第3話:愁嘆場
「とんでもない事でございます、国王陛下。
力不足で王家を護ることができず恥じ入るばかりでございます。
そんな非力な私のために護衛を付けて隣国に送ってくださる。
感謝しても感謝しきれません。
私は喜んで婚約破棄と追放をお受けいたします」
「おお、おお、おお、ローズマリー嬢こそ真の忠臣だ。
まだこの国にローズマリー嬢のような忠臣がいた事、うれしく思う。
どうか幸せに暮らしてくれ」
アーロン国王陛下が心から感謝してくださいました。
涙まで流してくださったので、これほど有り難い事はありません。
「ふん、見てられぬ愁嘆場だな」
タイラー侯爵オーガストが聞こえよがしに憎まれ口をきく。
タイラー侯爵の取り巻きが追従するようにうなずいたり同意したりする。
恥知らずな裏切者共め。
中には恥じ入って顔を背ける者がいるが、あいつらも同罪です。
形だけ恥じ入っても結局は簒奪を見て見ぬふりして、タイラー侯爵に臣従するのですから、体裁を整えるために苦しんでいるように演じているだけです。
「ローズマリー嬢、すまない。
私に力がないばかりに、君の名誉に傷をつけてしまった。
もう二度と会う事もできない、いや、君の新しい出会いと幸せのためには二度と会わない方がいいだろう。
本当に愛する人と結婚して幸せになって欲しい」
バイロン王太子殿下が私の事を想ってくれますが、少々複雑です。
今の話からは私が政略でバイロン王太子殿下と婚約していたように聞こえます。
「私が心から愛していたのはバイロン王太子殿下だけです。
王家を護るための政略で婚約していたのではありません。
幼い頃からずっと恋していましたし、結婚する心算でいました。
だから本当なら殿下を想って一生独身を通しますと言うべきなのでしょう。
ですがそれでは殿下の重荷になってしまいます。
殿下の新しい婚約者も不愉快な思いをされるでしょう。
だから新しい恋を探す事にします。
殿下も私の事は忘れて新しい婚約者と幸せになられてください」
私はバイロン王太子殿下への恋心を断ち切るために言葉に出しました。
今度は本当に政略で結婚相手を決めます。
隣国の中にはテンペスト公爵家の家格と領地を手に入れようとする者もいるでしょうから、その者と結婚してテンペスト公爵家を取り戻して見せます。
そして憎きタイラー侯爵の首を取るのです。
「ふん、猿芝居、見るに耐えない田舎芝居だな」
またタイラー侯爵が憎まれ口を叩きます。
今だけです、今だけ好きに言っていなさい。
必ずテンペスト公爵家を取り戻して復讐します。
タイラー侯爵に味方した者達、見て見ぬふりをした者達、皆殺しにしてあげます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます