第60話 デート編Ⅵ 忍

 雨が降っている――――

 梅雨明けなのかと思いきや、まだ少し雨が予報に逆戻りになった。

 この時期の天気予報はあてにならないようだ。


「今日は忍さんとのデートの日なのに……。梅雨も明けたのかと思ったけど、まだ続くのかな……」



 春近は女子寮前で忍を待っていた。

 あいにくの空模様で、降り続く空を見上げながら。



「春近くん」


 忍が寮から出てきた。

 何やら手に荷物を持っているようだ。


「忍さん、何処か行きたい場所はありますか? あいにくの雨になっちゃったけど」

「あの、春近くんは連日のデートでお疲れだろうから……私の分は無くても良いです」

「えっ、でも……」

「あのっ……そ、その代わり、もし良かったら……疲れている春近くんを癒してあげたいと思って……」


 忍さん……

 そんなに遠慮しなくても。何て良い人なんだ。


 こうしてデートは春近の癒しに決まった。

 よく分からないまま、春近は忍の後に付いて行く。



 校舎に入り、ずっと奥の方にある滅多に人がいない場所まで行く。そこは前にきたことがある場所だと気付いた。


 これ……前にアリスと来た和室じゃないか。

 確か、茶道部や華道部が使っていたけど、今は廃部になって使っていないという。



「ここです」

「やっぱり。ここは和室の」

「ここなら人が来ないですよ」


 忍は黙々と畳の上にマットとタオルを敷き始める。

 何やらオイルやタオルを準備していた。


「あの、マッサージしますので、ここに横になって下さい」

「あ、そういう事だったんだ」


 せっかくなので、忍さんにマッサージしてもらおうかな……

 春近は、マットの上に横になった。


 グイッ、グイッ――

「どうですか、このくらいの強さで良いですか?」

「うん、ちょうど良い感じ」


 忍のマッサージは、滅茶苦茶気持ち良かった。


「うっ、うわっ、凄く気持ち良いよ。癒されるー」

「うふふっ、良かった」


 忍さんの優しく包まれるようなマッサージ。

 最高に癒される。

 これは気持ちええーっ――――


「よく、こんな場所を知ってたね」

「はい、アリスちゃんに教えてもらったんです」

「なるほど」


 忍さんはアリスと仲が良いから、この場を教えてもらったのか。


「うんしょっと」

 むにっ!


 一生懸命にマッサージする忍が体勢を変えると、彼女の大きくてムッチリとした太ももが、顔の近くにきて春近はドキドキしてしまう。


 忍さんは大きいのを気にしているけど――

 このムッチリと大きくて少し筋肉質で肉感的な太ももは凄く魅力的だぞ。

 あの時のコスプレを思い出してしまう。

 女戦士ヒルドは最高に似合っていたなあ……。

 い、いかんいかん!

 忍さんが一生懸命にマッサージをしてくれているのに、オレがエッチな妄想をしているなんて彼女に失礼だ。

 


 一通りマッサージをして、日頃の疲れも癒されて楽になった春近だが、忍のマッサージはここで終わらなかった。


「今日はマッサージ用のアロマオイルも持ってきているんですよ。オイルマッサージもするので、服を脱いで下さい……」


「えっ……」


 服を脱ぐって……裸でマッサージされるのか……? 

 いや、変な意味じゃないよな。

 忍さんだし、真面目に癒してあげたいと思ってるだけなんだよな。

 でも、裸になるのは恥ずかしいけど……

 せっかくの忍さんの親切を断るのもわるいよな。


 春近は服を脱いで上半身裸になった。


「あ、あの……下も脱いで……」

「え、えっ、えっ!」

「あの、大丈夫です、紙パンツを用意しているので……私は後ろを向いてるので着替えて下さい」


 オイルで汚れるからだよな……

 変な意味は無いよな……


 紙パンツに着替えて横になる。


「着替えました」

「では、始めますね」


 とろぉぉぉぉーっ!

 忍がオイルを少量垂らしてマッサージを始めた。


 にゅるっ! にゅるっ!


「うはっ、メチャメチャ気持ち良い! ちょっとくすぐったい」

「少し我慢して下さいね」


 スリスリ――――スリスリ――――


 ふぁぁ~っ……

 何だか気持ち良すぎて変な感覚になってしまう。


 にゅるっ

「ひゃああっ」


 不意に彼女の手が太ももに入って春近がビックリする。


「ここにリンパが多いそうなんです」

「そ、そうなんだ……」


 スリスリ――――スリスリ――――


 ヤバい! 際どい場所をマッサージされて、下半身に血流が集まってくるのを感じる。

 マズいマズい! 忍さんが一生懸命マッサージしているのに、エロい気持ちでいるのがバレてしまう。


「では、仰向けになって下さい……」

「えっ、あのっ、仰向けは大丈夫なので……」

「ダメです! あの、最後までやらせて下さい」


 普段は大人しい忍が、少し熱くなっている。

 もう任せるしかないと、春近は覚悟を決めて仰向けになった。



 何とかバレないでくれ…………


 スリスリ――――スリスリ――――


 ダメだぁぁぁー! 気持ち良すぎるぅぅぅ!


 忍の手が胸やら腹やら腋やらをスリスリしまくって、春近は気持ち良すぎて我慢の限界になってしまう。

 そして、彼女の手が太ももから足の付け根に入り――――


 うわぁぁぁぁぁぁぁぁー!

 待て待て待て!

 そこは際どすぎるぅぅぅぅぅぅぅぅーっ!


「はぁはぁはぁ……」

 いつの間にか、忍の息が荒くなっていた。


 ううっ、お腹や太ももの付け根はやらなくていいのに。

 少し手が当たっているし……

 ダメだ、もうバレてしまう。

 こんなの恥ずかしすぎるぅぅぅぅ――――


「あ、あ、あの、もう良いですから! もう大丈夫です!」

 春近は起き上がり、忍の手を止める。


「い、いえ、まだ、まだやります」

 忍の手が完全にアウトな感じにスリスリしている。


「ちょっと、ストォォォップ!」



 忍は下を向いて落ち込んでしまった。

 春近はタオルでオイルを落としながら、落ち込む忍を気にかけていた。


 何だか気まずい雰囲気になってしまった……

 どうしよう……忍さんは悪気は無かったはずなのに。


「あの……マッサージありがとう。とても癒されました」

 春近は、そっと忍に声をかける。


「う、ううっ……ご、ごめんなさい!」

「えっ?」


 突然の謝罪に春近もビックリだ。


「じ、実は……春近君を癒してあげたいとか言っておきながら、本当はよこしまな気持ちでマッサージしてたんです」



「えっ、ええええっ! ど、どういう事?」


「疲れを癒してあげたいと思ってたのは……本当だったんです……それだけは……。でも、マッサージで春近君の体を触っているうちに、だんだんエッチな気分になってしまって……裸を見たいとか直に触りたいとか思ってしまって……」


 えええぇぇ……確かに途中から変だと思ったけど。

 やっぱり忍さんって、大人しそうに見えて肉食系女子なのだろうか? 女の子だって性欲あるってネットで見た気がするし。

 オレも、忍さんが変な事しないなんて勝手に思い込んでいたのも悪いよな。


「他の子が初近君とエッチな事をしているのを見て、羨ましくて……私も……」


「その……大丈夫ですよ。元々なんでもするって言ったのはオレなんだから。忍さんのしたいようにして良いんですよ」


「えっ! 良いんですか!」


 長い前髪の隙間から見えた忍の肉食系女子な目に、春近は『しまった』と思った。もう遅いのだが。


 忍は目をキラキラと輝かせて迫って来る。

 さながら女戦士ヒルドのエッチな同人誌のように。


 ち、近い……

 何かマズイ事を言ってしまったような気が……


「では、マッサージの続きをしますね」

「えっえっえっ、えええっ!」


 急にテンションが上がった忍は、オイルを春近の体に垂らして下半身を重点的にヌリヌリし始める。


「あ、あの、そこはもういいですから!」

 必死に手でガードしようとするが、あっさりと忍に抑え込まれた。


 ぐいっ! ぎゅぅぅーっ!

「はぁはぁはぁ……もう、悪い子にはお仕置きしちゃいます! えい!」


 えっ……まさか……

 忍は春近を跨いで上に来ると、カラダを入れ替えて逆向きになる。

 そのまま……大きなおカラダで顔をプレスしてきた。

 むにゅ!


「えい! えい!」

「もごぁ、ちょ……苦し……むはっ、ちょっと、忍さん……」

「ふふっ、もう逃げられませんよ! えい! えい! えい!」


 春近の両腕を忍の脚でガッチリとガードされ、もうされるがままに顔へのプレス攻撃と、下半身へのオイルぬりぬり攻撃をされている。


「ぐっ、ぐわっ!」


 ま、まさか忍さんが、こんなにエッチな子だったなんて……。オレは、とんでもない暴走エッチ女子の最終安全装置を解除してしまったようだ!

 

「はぁはぁはぁ……もう、我慢できません!」


 格闘技の抑え込みのようにガッチリと体を極められ、完全に身動きが出来ないようにされてから、、彼女は恍惚こうこつの表情をして顔を近づけてきた。

 そして、ねっとりとじっくりとエッチなキスを。


「んっ、むうんっ、春近君……好き……ちゅっ、大好き……ちゅちゅっ」


 大きなムッチリした体に最強のパワー。そして超肉食系女子。

 もう、誰も彼女を止められそうになかった。

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