第3話俺の黒歴史
今日は入学式だったので特に授業とかはなく、教科書や、その他必需品を配られて正午前に終わった。
これからどうしよう、この高校は転校先ということもあり俺には知り合いがいない。なので、これから休み時間などはしばらくはボッチかもしれない。いやまあ、別にボッチを否定してるわけじゃないけど・・・
「ねえ、そーくん、久しぶりに遊びに行こ?」
「・・・・・・」
忘れてた、俺は一応ボッチではなかった。けど、初音に付きまとわれるぐらいならボッチの方が幾ばくかましな気がする。こういう女の子は手が届かないラノベやアニメなどの二次元にいるからいいのであって、リアルでいたらなんというか夢を壊された気分というか、そんな気分になりかねない。
「そーくん、お昼ご飯作ってあげよっか?」
俺は夢を見ていたいので、全力で初音を無視する。さっきちょっと聞きそびれたこともあったけど、この際もうそんなことはどうでもいい、とにかく俺の今のミッションは初音を無視すること。
「そーくん?」
「・・・・・・」
初音が困った顔をする。・・・顔やスタイルなどはまさに雑誌の表紙にいても何の違和感もないレベルの女の子だから余計にたちが悪い。なんか罪悪感が芽生えてくる。
いやいや、違う違う、俺は何も悪くない。
「うわああああああああん!!そーくんが無視するー!!」
「・・・・・・」
無視無視・・・っていうかどこまでついてくるんだろう。今はもう学校が終わったので俺は自宅に帰っている同中なんだけど。
「・・・そーくんがそんなひどいことをするならこっちにも考えがあります」
「・・・・・・」
どんなことをされても俺はこのまま無視をするという使命がある。もうあんな外にいるのに監禁されているような気分になるのはごめんだ。
「えーっと、なんだっけ?ああ、これこれ」
そう言いながらスマホをいじっている初音はまさに女子高生のそれだった。
「えーっと?なになにー?俺の血は普通の人間とは違う、俺の名前が特殊なのもこれはおそらく異界の王族の名前がこの世界に伝承されたものだと思われ、俺はその異界の転生体────」
「・・・・・・!」
こ、これは・・・俺が一年前に名前でいじられることを少しいやに感じて現実逃避をしようとした時に書いた文章だ。これで少しでも俺の名前に意味を見出そうとしたのを覚えている。
って!ただの厨二文章だ!!や、やばい、これは・・・
「そしてこの王族の名に恥じぬように俺はこの名に誇りを持たねばならない」
恥ずかしい!恥ずかしすぎる!!でも過去の黒歴史の一つや二つが音読されたぐらいで俺は絶対に屈しない!!
「っていうなんかよくわかんない文章を学校中にばらすけどいいの?」
「・・・・・・」
ふん、初音はそんなに友達が多い性格ではなかったはずだ、基本的には俺といることを優先させていたし、友達付き合いなどもなかった。だからこの学校でもそんなにいるとは思えない。ましてや初音が転校した三ヶ月だけで、どれだけど影響力を────
「ああ、仕方ない、SNSと学内コミュニティーに────」
「ちょっと待った!!」
そうか、SNSなんていうものがあるなら俺が知らないほどの影響力を持っているのかもしれない。それでSNSに拡散され、全く知らないやつに『これ考えたやつ厨二で草』とか言われたくない!
しかも学内コミュニティー?そんなの以前の初音なら入っていなかったはず・・・まさか、こうして俺を脅すときのために色々と準備していたのか?
「あっ、やっと反応してくれたあ」
「わ、わかったから、ちゃんと話し合おう、因みに俺の黒歴史ってその一つだけ?」
一応黒歴史の数を知っておかなくては何の交渉も状況もわからない。
「ううん、10個ぐらいあるよ?」
「・・・は?いや、嘘はよくな────」
「じゃあ例えば、そーくんの部屋の本棚の隙間にあった、本の話とか?」
急に初音の声のトーンが下がる。それは、俺の妹が俺を驚かせようとしてものすごい体のお姉さんたちが載っている、いわゆるエロ本を俺の部屋の机の上に置いていて、初音が家に来たので咄嗟に本棚の隙間に隠したけど見つかったときの話だ。
「ねえ、そーくんはあんな贅肉まみれのお姉さんが好きなんだもんね?」
「い、いや、あれは誤解で・・・あと贅肉とか言ったらだめ───」
「あ、かばうんだ?やっぱり贅肉が多い方が好きなんだよね?」
「いや、だから・・・」
そう、初音は胸が少し控えめでBカップぐらいだと推定される。俺は特にそんなの気にしないし、寧ろBカップって普通じゃないの?とか思っているレベルんなんだけど、初音はそれを気にしていたらしく、あの時は本当にひどい目にあった。一週間目隠し生活・・・思い出さないようにしよう。
「まあ、とにかく、そーくんの黒歴史ならまだまだあるからね」
「・・・はい」
「というわけで!今日はどうする?私は新しくなったそーくんのおうちに行きたいなー」
そ、そうか!初音は新しい俺の家を特定するために俺についてきているのか!だったらそうはいかない!
「い、いや、今日はどっかに昼ご飯を食べに行こう」
「別にいいけど、制服で?」
「別に、いいだろ?」
「良いけど、なんか二年生始業初日に制服っていうのもなぁ・・・もっと可愛い服で────」
ここは少し強引にでも行くしかない!!
「もう!いいから行くぞ!!」」
そういう言いながら俺は初音の腕を引っ張った。
「う、うん、そーくん♥」
こうして不本意ながら初音と昼ご飯を食べに行くことになった。
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