第221話 家庭内エッチ攻防戦1
両親へ楽園計画で緑ヶ島に行くことや、鬼に対する考えやルリへの想いを打ち明けた春近は、とりあえず第一関門を乗り越えたと安堵していた。
しかし、いまだハーレム状態の件は隠したままで、多少不安の残るスタートになった。
そして最大の難関は……ルリを刺激して発情させてしまい、実家でハッスルされるのだけは回避させねばならないことだ。
春近は、荒ぶる鬼神様を鎮めなければならなかった――――
「ルリ、夕食まで時間があるから街を案内するよ」
「うん」
春近は、夏海が離れている隙を見計らってルリを連れだした。
夏海がすっとベッタリだと、ルリとゆっくり話ができないからだ。
「商店街の方に行ってみようか?」
「うん、面白そう。美味しいものとかあるかな?」
「それは止めとこうね。御飯前だし」
「ええーっ」
二人は指を絡めで手を繋ぎ、仲が良さそうに歩いていた。
いわゆる恋人つなぎというやつだ。
二人で、春近が少年時代を過ごした懐かしい場所を回った。
近所の神社、たまにローカルニュースで取り上げられる名所、それほど有名ではない商店街。
何の
それまで気に留めることもなかった風景も、好きな子と一緒に見るだけで全く違ったものに見えてくる。
道端に咲く名も知らぬ花でさえも、古びた使わなくなったような店の看板でさえも、まるで絵画の中の美しい情景のように。
そうして二人は、春近が生まれ育った街を歩いた――――
そんな感慨に耽っている春近だが、ふと要注意事項を思い出す。
そ、そういえば――
ルリにエッチ禁止だと注意しておかないと。
春近は、美しい情景から急に生々しい現実に戻った。
「ルリ」
「ん、なに?」
「あの……ちょっと言い難いんだけど、実家ではエッチ禁止ということで……」
「えっ?」
「ほら、両親や夏海が居るから……」
「なんだ、そんなの当たり前でしょ。変なハルぅ~」
なっ!
ルリがまともだ!(ちょっと失礼)
もしや、俺が誤解しているだけで、ルリは凄くエッチだけど一般常識は持ち合わせているのか? いや待て待て、授業中にチュッチュしてきたり電話中にペロペロしてきたりしてたような……?
どっちなんだぁーっ!
春近が自問自答している隙に、当のルリはエッチな妄想をしてしまう。
「あっ、でも……ご両親や夏海ちゃんに見つからないように、隠れて背徳エッチとか良いかも? ほらぁ、声を抑えて我慢しながらとかぁ♡」
春近は墓穴を掘った――――
「し、しまったぁぁぁぁぁー! 余計なことを言ってルリのエッチ
頭を抱える春近を見てルリが笑う。
「もう、ハルってば、冗談だよ。うふふっ」
「えっ……」
「ハルってば、凄くあせっちゃって面白ぃいい♡」
「ちょっと、からかわないでよ」
ルリ……本当に大丈夫なんだろうか?
夜中に隠れてベッドに忍び込んで来そうな気もするけど……
「ふふふっ、いつもハルが誘ってるのが悪いって、咲ちゃんが言ってたよ」
「はあぁ?」
「ハルがMオーラで誘い受けしてくるから、どうしても我慢できなくなっちゃうって」
「ええっ! 何だよそれ」
誘い受けとかオタク用語みたいなことを――
最初はBL用語だったけど、最近ではNLでも使うんだったっけ?
というか、何で咲がオタク用語みたいなのを?
「あれっ? 咲も杏子の影響とかでオタク用語に詳しくなったのかな?」
「あっ、そういえば……咲ちゃんって、昔はアニメや漫画が好きだったような……?」
「はああぁ? あの咲が?」
咲にオタクの過去があったと聞き、春近は驚く。
あのオタクと太極にあるような咲がありえないよな。
いや、待てよ……?
小学生の時に地味でアニメ漫画好きだった子が、突然派手めなファッションになって中学デビューとか高校デビューなんて話もあるしな。
いや、まさかな……
「あれ、土御門じゃん!」
「おっ、ホントだ。久しぶり」
ルリと少しイチャイチャしながら歩いているところに突然声をかけられた。
その者たちは、ちょっとだけヤンチャで派手めのファッションでありながら、実は中身はそこまでイケてはなさそうなごく普通の男に見える。
「あっ、田中と林……」
中学の時のクラスメイトだ――
特に親しくもないけど、かといって仲が悪いわけでもないような。
「久しぶり~」
「うえ~ぃ」
「久しぶり」
田中と林は、先程から気になっていた春近の隣にいる女に視線を向けた。
その女は、すらっとした長身にTシャツをはちきれんばかりにパツパツに持ち上げる形良い巨乳、くびれたウエストからまるで美味しそうな桃を連想させるムチっとした尻をしている。
更にそこから伸びる白く肉感的で瑞々しい脚、そして上に視線を向けると悪魔召喚儀式で呼び出したかの如く魅惑的で煽情的なサキュバスのように色欲を誘う美しい顔だ。
まるで
まるでこの世の者とは思えない美貌のせいなのか、周囲の空間が蜃気楼のように揺らいでいた。
もはや、トップ女優もグラビアクイーンも人気セクシー女優も軽く置き去りにしそうな、超絶美形で超絶エロい女に目が釘付けになってしまい、二人は生唾を飲み込み何故か前屈みになった。
「お、おい……その子ってもしかして……」
田中が、恐る恐る質問した。
「あ、うん、彼女だよ」
「「ぐっはぁぁぁぁぁぁぁぁあああああっ!!!!」」
二人の男は、嫉妬心やら敗北感やらでクリティカルダメージを受けて崩れ落ちた。
ゲームで例えるのなら、ゲーム序盤でそこそこの装備を付けてイキっていたところに、ラスボスの防御不可能バフ効果無効の特効攻撃をクリティカルでくらったようなものだ。
もう、圧倒的な差を見せつけられて絶望的な状況である。
「そ、そんな……土御門って目立たないタイプだったのに……」
「う、う……羨ましい……そんな超可愛くて超エッロい彼女を」
二人は倒れながらも、春近の彼女から目が離せないでいる。
「えっと……ハル、何でこの人たち倒れちゃったの?」
「ルリ……全部ルリが可愛すぎるのが悪いんだよ。ルリは可愛すぎて罪な女なんだよ」
「ええ~っ、ハルってばぁ♡ もうっもうっ♡ 褒め過ぎだよぉ~」
ルリが春近の腕に抱きついて、巨乳をぎゅうぎゅうと押し付けてイチャイチャしている。
その光景を見せつけられて、田中と林は更にゲームでいう死体蹴りのような連続クリティカル攻撃を受け続けることになった。
もはやオーバーキルだ。
ルリ――
もうやめたげて……二人のHPはゼロなんだよ。
たぶん無意識なんだろうけど……
「じゃあ、田中も林もまたな」
これ以上は二人の死体蹴りになるので、春近が立ち去ろうとする。
「くっそ、羨まし過ぎて立ち直れねえわ」
「今夜はオマエの彼女をオカズにさせてもらうからな」
「やめてくれ……嫌過ぎる……」
――――――――
春近たちが楽しそうに腕を組んで戻ると、真っ先に夏海が寄ってきて「ああーっ、またエッチな事しようとしてたでしょ!」と言われた。
もう、おやくそくだ。
夕食の時間になりテーブルに座ろうとすると、夏海が間に入ってきて「はい、禁止禁止」と、春近をルリと接触させないようにする。
もはや、二人の関係に嫉妬する恋敵のようだ。
そして、もう一人……一緒の食卓に困惑する者が。
夏場とあって、薄着のルリはエッチなボディラインが出まくっていることもあり、父親は目のやり場に困っていた。
息子の彼女を変な目で見るわけにもいかず、なるべく見ないようにしていたのだが、あまりにも魅惑的なルリをチラ見してしまうのは男性なら分かってもらえるはずだ。
しかし……やはり女性には分かってもらえないようで……
「あなた! ちょっとコッチに来て!」
「いたた……何だよ……」
母親が父親を引っ張って出て行った。
夫婦会議でも始まるのかもしれない。
そんな事情はどこ吹く風の夏海は、ルリにべったりだった。
「ルリ先輩、たくさん食べて下さいね」
「うん、いっぱい食べるよ」
「これもどうぞ」
「はむはむ……美味しいっ」
夏海がルリに料理を勧めている。
「ルリは食べ過ぎて太……ぐはっ!」
春近が余計なことを言いそうになり、夏海の肘が脇腹にめり込んだ。
「ルリ先輩、お風呂が沸いてるから、先に入っちゃって下さい。私は部屋にいるので、終わったら声かけて下さいね」
「うん、わかったー」
夏海が二階に上がったのを確認してから、ルリは食事が終わりくつろいでいる春近の所に行く。
「ハル~」
「ん? なにかな?」
春近を呼び出して浴室に連れて行く。
「ハルが先に入って良いって」
「えっ、いつもは夏海が先に入りたがるのに……」
春近は釈然としないまま、浴室へと入って行く。
裸になりシャワーを浴び始めた所で、突然浴室のドアが開きすっぽんぽんのルリが飛び込んできた。
「ハルぅ♡ 一緒に入ろうぉぉぉぉっ♡」
余りの予想通りの展開に、春近は一言だけ呟いた。
「本当にやりやがった――――」
夏海の監視を擦り抜け、無理やりエチエチ展開へと突入してしまった二人。
果たして、家族の目を潜り抜けエチエチ……ではなかった、危機回避できるのだろうか――――
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