第1話転校先で元カノと再会

「はあ、はあ、はあ」


 俺は今急いでいる・・・


 俺の名前は最王子 総明、高校二年生。この他人と比べてすごい名前のおかげで昔「王子様ー」なんて言って恥ずかしすぎるいじり方をされたことがあるという黒歴史を持っている。


 俺は少し家の事情で新しい街に引っ越してきた。それも少し‘嫌な思い出‘がある地に・・・


 親は二人とも放任主義で俺は一人暮らしをしている。まあ、仕送りはしてもらってるけど、いつかはちゃんと自分一人でも生活できるように学業と仕事を両立するつもりだ。


 こんな考え事をしながら少女漫画みたいなことが起きるなんて想像もしてなかった。


`ドンっ`


「キャッ!」


「え・・・」


 曲がり角を曲がろうとする直後、俺は女の子とぶつかった。俺がぶつかったせいで髪の毛が心なしか乱れている気がする。


「あっ、す、すいません、ちょっと急いでて・・・」


 俺は女の子に手を差し出す、同じ制服だ・・・


「あ、いえ、大丈夫です──よ!?」


 彼女は俺の顔を見て何故か驚く。


「ど、どうかされましたか?」


「ふぇ!?あっ、いえ、な、なんでもないです」


 女の子は俺の差し出した手を取り、立ち上がった。


「ごめん!ちょっと急いでるから!多分同じ学校だと思うからその時に謝るよ!じゃあ!!」


 そして俺は申し訳なさげに走り去る。そう、本当に急いでいる。なぜなら今日は始業式、しかも俺は転校生、なるべく早く登校しないといけない・・・


 でも、なんでだろう、あの女の子の声どこかで聞いた気がするのは────


 俺は10分ほど走り通した。体力にはそれなりに自信が・・・無い。俺はほとんど休日は部屋にいるし、若干細身だ。だから本来はこんなに走るなんてことはしたくないんだけど、まあ、入学式だし、仕方ない。


 学校生活、それも転校生となると、最初が肝心だ。俺は急いで体育館に入り予め学校側にメールで教えられていたクラスの所に行き、列で並んでいたので俺もそこに混ざることにした。どうやら身長順というわけではないらしい、まあ、そりゃそうか。


 まだ身体検査をしていないから身長順なんて言われても無理な話だ。


「えー、これより照夜一閃高校の始業式を始めます────」


「続いて────」


「・・・・・・」


「最後に皆さん健やかに学業や部活に励んでください。では、それぞれのクラスの教室に向かってください」


 ・・・長かった、本当に長かった。こういう式の後に毎回思うのが本当にこういうのは自主性にしたらいいと思う。参加したい人は参加する、参加したくない人は参加しない、みたいな。当然俺は後者を選ぶけど。


 そして俺は自分に割り当てられた2年2組の教室に行くことにした。


「よし、君は少しそこで待っていてくれ」


 と、俺は先生に廊下でスタンバっているようにと言われた。多分あとから「これより転校生を紹介する」みたいな感じで俺のことを紹介するためだろう。


 ラノベとかではよくある話だけど、実際に自分がそうなると思うとなんだか緊張する。


「次に、この2年からこの学校に転校してくることになった転校生を紹介する」


「え?男子?女子?」


 クラス中がざわめく。


「男子だ」


 ・・・男子は明らかに声を下げ、女子はずっとざわざわしたままだ。


「よし、じゃあ、入って来い。」


 とうとう俺が呼ばれてしまった。


ガラララ


 俺は扉を開け、ゆっくりと教卓の前に歩いて行く。


「転校生の最王子総明です、1年間よろしくお願いします」


「よろしくー」


「よろしくね!」


 みんな一応は俺を受け入れてくれたらしい、よかったぁ・・・


「じゃあ君はあそこの席に座りたまへ」


「あ、はい」


 そして俺は割り振られた扉から一番離れているところの一番後ろの席へと向かった。あそこなら授業中に少し寝るぐらいはばれないかもしれない。


 なんて汚い考えを持ちながら俺は席に着いた。そして隣の席の人に話しかけてみる。


「あ、1年間よろしく」


「あ、うん、よろしく」


 ・・・どこかでみた顔・・・あ、


「あれ?君、朝の・・・?」


「うん、そうだよ」


「ああ、さっきはごめんね?」


「ううん、全然いいよ、私たちの仲でしょ?」


「え?」


 そういうといきなり乱れたままだった髪の毛を整え始めた。そして整え終えた後の彼女の容姿はまさに美少女!とういうやつだった。茶髪のショートボブで、目は見つめられると吸い込まれそうな目で、口元なんかは少し小さく、なんというか、男心をくすぐるものがある。・・・っていうか、あれ?


「え、え?」


「久しぶり!そーくん!」


「え、いや、え?え?」


 俺は混乱していた。目の前にいたのは一年前に付き合っていた白雪初音だったからだ。一年前に初音もどこかに転校していったはず、まさか、それがここだったのか?だ、だとしたら、ま、まずいぞ。


「そーくん、なんでメッセージ無視して、私のピンポン無視してたの?」


「・・・・・・」


 俺が初音と別れた理由は転校して遠距離恋愛は辛いから・・・とかではなく、単純に少し、いや、かなり嫉妬深いからだ。いや、嫉妬なんて言葉よりも上の言葉があるのならそれを使いたい。


 メッセ―ジアプリ、通称‘LETR‘で他の女の子との連絡先はもちろん家族とまで連絡を断ち切られ、それだけじゃ飽き足らず、俺が馴染みの本屋さんで女店員さんと世間話程度に本の話をするだけで、家に帰ったらコンパスの針で薬指で切られる。まあ、切られると言ってもちょっとだけ血を飲むためとからしい。理由を聞くと「そーくんが私のである証明」と言っていた。


 まあ、外で奇行を犯さないだけ、ラノベとかに出てくるヤンデレ、なんていうのよりかはましなんだと思う。でも、どうなんだろう、こういうのはヤンデレっていうのかな?あいにく恋愛経験が初音との一度しかないため、これが普通なのかどうかわからない。


「そーくん、なんで私の一日百通の手紙を無視してたの?」


「・・・・・・」


 でも、普通別れてからもこんなに執着してくるものなんだろうか。

 一応お互い納得して別れたとは思うんだけどなあ・・・

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