第39話「課金」

 「ネットの課金サービスが増えてるよね」棗昌が言う。

 「Twitterも課金サービスを始めるらしいね。何でも広告が出なくなるんだとか」広告が出なくなることは非常に好ましいし、金額も350円で格安と来ている。無論、日々のおやつ代ですら惜しむような私たちには手が出ない代物ではあるが、ある程度収入のある人たちにとってはむしろ有益なサービスなのではないだろうか。

 「Twitterなんてやってるの?」棗昌は驚いたような口ぶりで尋ねてくる。

 「良い情報源になってるよ。もちろん自分から何かを発信するようなことはないけどね。リアルタイムで起こった話題なんかはすぐ手に入るから重宝してるんだ」現在、Twitterを使っている高校生もいることにはいるが、主だったSNSはTikTokやInstagramだ。

 「Twitterもひと昔前はコミュニケーションツールとして幅を利かせてたみたいだけど、何か物足りないところがあるよね。1回始めて見たけど、使い方がわからなくてすぐやめちゃった」棗昌が言う。

 Twitterは前者2つと比べるとどうしてもエンタメ性に欠ける。文字がメインの環境には限界があることを示しているようだが、それでも私たちよりも上の代にはまだまだ現役のツールとして広く活用されている。Twitterの利用者は主に2パターンいて、1つは私のような情報収集源として使うような層だ。もう1つこそが上の代の支持層に当たるのだが、匿名を最大の武器にして共通の趣味や価値観を持つ人とつながりたいという層だ。昔は知人同士で繋がるSNSの代表格として君臨していたようだが、様々なSNSが登場したことによってそのシェアが分散されてしまい、今となっては匿名で繋がる層が根強く残ったのだそうだ。残った層からしたらTwitterこそが至高のツールと言うことになる。

 「Twitterを使ってる世代と繋がりたい時には便利だろうね。私たちには高校っていう濃いめの枠組みがあるからわざわざ外の世界にまで出て行って広く交流を持つ必要は感じられないけど」持論を展開する。少しでも視野を広く持ちたいか、あるいは持たざるを得ないような層は高校生でもTwitterを利用している。中にはTwitter内での交流から現実世界への交際へと発展させてちょっとしたトラブルに巻き込まれている人もいるようで、そういったものは好ましい利用方法とは言えない。その辺りの危険性はTikTokやInstagramにも共通しているが、イメージとしてはTwitterの方が異なる年代の人と巡り合う可能性が高く、その分だけ危険度も高いイメージとなっている。

 「ねぇ聞いた? Twitterが課金制になるってさ」鈴木赤はやってくるなりタイムリーな話題を投下する。

 「今丁度話してたところだよ。それにしても今は課金サービスがどんどん増えてるよね。昔は濃い趣味を持った人限定みたいなところがあったけどさ。好きなアイドルを見たいから加入しますだとか、応援しているスポーツがあるからこのサービスを使いますだとか。しかも微妙に高かったイメージがあるし」月額を払う程に熱中していないと加入も躊躇してしまう印象があったが、ここ最近は庶民でもギリギリ手が届くレベルの金額設定が多く、またそれなりに利用していればきっちり元が取れる仕組みにもなっている。

 「そういえばさ、赤ちゃんは何かSNSは使ってるの? 脚本の宣伝なんかも必要なわけでしょ」

 「有名なのは一通り使ってるよ。これからお笑いプロダクションの社長になろうって言うんなら流行りものは一通り通っておかないとね」鈴木赤は想像以上にまともなことを言う。

 「どんな風に使ってるの?」棗昌が興味深そうに尋ねる。

 「主にTwitterを情報発信のメインにしつつ、TikTokでは自分のネタをゆっくりキャラに喋らせておいてそれを過剰に装飾して1本15秒程の作品として投稿しているし、Instagramでは大学生が撮りました的なオサレ写真を上げてるよ」

 「めっちゃいまどきって感じじゃん」棗昌が驚愕の反応を示す。

 「いまどきじゃなくちゃね。流行をつかめないやつはお笑いを制すことはできないよ」鈴木赤は嬉しそうに話す。いまどきと表現されることが余程嬉しいようだ。

 「でもさ、SH-05EじゃTwitterもTikTokもInstagramも見れないんじゃないの?」素朴な疑問をぶつけてみる。詳細は20話を参照して欲しい。

 「魔改造して見れるようにしてあるから大丈夫。もちろん法律の範囲内でね」

 「「過激派だ」」

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