。ここは、ちょっと・・・いや、かなり怖いけど、本当のことを話そう。
「じ、実はーーーー」
そして俺は月愛に初音が何で塩対応になったのかを相談しようとしたけど、結局は何度も会話のキャッチボールをしてしまったことを話した。
「へえ、約束・・・破ったの?」
「ま、まあ・・・」
これはいったいどんなお仕置きを食らわせられるのかと心中そわそわしながら次の初音の言葉を待つことにすると、初音から衝撃の言葉が繰り広げられた。
「まあ、今回は許してあげる、私が失敗したのもあるし、私がそんな扱いしたせいでそーくんは約束を破っちゃったんだもんね・・・」
と、まさかの俺は約束を破ったのに初音がそんな俺を肯定してくれた。
「い、いいのか?」
「うん、でも次からは絶対に約束破らないでね?」
「あ、う、うん」
本当に許してくれたのか・・・?いつもの、というか過去の初音なら間違いなく「浮気なの?ねえ、浮気なの?」的なことを言って散々俺を困らせていたはずだ。
もしかしたら、少し前にも感じたけど、初音は本当に変わろうとしてくれているのかもしれない。
「じゃあ、俺はちょっと制服から着替えるよ」
「うん」
そして俺は自分の部屋に戻り、制服から部屋着に着替えた・・・
ー総明がいなくなった玄関ー
「・・・・・・」
まさか、あんなに心身痛めてそーくんにあんな対応をしたのにその結果がこんなことになるなんて・・・
しかも、あの女に相談して、私以外と話せる機会を作ってしまうなんて・・・本当に大失敗。
「それにしても・・・」
あの女、そーくんが困っているところに付け込んでそーくんとこんなに遅くまで談笑するなんて・・・
「許さない・・・」
私はあのそーくんに集る害虫に殺意を覚えながら、そーくんの着替えを待つことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます