第255話 春近たまには無双する

 その日、春近は一騎当千の無双状態で、鬼神王の面目躍如を果たした。

 全てのヒロインは春近の胸の中で甘え、もう許してとばかりにカラダを震わせている。

 その顔は、春近に対し完全に屈服し陶酔の表情を浮かべ、理性を保てない程の感情が溢れていた。


 という夢を見たんだ……と思われる方がいるのかもしれないが、残念ながらながらなのか嬉しいながらなのかこれは現実である。

 先日順番が回ってこなかった大人しい系の彼女たちが、一斉に押し掛けて来てこのような状況に突入したのだ。

 最初こそ勢いの良かったアリスたちだが、春近がエチエチ攻めをしたら簡単に屈服させられてしまった。


 春近は女によわよわなイメージなのかもしれないが、それはルリや渚が超絶に強すぎるだけで、決して春近がよわよわな訳ではなかった。

 いや、ドS系女子には、体が勝手に屈服してしまうのだが……

 そんなこんなで、今、春近は少し調子に乗っている。



「ほら、アリス、もうちょっと頑張ろうか?」

「ひぎぃ、ダメですぅ~♡ もう、ムリぃぃぃ~」

「えっ? もっともっと?」

「い、言ってないですぅぅぅ!」


 元々敏感なアリスは少しナデナデしただけでビックビクになってしまうのだが、今は完全によわよわヒロインになってしまった。

 体が小さいので思うがままに攻められ続け、ダメダメ言っても許してもらえずこのような状況である。


 注意:プロレスごっこです。


 ううっ、アリスが小っちゃくて背徳感が――

 アリスは同級生、アリスは同い年、アリスは大人……


 アリスを堕とした春近は、次のターゲットを黒百合に定める。


黒百合くろゆりちゃん! 最初の元気はどうしちゃったのかな?」

「くぅ、くやしぃぃぃ♡ 春近のくせに~」

「ほらっ、いつものグリグリの刑とか磔獄門とかはどうしたの?」

「あうぅぅ~もう許してぇ~♡」


 普段は強気で春近にエッチなイタズラをする黒百合だが、意外とベッドの上ではよわよわヒロインなのだ。

 途中までは威勢が良いのだが、肝心なところではまるで人が変わったかのようになってしまう。

 春近の逆襲を受け、我慢の限界を超え羞恥心でいっぱいだ。

 黒百合くろゆりと本名で呼ばれるだけで、勝手にカラダが反応して喜んでしまうくらいベタ惚れになってしまった。


 注意:やっぱりプロレスごっこです。


 いつも生意気で強気な黒百合が、凄くしおらしくて可愛い――

 後が怖そうだけど……


 次のターゲットは遥だ。

 さっきから待ち遠しい表情をしている。


「春近君、私はまだなの?」

「遥! 大人しく順番を待ってろよ! 悪い子はおあずけだぜ!」

 顎クイ!

「はああああっ! ハル様ぁぁ♡」

「ふふっ、そろそろ頃合いかな? ご褒美をやるよ」

「あふぁああああっ♡ す、すっごい♡ 満たされちゃう♡ ハル様、ハル様ぁ♡」


 遥は相変わらず攻め攻め春近が大好きなのだが、春近がよわよわになると逆に攻め攻め遥になってしまうのでよく分からない。

 今の春近は、つよつよエッチ女子が居ない為、攻め攻めバージョンになっていて遥もご満悦だ。


 注意:諸事情でプロレスごっこです。


 遥――

 攻め攻め主人公は難しいけど、遥が喜んでくれるのならやってやんよーっ!


 調子に乗った春近は、杏子にも強気でいく。


「御主人様! 私にもご褒美を……いや、お仕置きを!」

「杏子、もっとしっかり御奉仕しないとお仕置きは無しだからな!」

「は、はい、この淫らなメ〇犬は、御主人様の為に御奉仕致します!」

「じゃあ、くれてやるよ! ほらっ!」

「お仕置き、キタァァァァァァァァァァーッ!」


 杏子はMっぽいのだが、実際にキツいのは苦手であり、あくまで優しく攻められるのが好みなのだ。

 何となく春近も杏子の好みが分かってきた。

 お互いMっぽい性格なのに、この二人は気が合うので息もピッタリだ。


 注意:あくまでプロレスごっこです。凶器は反則です。


 杏子は相変わらずノリが良いな――

 見た目は地味に見えるけど、何故だか分からないけど凄い色気があるんだよ……

 メガネとかうなじとか……


 一二三には念入りにお仕置きだ。


「……くっ、春近……」

「一二三さん、どうなの? ちゃんと、何処が良いのか言ってね」

「……うっ、ああっ……い、言えない……」

「ちゃんと言わないと、やめちゃうよ?」

「くぅっ、ああっ、だ、ダメ……やめないで……も、もっと……」

「じゃあ、行くよ!」

「はうっ! んっ、ああんっ! ちゅっ♡」


 キスをしながら愛し合う。

 普段はクーデレ系彼女で無口で無表情なのだが、今は感情を隠すことができず乱れまくっている。


 注意: 大人の事情でプロレスごっこです。


 一二三さん――

 普段は大人しいのに、こんなに乱れるなんて……

 こんなギャップを見せられたらドキドキしてしまう。



 五人を相手に無双状態の春近は、全員とろとろに蕩けて夢見心地にしてしまった。

 こうして夜は更けて行く――――


 ――――――――

 ――――――

 ――――




「やっぱり、とんでもないハレンチ君です! ヘンタイさんです! 賀茂の言う通り淫獣です!」

 ポカポカポカ――――


 余韻に浸ったままベッドで一緒に寝ているアリスが、恥ずかしさのあまり春近をポカポカと叩いている。

 六人全員がベッドには入れないので、床にもう一枚布団を敷いて寝ていた。

 遥と杏子は満足して眠ってしまい、黒百合は限界を超えて失神し、三人が一緒の布団で寝かされている。

 春近は、ベッドでアリスと一二三に両側から抱きつかれていた。


「でも、アリスも喜んでくれてたんでしょ?」

「うっ……そ、それは……」


 敏感なアリスが何度も『許して』と言ったのに、ノリノリになった春近に何度も何度も攻められたのだ。

 もう、恥ずかしさや何やらで、文句を言いながらポカポカ叩いていた。


「まったく、ハルチカは……ルリや渚にはいつもヒーヒー言わされてるくせに、わたしたちにだけ凄い強気ですね。もう、襲われていても助けてあげないです!」

「ええーっ! それは困るような……で、でも、アリスも良かったでしょ? それとも、もうしない方が良い?」

「うっ…………そ、それは……して……欲しいです……」

「ふふっ」

「笑うなです!」


 ポカポカ!


「ちゅっ♡ ちゅっ、はむっ♡ んっ……」


 一二三が、さっきから春近の頬や首筋にキスをしまくっている。

 まるで、自分に構って欲しいと言わんばかりに。


「一二三さん、くすぐったいよ」

「ちゅ、ちゅぱっ……やっとこっち向いた……」


 春近がアリスとばかり話していて嫉妬した一二三は、こっちを向けといわんばかりにキスの嵐をお見舞いしていたのだ。

 やっとこっちを向いたところで、ここぞとばかりに速攻でくちびるを奪った。


「んっ♡」

「さっきは凄い乱れようだったね。あんな一二三さんは新鮮だな……って、いたた……」

「むっ……」

「いたたた、つねらないで」

「ちゅっ、ちゅちゅっ……」


 照れ隠しのように春近の脇腹をつねると、再びキスの嵐をしまくる。

 もう、好きで好きでたまらないといった感情が溢れていた。



 アリスも一二三さんも皆も可愛いな――

 本当に全員無事で良かった……

 あの時は、隕石が落ちてくると思った時は、もう本当にダメかと思ったんだ……

 でも、こうして無事に全員揃って帰って来られた。


 あれから、皆との絆がより深まった気がする。

 絶対にオレたちは幸せになってみせる。

 例え他の人からはハーレムだと後ろ指をさされようとも、南の島で楽しいスローライフを手に入れるんだ。


 ――――――――




 翌朝――――


「お肌つやっつやです! もしかして、毎日やったら美容効果が?」」


 アリスが鏡の前で肌の色つやを見ながら呟いている。


「うっ、聞かなかった事にしておこう……」


 エッチローテーション表のノルマが上がりそうなので、春近は見なかったことにした。




 春近たちが登校すると、一躍ヒーローのように持て囃される。

 隕石落下の危機を救ってからというもの、皆の春近たちを見る目が明らかに変わっていた。

 前のヘンタイハーレム王から、今では本物の英雄王のような扱いだ。


「あ、あの、もしよかったら……これ……読んでください」

 今日も春近は、見知らぬ女子からラブレターを渡される。


「えっと、気持ちは嬉しいけど、オレには彼女がいるから無理なんだよ」


 春近が、何度目かのお断りをする。

 あれからというもの、急にモテモテになってしまった。


「あっ、ご迷惑なのは承知の上なのですが、気持ちだけでも……ひっ!」


 女子が突然悲鳴を上げた。

 いつの間にか、春近の後ろに渚が立っていたのだ。


「あ、あの、渚女王様……す、すみませんでした」


 その女子は膝がガクガクと震え、今にも倒れそうなくらいに恐怖している。


「いいのよ。誰だって自分の気持ちを伝えたいコトはあるわよね。でも、春近はあたしのものなの」

「は、は、はい……す、すみません……」

「良い子ね。今度から気を付けるのよ」

「はい、女王様! 私、女王様に忠誠を誓います!」


 春近に告白した女子は、途中から渚に忠誠を誓ってしまい、自分の教室へ帰って行った。


「渚様、もっと怒るのかと思っていたら意外と優しいですね」

「は? そんなんじゃないわよ。あまり怯えられると結構傷付くのよ!」

「ああ……なるほど……」



 春近は自分の教室へと向かう。

 今日は大事な要件があった。

 残り少ない学園生活でクラスメイトに伝えなければならないことがあるのだ。

 二学期の終了と共に、皆とお別れになるという話を――――

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