第13話 深刻な理由とは…

さあさあ夕食時間だと皆が早々に集まるのだ。そ

う、幸せそうなブロンとネージュを見れるのかと

思った面々が目にするのは…。深刻な顔をした二

人が静かに食事をしている姿だった。


見ていれば喧嘩しているわけではなさそうで籠に

盛ったパンを取ろうとして、ふたりの手が触れて

目を見合わせて照れ臭そうにする様はほのぼのす

るのだが、その後何故かお互い深刻な表情になる

のだ。


「何だ?どっちなんだ?」

「何なんでしょうかね?」


ジョーンヌとグリが自分達の食事を忘れて、いや

皆が困惑しながらブロンとネージュを眺めていた。


「兄さん、何があったか想像つく?」


「さあ…ニュイ様、何だと思われますか?」


「私もさっぱりだわ、リラかフルーは思い付く?」


ヴィオレが兄ヴェルトに聞き、ヴェルトはニュイ

に聞くが首を傾げるしかなく。更にリラ達に聞く

も二人は顔を見合わせて首を傾げる。


「何なんでしょうかね。」

「面白いですけどね。」


他の隊員達も残念そうに呟くしか無い。


「冷やかしたかったんですけどね。」

「イチャついて欲しかったな。」

「見てられん状態を期待したんだが。」


さすがに、ツリーハウスで何が起きたのか気にな

り、それぞれに尋問してみましょうかとヴェルト

とヴィオレ兄妹が頷き合った。




まず、食後に無事帰った理由として葡萄酒を飲み

始めたが、ブロンは変わらず深刻な表情のまま呑

んでいた。


「さあ、明日は葡萄潰しに精を出さなきゃな。

収穫もあるし、さあ今の分が渋くなり過ぎるから、

在庫処分だ皆んなも、もっと飲めよ。」


ジョーンヌがワインをぐいぐいブロンに注いで飲

ませる。弱くはないが多少は饒舌になるからと、

いつもよりペースを上げて飲ませる。ヴェルトも

注いだりしてとにかくブロンに飲ませて酔わせて

みようと試みる。


「深刻な顔じゃ、ネージュが心配しますよ。」


グリが先陣を切る様にサラッと話を振ってみる。


「そうだな…心配してる。」

「えっ、何を?」

「……難しい問題だ。」


ブロンがぽろっと呟く言葉に含んだ何かを引き出

そうとジョーンヌもすかさず助け舟的な言い回し

で、何の問題があるのを聞こうと肩を撫でながら

問いかけて行く。


「問題解決するには、皆で知恵を絞り出すべきだ

ろう?何が問題なんだ話せよ。」


「うーーん。」


ブロンは益々眉間に皺を寄せて考え込んでいた。




女性達もたまには女同士で飲みましょうかと台所

横の作業部屋へと篭る。男達が今回も無事だった

事を祝って、ネージュにも飲めそうなチェリーを

漬けた果実酒を出してみた。


「美味しい!初めて飲みます。お酒って苦いのし

か無いのかと思ってました。」


「最初は果実酒から軽く始めた方がいいわよ。」


と言って説明をしているのに、何故かグイグイ飲

み始めるネージュにニュイが慌て。


「甘い果実酒だからね飲み易いから。最初はゆっ

くりじゃないと後が大変だから、ゆっくり飲みま

しょう。」


そう言ってネージュのカップを持つ手を止めるよ

うに触れると、


「ゆっくりでも後が大変だと思います…」


「ええ、そう後がね。……ん?」


ネージュは眉間に皺を寄せて不安そうにニュイを

見つめる顔は別の事だと言っているのだと気付い

た。






数時間前のツリーハウス内では、お互い好きなん

だとしっかり認識して抱き合ってホッとしていた。

ふと、ネージュが太もも辺りに当たる硬いものに

疑問をいだいた……。


「ブロンさんが、これは何ですか?」


とつい、触ってしまって気付いて真っ赤になり…

色々と後悔する事になる。


「なっ、それは…」


さすがにいきなり捕まれ恥ずかしそうなブロンに

対して赤い顔だったネージュが青い顔になり何故

か固まる。


「ネージュが可愛いから、その男は…どうした?」


固まったまま、今度は自分の腕を確かめるように

触って…更に蒼ざめる…。


「指で痛いのに…こんなの無理…裂けちゃう…」


今度はブロンの手首辺りをこわごわ触って、息を

飲むのだ。えっ?と自分で手首握り今更見比べ、

自分の指を見てブロンも固まる。


「確かに…どうしようか…」


まさかの自体に二人は途方に暮れながら抱き合っ

て唸るしかなかった。




と言う経緯を聞かされ、ヴェルト達は固まりサッ

とブロンに背を向けて皆が集まる。


「ど、どうしたらいい?」

「手首辺りって…どんだけ…」

「デカイからとは…」


「う、羨ましい…」


ジョーンヌは呟いた隊員の頭を素早くはたく。


「バカ、二人には深刻な問題だぞ!」


「いやまあ、最初ネージュは子供と勘違いする位、

細かったが実際は小柄では無いし、だいぶ他の女

性達と変わらない肉付きになったろ?初めてだか

ら怖くなったからでは無いのか?」


ヴェルトが思い付くのは「不安からの錯覚」では

ないのかと言いながら、はたと重大な事に気付き

グリと同時に叫ぶ。


「初めて?暴行されていないのか!」

「未遂なのか、これは良かったな。」


「でも、身体中の怪我は?」


だいぶ酒の回った、ブロンが半開きの目を向けな

がらネージュから聞いた理由を話す。


「半分は木から落ちての怪我らしい、半分は襲わ

れたのもあると…」


「それなら、どうやって身を守ったんだ?」


「……小さいと言ったらしい…。」


何とも単純な回避方法だろうが効果は抜群だろう。

ジョーンヌを始め隊員達が固まって震え声を必死

で抑える中、ブロンは静かにテーブルに頭を置き

悲しそうに呟く。


「あんなに恐いものを見る目だぞ、普通だと気に

した事もなかった、俺も小さくなりたい……、

縮まないかな、削るか……。」


これはこれで、相当なショックを受けているブロ

ンだ。真面目な男だやりかね無いとジョーンヌ達

は慌てる。


「待て、待て、いやほら、ネージュはちゃんと見

た事がないからさ、こう見間違いとか恥ずかしい

とかださ、ガルグイユの裸でも騒いだ位だ。」


「そうそう、

好いた男のだから立派に見えたとかだな。」


「思ったより立派過ぎて恥ずかしく……。」


どんな慰め方だと思うが案の定ブロンには響かず

ネージュはそんな女じゃないよ……とため息を吐

いて、またワインを煽っているのだ。

リラの夫が思い付いて立ち上がる。


「なら皆と比べたらいいじゃないですか?」


確かにとフルーの夫も頷く、他の隊員も確かに皆

裸を見た事があるし、ぶら下がった物にはたいし

た違いがありそうにないと頷き合う。


こうなると、ヴェルトも仕方ないと立ち上がった。

真面目なブロンだからまた動かなくなると思い浴

場にブロンを引きずり隊員達と全員で全裸になる。


「さあ、皆、起立させろ!」


ブロンが呆れた顔をしたが


「比べてから悩め!変わらなかったら笑い話で済

むだろ!ネージュを取られるぞ、いや抱きたいん

だろ‼︎」


ジョーンヌのとどめの一言で真剣な顔で服を脱ぎ

捨てた……。




一方、ヴィオレ達も話しを聞いて固まる。

ネージュはカップ一杯でもう酔っていてニュイに

訴える。


「子供産むから、私だって多少は分かりますよ。

でも、は無理です。どうしたらいいんですか?

皆さんはどう乗り越えたんですか?

ずっっと出産するみたいなんですか?」


さすがにニュイも息子のアレの話になるとは思わ

ず真っ赤になって困ってしまった。子供を産んだ

事が有るのはニュイだけだし、ヴィオレも上手い

説明が出来無いからどうしようかと思ってる所。


「そう?変わらないんじゃないの。」


逆に不思議そうにフルーが聞くのだ、その言葉に

乗ってヴィオレも誤魔化したつもりが、


「そうそう皆同じよ。ネージュは見た事がないか

らブロンのが凶暴そうに…。」


ニュイが堪らず顔を両手で隠してしまった。

ヴィオレが言葉を間違えた!とニュイに「あっ、

いやその違って、立派に、いや…あー」とやって

いるのをしょんぼりした顔でネージュが助けるの

だ。


「私別に見た事ありますよ、襲って来た人のを…

必死で一か八かで『小さい』と言ったら怯むから

……本当にブロンさんの手首より小さかったんで

すね。」


ネージュの言葉にリラとフルーが盛大に吹き出し。


「ネージュ、頭良い!」

「きっと、それは本当に凄く小さかったのよ。」


「本当に?それじゃあブロンさんのは普通?」


少しだけ安心した表情になるネージュにリラとフ

ルーが笑って何度も頷き。


「皆が裸で湖で泳いでたの何度も見た事あるもの、

多分大して変わらなかったわ。」


「うんうん、そんなに大きかったら選んでた。」


やだ〜フルーったらと楽しそうに手で表現したり

とこちらも多少酔っている様子。ヴィオレとニュ

イもやっとホッとしながら笑顔になって。


「ほら、ネージュが怯え過ぎなのよ皆大した差は

無いのよ大丈夫。ブロンは真面目だからネージュ

に気を使ったのね。」


「そう、ブロンったら生真面目だからネージュを

大事にしたいし無理な事は絶対にしないからね。」


そう安心させる様に背中を撫でながらブロンの部

屋へと誘導する、ふらふらのネージュを連れて行

きベッドへと寝かせて。

さてと、とブロンの話はどうなったかなと女達4

人は食堂へと移動した。

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