第26話「隕石」

 「宇宙から何かが落ちてくるってロマンがあるよね」鈴木赤が空を見上げながら言う。

 「空からならままあるけどね。雨とか塵とか」棗昌はつられて空を見ながら答える。

 「雨も塵も似たようなもんだよ。水っけのついた塵が雨なり雪なりになるんだかさら」言っておきながら自身がいかに冷笑主義者であるかを自覚する。間を開けずに会話を続ける。「でももっとロマンのあるものがやってきてくれたら良いのにね」

 「確実な推薦枠とか?」鈴木赤ががめつく口にする。

 「まだ受験の話をする気か。とりあえず今月は受験とお笑い勧誘の話はナシって言ったばかりだよね」即座に訂正を促す。

 結局のところ、私たちは進路については殆ど問題がないことがわかったので、しばらくは受験の話を控えようということにした。この段階から先のことを話したところで何の進展もない。全員が現時点で進路についてのこれと言った不安がないことが判明したのだからこそ、そういう話を控えるのが得策だ。内申点稼ぎなり受験勉強なりは見えないところでじっくり取り組めば良い。また6月辺りになって何か気が変わることでもあればそれは口に出しても良いことにしたが、昨日の今日では何が変わっているということもない。

 「高校生として過ごせる時間はもう1年を切ったんだしさ。特に今日は日曜日ということでぱーっと遊ぼうってことにしたじゃん。だからあゆの言う通りそんなことは忘れちゃおう」棗昌が励ますように言う。

 「そうだな。悪い悪い。ところで東京03がさ」鈴木赤が言いかける。

 「それもなし。どうせお笑い勧誘につなげる気でしょ。あゆは一旦考えるって言ってくれたんだから今日はもう良いじゃん。本番は8月で、6月に返事が出せるってことは長めに見積もって2ヶ月の練習期間があるんだし、ここはひとつのんびり行こうよ」棗昌が諭すように言う。

 お笑いの勧誘も昨日封じたばかりだ。何度も断ってきたがこの3人で今しかできないことをするということに強い興味を惹かれるのもまた事実だ。過ごす時間を重ねる度に「お笑いの集団を組んでみても良いか」という気が芽生え始めて来た。理由は自分の中でもはっきりとはしないが、思い出作りの一環として捉えている節はある。やってやろうじゃないか、青春。でもあれだけ拒んできたのだからやはり断りたい自分も間違いなく存在する。内なる声に耳を傾ける為にも、少し考えさせてほしいということで寄り合うことにした。

 「話は戻るけどさ、たまに隕石が降ってきたりするじゃん。それはもう雨や雪なんかとは違って剛速球のさらに上を行くもので、まさにメテオ的な感じらしいんだよね」鈴木赤がまくしたてるように口にする。

 「どこかの政治家みたいな言い回しはやめろ。こっちまで頭が悪くなりそうだ」顔をしかめて答える。

 「ものすごい音を立てて落ちてくるんだってね。周囲には衝撃波も走ったりして窓ガラスなんかも割れちゃうらしいよ」棗昌がその現場を頭に浮かべるかのようにして話す。

 「https://www.youtube.com/watch?v=z85FsCb7vXE。これの1分2秒辺りからがわかりやすいね」URLを添えて答える。

 「「どういう仕組みだ」」

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