第2話:婚約破棄追放
「待て、タイラー侯爵、まずは先に王太子の言った事の真偽を答えよ。
余もテンペスト公爵夫人サヴァナの醜聞は聞き及んでおる。
その真偽を確かにする前に王太子に詫びを言えとは、臣下の分を弁えない言葉だ。
事と次第によっては余にも覚悟あるぞ」
普段はタイラー侯爵に押されるだけのアーロン国王陛下が、珍しくタイラー侯爵に強くでておられます。
このままではバイロン王太子殿下に取り返しのつかない大きな傷がつくと思われているのでしょう。
「ほう、国王陛下にどのような覚悟があると申されるのですか」
タイラー侯爵は本当に憎たらしい奴です。
決死の覚悟で割って入られた国王陛下を下に見るような態度です。
「このままでは王太子の婚約者であるローズマリー嬢は処刑される。
そうなれば王太子の婚約者の座が空くことになる。
お前はその座に娘のパトリシアが姪のセリーナを押し込むつもりだろうが、そうはいかんぞ、既に手は打ってある」
なるほど、そう言う事なのですね。
だとしたら私は大人しく身を引くしかありませんね。
「……いったい何をなされたというのですか、国王陛下」
奸臣にしては勘が悪いですね、タイラー侯爵。
自分が人を陥れる事はあっても、人に策を仕掛けられるとは考えていなかったのでしょうが、それでは一流の謀略家とはいえませんよ。
もっともそんなタイラー侯爵に陥れられた私は三流の人間ですね。
「まさか、他国から王太子殿下の新たな婚約者を選ばれているのか。
この国を他国に売ろうというのか、陛下」
よく言うな、タイラー侯爵、そもそもお前がトッテナム王家からこの国を簒奪しようとしている大悪人、奸臣ではないか。
「黙れタイラー侯爵、国王である余に対して不遜であるぞ。
お前は余をバカにしていたようだが、余もやられっぱなしではないぞ。
もしお前が余や王太子に手出ししたらただではすまん。
隣国が攻め込んできてお前の首を取るであろう。
その覚悟と度胸があるのならば、余と王太子の首を取るがよい」
「そうでございますか、分かりました。
確かに今回は王太子殿下に対して不遜だったようです。
この通りお詫びさせていただきます。
ですがローズマリー嬢の件は別でございます。
この件に関しては貴族院で決まった事でございます。
陛下のご裁可を仰ぐとしても、不問という訳には参りませんぞ。
それに本当に隣国と手を結んでいるのなら、婚約解消はせねばなりますまい」
タイラー侯爵はまだ陛下の言葉を疑っているようですね。
確かに陛下が本当に隣国と手を結んでいる証拠はありません。
国名を明かさないのはタイラー侯爵に妨害工作させないためとも考えられますが、全くの嘘で単なるハッタリという事も考えられます。
「ローズマリー嬢、余に力がないばかりに申し訳ないことになった。
王家を護るためにはローズマリー嬢と王太子の婚約は解消せねばならぬ。
それにこのままこの国に残っては命を狙われることになるであろう。
何よりローズマリー嬢を無罪にすると王家から護衛をだすことができぬ。
婚約破棄追放という罪を名目に、隣国まで近衛騎士団に護衛させる。
ローズマリー嬢の名誉を傷つけることになるが、我慢してくれ」
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