第20話 ジョフロワ前国王とは

ガルグイユ達の手伝いもあり、大半の仕込みが終

わった。食前酒と称して古いワインを飲みながら


「今日は助かったよ、早く済んだ。」


「いやいや、ワイン分けて貰っているのだから幾

らでもこき使われに来るよ。」


「それなら、早く来てくれ。」


「う〜〜ん、面倒臭いからな。」


何だそれはと戯れ合うからブロンとガルグイユの

仲は何とも長年連れ添った夫婦みたいなのだ。


「まったく、長が人間とここにまで仲良くなると

はな、うん十年で初めてみるよ。」


ペルーダが呆れながら長とブロンを眺める。

ヴェルトがへーと関心していたらオリブルとギイ

は「いや、遠い昔に1人いたぞ。」その人は?誰

ですかとグリが聞くとギイが目を細めながら。


「ここの国の前国王だよ、森でブラブラしてるら

しいが最近消息不明でな、だいぶ年だからね。」


ブロンにも聞こえたらしく反応して頷きながら


「それはジョフロワ前国王だな。息子に後を任せ

て王妃と森や村を見て回っていると聞いたよ。王

の立場では見れなかった国の全貌を知りたいとね

。」


「ブロン、知っているのか?」


ガルグイユが隣でびっくりしながら聞いてきた。


「そりゃあ前国王だし、まだ青二才の頃に何度か

戦さで補佐として付いたことがあるんだよ。面白

い王だったな、エネルギーの塊だな国王に相応し

い方だった交渉も気持ちいいやり方をするしね。

頭も腕も立つ憧れる男だ。」


「前国王の事ですか納得です。ブロンそれを言う

ならジョフロワ前国王が一番目に掛けたのはブロ

ンだったろ?。ガルグイユとの仲も納得ですね。」


グリが笑顔になる。ガルグイユが不思議に思い、

どう言う意味なんだ?とグリを見る。


「僕とジョーンヌはジョフロワ前国王がまだ現役

時代の護衛騎士、でも入ったばかりの新人で超下

っ端だったんだよ。だけどガルグイユとの仲は今

初めて知ったけどね。」


「前国王がお気に入りだったブロンが部隊長にな

るには部下が必要だろうからと幼馴染の俺達と、

皆ブロンならと同じ新人だった護衛から志願して

来た者なのさ戦の闘い方に惚れて、ってやつさ。」


ジョーンヌが懐かしそうに笑って話すのを聞かさ

れ、ブロンが照れ臭そうに苦笑いする。


「こいつら皆、変態なんだよ。」


それを聞いて、他の隊員達が口を尖らせる。


「酷いじゃないですか仕方ないでしょ。怪我人を

背負って闘うんですからね。あれ見て惚れない男

は居ないでしょ。」


「そう、他にもある。長引いた酷い戦さの時だよ、

器用に怪我人振り回しながら闘うのが凄かった。

彼の甲冑を盾にしながらなんだから。」


「そうそう、ガンロの話だ『無茶苦茶だったがた

だそのまま死ぬより面白かった』とね、彼は腕を

潰されてたから死を覚悟してたのにブロン隊長に

『お前を待ってる奴が泣くぞ、意地でも帰ってや

れ』ついでに役に立てと盾代わりにされて、マジ

か?と笑ってしまったら敵がビビっていたから、

尚面白かったと今だに笑い話ですよ。今では片腕

だけになっても嫁さんと幸せそうにしてますよ。」


隊員達が、アレは酷いよなと思い出しながら笑う

のだ。ブロンも思い出しながら笑っている。


「いや、奴の肝の座り方だよヤケ気味に『怪我人

なんか役に立たない鉄の塊』と言うから盾代わり

にしたのさ死にたく無いと泣くのかと思ったら笑

うんだぞ?俺まで笑ったよ。」


呆れたガルグイユ達も笑いながら、


「何にせよ、人間はしぶとくて怖いよ。」

「確かに、」

「しかし、ジョフロワ前国王との繋がりがあった

とは世間は狭いな。」

「まあ、長生きしてるオレ達からしたら狭いさ。」


皆が確かにと頷きあった。


ちなみにガルグイユ達は国王に会うのは人間体だ

し必ず森の奥でだったそうな。信頼している側近

を二人だけと随分気をつけたらしいと聞きブロン

は不思議に思う。


「何故、そこまで慎重にしたんだ?」


「竜が身内みたいになったら、下手な奴は戦さに

出せとか言うかもしれないし、隣国との揉め事の

種になりうるからな。とにかく俺達竜を巻き込み

たくないと言ってな秘密にしてたのさ。」


ガルグイユの話にブロンが頷きながら


「采配の天才だったジョフロワ前国王らしいな。」


「あとは、お前達との仲を独り占めしときたいし

と笑うからな。」


「また、かわいい事を。」


とジョーンヌとグリが笑って、だから護衛騎士で

も下っ端じゃ耳にすら入らないから、知らないよ

なと隊員達と笑っていた。




夕食を一緒にと勧められたガルグイユ達だが。

何故かネージュの向かいには竜のペルーダ、オリ

ブル、ギイが並んで座るのだ。そしてネージュを

ガン見だから食べづらい…。さすがに会話でもと

口を開けば。


「あの…私何か変ですか?」


「いや〜綺麗な瞳だね!」

「髪色といい、俺達の種族にピッタリだよ。」

「肌も白くて、正にネージュの妖精だ。」


隣りに座るブロンがすかさずネージュを腰から抱

え込むようにしながら威嚇するのだ。ガルグイユ

の悪戯もあるが、彼等には少し洒落にならない雰

囲気がある。何よりネージュの魅力を分かってい

るみたいだから不安になる。


「やだなぁ〜無理やり奪わないよ。」

「泣かされたなら、いつでも迎えに来るから。」

「意地悪をされたらいいなよ。」


何だか冗談じゃ無さそうでガルグイユが呆れて


「お前ら人間には興味無かったんじゃなかったの

か?人間は色々と面倒だとか欲深いとか言ってた

のに、つがいは竜を頑張って探す筈だろう。」


考え変えただの、いやこの子は別とか随分な気に

入りように、ブロンは益々不安になったのか眉間

に皺を寄せる。そんなブロンを見て笑顔のネージ

ュが聞いてくるのだが…。


「私はブロンさんのつがいにしてくれるんでしょ?」


天然なのかわざとかはネージュは前者なのだが、

彼等の会話の流れで言ったのだろうが流石にこれ

はストレート過ぎるからブロンは真っ赤になって

しまう。


「ブロン、ネージュからプロポーズしてるぞ!」


ジョーンヌが面白がって一言押して来る、気づい

たネージュが慌てて。


「いや、えっ?あっ、違います、待って、」

「違うのかな?」


真っ赤になりながら違わないだのと混乱し始め、

やだ恥ずかしいだのと照れてるのだから可愛い。

そんなネージュにリラとフルーが酔った時の話を

思い出し悪戯をするのだ。


「あれ、ブロン様の子供欲しいんでしょ?あっ作

るんだったか?」

「そうそう、産む覚悟はあるだったかな?」


キャァ!と叫ぶより早くブロンの両耳を両手で塞

いだり腕を回したりして聞こえ無いようにしてい

る、結局はブロンの顔面に胸を押し当てている状

態に周りは肩を震わせている。


「き、聞かないで!じゃなくて話がちがーう!」


ジョーンヌがやっぱりネージュは面白いよと笑い

が止まらない。ブロンはただ嬉しくてネージュに

されるがままになりながら、そっとネージュの腰

に腕を回し抱き締めていた。



余りにも楽しくてガルグイユ達は飲み過ぎたから

と泊まることにしたが、城よりツリーハウスに興

味深々で仲良くそちらに寝に行ったのだ。

ネージュが心配そうに窓から木の方を見ながら、


「酔って落ちませんかね?」

「竜が木から落ちるのは見ものだな。」


ブロンは笑いながらネージュをベッドに引っ張り

込む、ブロンも多少酔っているのだ。


「奴らはほっといて、慣らしだ。」

「慣らし?なんの…」


唇を塞いで、これが慣らしだとゆっくりと手が伸

びる先は…ネージュが気を失うまで続いたのだっ

た。

普通の男ですからね。

 

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