第12話俺の選択

「・・・・・・」


  それは、俺が今まであえて避けていた問題だった。俺にとって初音とは何なのか。他人というにはお互いを知りすぎている。


 ・・・俺にとっての初音、俺には優しいし可愛いし完璧な女の子、だけど嫉妬深いところがある。そんな初音は俺にとっての何なんだろう。


 ここで何かを言い訳しても意味がない。ここは正直に言おう。




「わからない」




「そうーーーー」




「でも、わかる努力はするよ」




「え?」




 そう、わからないからと言って考えることを放棄するのは無責任な話だ。ちゃんと向き合って考えなければならない。だから、そのためにも・・・




「だから、そのためにもその返答は夏休みに入るまで待ってほしい、一学期の終業式の日に答えるよ」




「・・・わかった、じゃあ、それまでにちゃんと答えを出してね?」




「・・・うん」




 そう、これが俺の答えだ。これが正解なのかどうか、なんてわからない。ラノベの主人公のような完璧な回答なんて俺にはできない。いや、完璧な答えなんてする必要もない、


 俺たちは不完全な人間だ、完璧な答えなんて出せるわけがない。でも、だからこそ自分がどうしたいのかだけははっきりとさせておかないといけない。




「じゃあ、そろそろ教室に戻らないとね」




「うん」




 今まで俺は初音だけに問題があると思っていたけど、それは最低な考えだ。俺も中途半端だから悪いんだ。だから、ちゃんと‘見極める‘ためにも夏休みまでに、絶対に答えを出す。




 そして今日の授業が終わりやがて放課後が来た。




「じゃあ、そーくん!家に帰ーーーー」




キーンコーンカーンコーン




『2年2組最王子総明君、職員室に来てください』




「え、俺?なんかしたっけ?」




「あー、多分部活の話じゃないかな?」




「部活・・・?」




 ああ、そうか。俺は転入生で去年はこの学校にいなかったから部活について説明を受けるのか。




「ごめん、ちょっと行ってくる、先に帰ってて」




「いや、待ってるよ」




「え、でもーーーー」




「私、待ってるから」




「・・・わかった」




 その‘待ってるから‘という発言には色々な意味が込められている気がした。単純に俺が職員室から出てくるのを待っているという意味、そして、俺の‘答え‘を待っている、という解釈もできた。




 そして俺は職員室に向かった。・・・のだが、思いっきり道に迷った。何この学校、広すぎない?あと新設の高校なんですかっていうぐらい綺麗だ。




「はあ、職員室はどこにーー」




ドンっ




 誰かとぶつかった。俺の身長はだいたい170ぐらい、体重は47ぐらい。普段あまり運動をしていないせいかかなり細身だ。そんな俺とぶつかってお互いに後ろに吹き飛ぶということは相手はおそらく女の子だろう。




「えーっと、ごめんなさい」




「いえ、何も問題無いわ」




 と、スカートを正しながら立った女性はその長い黒色の髪の毛を手で流した。なんというか気品があるような気がする。




「ところで、急いでいたようだけれど、何か用事?」




「ああ、いや、その職員室の場所がわからなくて・・・」




「え?でもあなた二年生でしょ?・・・いえ、でもその割には見ない顔ね」




「ああ、転校してきたばかりなもので」




 な、何だこの人、なんかこの人と喋ってると敬語になってしまいそうだ。




「ああ、あなたが噂の転校生・・・」




 え、噂になってるんだ。どんな噂なのか気になるけど今は急いでいる。




「職員室ってどこにありますか?」




「この先のある階段を登って左よ」




「ありがとうございます!」




 俺はすぐさま言われたとおりの方向へと向かっていった。にしても、綺麗な人だったなあ・・・なんていうのは考えるだけでも危険なので胸の内にしまっておくことにした。

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