第17話 嫌な奴が訪問した日

ここ数日、変わらない穏やかな日々が続く、葡萄

を収穫しながら潰し樽に詰める作業を今日も朝か

ら続けていた。


「ほら、男共に踏ませたら渋くなる、ネージュが

踏むのが一番なんじゃ、ほれほれ踏まんか。」


じい様達が相変わらず囃し立てネージュが騒ぎ、

隊員達がどう言う意味だと大笑いする。女達も笑

いながら歌って躍るように踏む。

そんな穏やかな時を一変させる数頭の馬がやって

来たのだ。



「楽しそうだなぁ〜」


先頭の馬に乗る男が少し鼻にかかる高い声で話し

かける。髪は明るいブラウンで青い瞳、着ている

服装からして貴族だろうと分かる。

後ろの2人は友人だろうか?部下だろうか?ネー

ジュには分からなかった。とても嫌な目つきの男

達と言う印象しか残らなかったからだった。


ただ、一瞬にして空気にピリついた緊張感が漂う

のだ。じい様達すら笑顔が無くなり、張り詰めた

空気を帯びているのだ。

その馬に乗ったままの訪問者の前にブロンとジョ

ーンヌが立つ。


「兄上、態々こんな場所までご足労とは珍しいで

すね。用事があるならば伝令を寄越して頂ければ

すぐに伺いますが、何の用ですか?」


ブロンの良く通る声や話し方は丁寧だが険を感じ

るし「兄上」と聞いてネージュは妙な気持ちで見

ていた。


「ふん、言い方だな父が久しぶりに来いと言って

いるのだ。お前やお前の母親が今だに心配らしい、

収穫時期だ宴をするんだよ。」


「……俺も母もそういった行事は嫌いだと。」


「ああ、分かっているよ、ただねぇ父があまり長

くなくてね。色々と話を詰めたいんだよ?分かる

だろ?それより〜ペットを飼っているんだって?

うちの使いの者が見かけてね。宴より、そっちの

興味本位で来たんだよ。」


兄らしき男は何とも他人が不愉快になる様な話し

方をする。ただブロンは父の事が気になり問いか

けるのだが、


「父が長くない?どう言う意味だ。」


「まんまだよ、病気だよ。半年持てばいいんじゃ

ないか?あ〜〜君か?なるほど白い毛並みか、へ

ーいいね〜」


ブロンを無視する様にさっと馬から降りて大きな

桶に近づこうとする。ブロンとジョーンヌが止め

ようとするが兄と一緒に居た男2人が素早く馬か

ら降りブロン達を阻むのだ。兄の護衛か何かは分

からないが彼等の雰囲気にあまり揉めたくない相

手だと分かる。


桶に入る為の階段を上がり桶に掛けた橋を渡って

兄と言われた男がネージュ達を見下ろしながら目

の前に立つのだ。慌てて隠す様にリラとフルーが

ネージュの前に立つが、兄は躊躇無く剣を抜き振

り回すのだ。


「邪魔だよ?貴族に逆らうの?」


橋を降りて女子供関係無く簡単に切り付ける雰囲

気にネージュが慌てて、リラとフルーの腕を引っ

張り、自分の身体を前に出していた。


「そ、そんなに白髪が珍しいなら遠慮なくご覧下

さい貴族様!」


ネージュが精一杯声を張り上げて睨み付けている。

兄とやらは橋から見下ろしながらニヤリとし橋の

上でしゃがんで剣をネージュの鼻先へと近づけて

行くのだ。まるで小動物を痛ぶるのを愉しむ様な

視線なのだ、リラとフルーが両脇から必死に守ろ

うとしがみついて居てくれる。

その姿にブロンが無理矢理兄の護衛を退け、桶に

飛び入りネージュ達を背に隠す様にして立つ。


「女性に剣を向けるのは騎士としても紳士として

もあるまじき行為、一からマナーを学ぶべきな気

がしますよね?それに用は伝令だ済んだろう。」


苛立ちを隠すのをやめたブロンを兄は気にせずニ

ヤニヤしながら、剣の先を凄むブロンの頬に当て

て小馬鹿にする様に話す。


「マナー?知らないよそんなもの、知らなくても

困らないだろう?で、来るの来ないの?父に会え

るの最後かもよ?」


まるで父親のタイムリミットが分かっている口振

りに妙な胸騒ぎを感じる「何をしたんだ?」と聞

く前に、城内に居たヴェルト兄妹とニュイが慌て

て出て来た、そしてブロン達の状態にニュイが叫

んでいた。


「止めて!息子から離れて!」


「ふん、ニュイも来てくれるよね?それと、、」


兄はニヤニヤしたまま、ブロンの頬にある剣先を

スッと動かし後ろのネージュに向け、


「この子も一緒に連れてきなよ?君の可愛いペッ

トなんだろうからね。」


「なっ!」

「行きます!ブロンさんから離れて下さい!」


「ネージュ!」


「 ふ〜ん、ネージュって名前なのか可愛いね。」


そう言って兄の異様な笑顔にネージュは寒気がし

たがそれでも睨みつけていた。

行くと返事をした訳でも無いのに兄は満足気にゆ

っくりと馬に戻るのは父親が良く無い状況だと振

ったからにはブロン達は必ず来ると分かっている

からだった。護衛達も馬に乗ると「三日後に迎え

を寄越す、じゃぁな。」と機嫌良く馬に鞭を振っ

ていた。


兄達の馬の蹄が遠ざかって、やっと空気が流れる

程に止まっていたらしい。皆が胸を撫で下ろす中、

ブロンの背中にしがみつきながらガタガタ震えだ

すネージュだ。それでも怒った様な声を絞りだし


「何で出て来るんですか?」

「えっ?いや、あいつは…」


震えながらも怒っているネージュ、振り返るブロ

ンのその顔を見てやっぱりと言った顔をして泣き

出すのだ。


「あの人は簡単に人を殺します。追いかけ回して

笑いながら殺しますよ。」


「えっ…」


ネージュがそっとブロンの頬に手を伸ばして触れ

た場所に痛みを感じ、切られて血が出ている事に

ブロンはやっと気づく兄の行動に怒りだけがあっ

て気付かなかったのだ。それよりネージュの手が

まだ震えているし尋常じゃない怯え方に、


「まさか、あいつに追われたのか?」


「アダンの家に来た、兜外した顔…同じ…アダン、

エメ……ブロンまで殺されちゃう。」


震えながらもブロンを抱き締めるようにして呟く

のだが、


「殺されちゃダメよ、ブロン様……」


そう言って意識を失った。




「最初にネージュを襲った奴か?」

「らしい、こんなに冷や汗まで……」


「恐ろしかったんだろうな、何年も前の記憶だろ

うにあんなに震えて…」


ブロン達は気を失ったネージュを桶から出し様子

を見ているのだがぐったりしたままなのだ。

ネージュの足をジョーンヌが拭いてやりながら、


「一旦、部屋で休ませてやれ。」


頷きブロンは彼女を抱えて自分の部屋に向かった。

ネージュを抱き抱えたままベッドに座り、更に抱

き締めながらブロンは怒りに震えだしてしまう。


ネージュはどんな思いで奴の前に立ったのか、あ

んなに震えるほど怖いのに俺の心配なんかして…

ふと、腕を叩かれて気付くネージュが目を覚まし

ていた。


「…あの私。」

「大丈夫か?倒れたんだが…」


「そうですかすみません。あっ頬手当てしなきゃ」

「いいよ…大した事無い、すぐに治る。」


そうブロンが言うも、ネージュが頬に恐々触れて

「痛そう」と呟きながら微笑むのだ。倒れる程に

怖くて震えていたのに…。変わらず健気な姿に笑

って痛くないと言ったら傷を容赦なく突いて来る。


「それは、痛いだろ?」

「ふふっ、我慢するからですよ。」


ちょっとムッとして、ひょいとネージュの身体を

起こして膝の上に座らせ痛いだろと怒った顔をし

てみる。ちっとも怖がる様子もなく、考え込んで

からブロンの顎を両手で挟んで近づくから何をす

るのかと思っていたら、そっと傷口を舐め始める

のだ。小さな舌でゆっくり舐める…少しだけチリ

ッと痛み色々と辛くなってくる。


「ネージュ…どういうつもりだ…」

「猫だと傷口を舐めるのじゃないかな?」


「ふ〜ん、そうか。」


ブロンに対しての可愛い悪戯なのかも知れ無いが

何かがプツンと切れる、ネージュをベッドに押し

倒し、少し捲れたスカートに躊躇なく両手を突っ

込み下着をスルッと剥がすように脱がしてしまう。

いきなり流れる様な素早い動作に驚いてええっ⁈

どうやって!とか言っている間にブロンは当たり

前の様にネージュの両足を摑み押し開く。


「えっ!やだっ!まって!どうして?」

「どうして?煽って火をつけたんだ。仕返しだよ」


「あおる?火?えっなん…で…やっ」


聞く耳は無い、すかさず小さな花芯を舐めてやる、

但しゆっくりとだ猫が水を飲む様に舌をチロチロ

動かす。必死に抵抗する言葉を出そうとするが優

しく弾く様に舐め続ければ、可愛い鳴き声しか出

なくなり口を押さえて震え始める。舐めるのを止

めてもネージュは息をするのが精一杯なようだ。


蜜口が蜜か俺の唾液か分からないぐらいになり、

指で周りをなぞりながら焦らすように入口で止め

たりする。花芯の周りもなぞったりすると腰が揺

れるから堪らず指を入れてしまった。

それだけでネージュの身体が反るように震えるの

だ。指を二本にしても締め付けて全身まで痺れた

かの様に震えている。そのまま中で指を動かした

ら身を捩り泣きながら止めてとブロンの手に爪を

立てる。

ネージュを抱き込むようにして顔を覗き込むと


「やだっやっ…身体が苦しいから…止めて…」

「ネージュが舐めるか苦しくなった。」


「もう…舐めないから…」

「それは、うーん、やだな。」


「意味が、わからないよ…頭の中も苦しくなる、

からとめて…」


「ネージュの記憶からあいつを消したい。」


目の前で悲しそうなブロンの表情にネージュが少

し微笑み、瞳を潤ませたままブロンの首に腕を回

しながら


「ありがとう。でも、いつもブロンさんで頭の中

は一杯だから苦しいんですよ?」


「……ほら、煽っている。」


えっいや、許してと泣きそうな顔をしたら余計に

止まらないんだが…。ここは、グッとこらえて夜

の楽しみにしようと微笑んでいた。


どうやらネージュを色々と苛めて楽しむ自分が少

し怖かったりするブロン、かなり重症な気がする

がネージュ限定だし彼女が可愛いのが悪いんだと

誤魔化していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る