第12話 臆病な山猫の雄

数十日経つがブロン達が戦から帰って来ない日々

が続く中、ネージュは黙々と掃除や家事、畑仕事

をしていた。ただ黙々と…。

リラやフルーと楽しそうに会話していたりするが

ふと、開け放った窓の向こう遠くを眺めているの

だ。ネージュにとっては初めてブロンと離れて過

ごす日々なのだから、彼の姿を探して居るのかと

思うとニュイもヴィオレ達も切なくなる。



まだ、陽射しが暑いが葡萄を収穫し始めた。今か

ら当分は葡萄の収穫で忙しくなる。同じ品種をせ

っせと籠に取り入れていく、枝から実を取り大き

な桶に入れていったら、皆んなで裸足になって踏

み潰す。これらを濾過し発酵させたりと大変なの

だ。


葡萄の粒が裸足の裏に当たるのは初めての経験だ、

何とも言えない感触にネージュがキャアキャア騒

いで楽しそうに潰している。

じい様達が粒をどんどん桶に入れ、笑いながら指

示をするのだが。


「ネージュ、もっと潰さないかそっちもだ。男達

が潰すと渋いんだ。ほれ頑張って潰してくれ。」


「そうだ、女が踏んだ方が美味くなる。生娘が潰

した葡萄はなお良いワインになるんだぞ、ネージ

ュほれ踏め。ネージュがどんどん踏め。」


何気にセクハラな事を言っているからネージュが

赤い顔で怒ってるが可愛いだけだろう。


「や、やだ、何言ってるんですか!」


それを見ながらリラとフルーがびっくりしながら

笑って茶化すのだ。


「ええ?ブロン様ったら何やってるの!」

「まだ?!手も足も出してないなんて駄目ね!」


「そんな事無いです!」


と言って…葡萄でも塗ったみたいに耳まで真っ赤

になって固まってしまう。これでは何かは有った

と白状した様なものだろう見れば笑顔の4人の視

線に居た堪れず。大きな桶からピョンと飛び出し

て水を張った桶で足を洗いながら、


「あ、暑くて眠いから昼寝します!」


慌てて木に向かって逃げる様に走って行く、その

後ろ姿を見ながらヴィオレは微笑み。


「まるで猫が驚いて慌てた姿ね。」


「ふぅ、キス位はしたのかしら?ブロンたら真面

目過ぎるんだから。」


ニュイがクスクス笑うと、3人も笑いながら葡萄

をまた踏み始めた。もう少しねと踏んでいると、


ドガドガと激しい馬の蹄が遠くから聞こえて・・・ん?一頭だけ?と4人とじい様達が作業を止めて

誰かなと待っていると現れたのはブロン。

馬を降りながら止めたりと軽業の様な登場だ。そ

のまま甲冑を素早く脱ぎ捨て、城の中へと消える。すぐにザバァーと派手な水音がするのだ。


「湯は冷めてるんじゃないか?」


じい様がよっこいせと歩いて外から浴場辺りで声

をかけたらすぐにブロンの返答がある。


「ちょうどいいが、後から皆が入るから温めた湯

を足してくれ!」


あっという間に着替えて出て来る速さに驚く、

そしてやっと外に居る母達に気付いたらしいのだ。


「あっ、ただいま戻りました。でっネージュは?」


4人がスッと木を指差すより速く走り出していた…


「まあ…ブロン様も猫みたいね。」

「ほんとねピンと立てた尻尾が見えるわ。」

「獲物が待ってるしね〜。」

「やだ〜。」


4人が楽しげに笑っていると、複数の蹄が聞こえ

て隊員達が帰って来た。


「やっぱり、出迎えどころじゃ無かったな。」


時期的に葡萄酒の作業中だろうとヴェルトが笑い

ながら馬から降りる。ただ、ジョーンヌもグリも

腹を抱えながら馬から降りる。


「そわそわしたと思ったら、急に走り出すんだよ。

皆はゆっくりでいいぞ〜ってさ。」


「戦さの片付けの速さ見せたかったですよ、今ま

で随分手抜きだったんですね。」


他の隊員達も大笑いしながら馬を誘導していた。


「俺たちより酷いな、どれだけ彼女に会いたかっ

たんだよって感じなんですから。」

「まったくだ、落ち着かなさ過ぎて心配になる」


その言葉にリラとフルーが寂しそうに大袈裟に

呟いている。


「いいなぁ〜あんなに会いたがってくれて。」

「だねっ、羨ましい〜!」


旦那達が慌てて、


「いや、俺達だって会いたかったよ!」

「隊長より先にはマズイだろ!」


ジョーンヌやヴェルト達、独り身達が嘆く。


「やっぱり、独身組は肩身が狭くなったな。」


独り者達は仲良くお互いの背中を流そうか?背中

だけにしろよと笑いながら城の中に入っていく。




ブロンは静かに梯子を登り、ゆっくり扉を開けて

中に入った。見ればネージュはマットの上で丸く

なって寝ているので静かにそっと横に座った。


髪を撫でてやっとホッとする、頬に触れて胸が痛

んだと思っていたが違う痛みだと気付いた。

締め付けられているんだ…ネージュが好きなんだ

と改めて感じる。


自分の気持ちすら分からなくなって居たのか、誤

魔化そうとしていたのかも知れないと笑う。

側にいるだけで安らぐし、一時だって離れて居た

くない程に隣に側に居てほしい。

ミモザ以上にその想いが強い事に申し訳なく思う、いやミモザを失ってるから尚強く思うんだろうか…

ただネージュの手を強く握っていた。



ん……手を、誰か握っている、この暖かさは…

ブロンさん⁈


そう手の感触や暖かさに、ガバッと起き上がって

いた。自分の側に座っている人を確かめるように

頬をさわって夢じゃないと嬉しくなる。

助けて貰ってからずっと一緒だったから、ずっと

離れて寝た事無いから、寂しいと眠れなくて。


「ただいま…はや…。」


ブロンが微笑んだ顔が嬉しくて、涙が溢れるより

早く抱き付いていた。


「寂しかった、会いたかった、おかえりなさい…」


ギュウギュウと大きな胸にしがみつきながら泣い

てしまっていた。ブロンがネージュの背中を撫で

ながら切なそうな声が返って来る。


「俺も会いたかったよ。」


そう言ってからネージュの両腕を緩めて自分の胸

から離し、顔を寄せて口づけをする。すぐに暖か

い舌がネージュの口の中を舐めてきた。それだけ

で身体が震えて息が乱れて涙が止まらない。

ネージュの顎を押さえながら小さな舌を舌でなぞ

り続けると、しがみ付いて身体が震える様が可愛

いくてマットにそのまま倒れながら身体中を撫で

て行く。震える身体は熱くて、ブロンの熱も益々

上がるのだ。生死に触れるいくさ後だから余計に欲の

熱が上がる。ブロンの右手がネージュの胸を撫で

れば硬くなった先端を感じ、すぐ軽く摘んでしま

う全身がビクッと跳ねるほどの反応に唇をやっと

離した。

ネージュの顔を見て恐がっていないかを確認する。

赤い顔で困っているようだ「怖いか?」と聞くと

微かに微笑んでゆっくり首を振るのだ。

またキスをしながらシャツのボタンを外し胸元を

開き乳房を露わにした。

初めて見た時と変わらず綺麗な乳房にそっと触れ

ていく、ネージュが震えて目を閉じてしまうがそ

れさえブロンの欲の熱が上がってしまう。手に触

れた肌がしっとりとしている張りのある乳房を包

む様に押さえ唇と舌で、小さくとも硬くなった先

端を優しく咥え転がして行く。ネージュは更に震

えながら口元に手の甲を押し当てている。

軽く噛み吸い付くと堪らずに可愛い鳴き声が漏れ

出る。

もっと聞きたくて良い場所を知りたくてスカート

をたくし上げ下着の上から撫でる。ゆっくり筋を

探りながら感触を愉しんでいた。柔らかな膨らみ

を解す様に指を滑らせながら硬い物に指先が触れ

た。そこを指で優しく行き来させ続ける、指先が

触れる度にネージュの腰が揺れ動くのだ。

背中に回った小さな手がシャツを掴んだまま、息

さえ止めた様に身体が強張っていく。


閉じた目頭に涙の粒が切なく感じ、早く飛ばして

やろうと下着の中に手を入れかわいらしい繁みの

先は…ブロンを一瞬にして獣に変えそうになる。


「可愛い……」


そう呟く程に小さな花芯が震えているし、その先

がしっかり潤んでいて背筋が痺れた。花芯を指先

で優しく優しく蜜で滑る様に撫でて行く。ネージ

ュが慌ててブロンの肩を掴む程に甘い痺れが身体

中を走っているのだろう息が乱れて震えている。


それでも優しく潤んだ蜜で花芯をそっと撫でると

何度も可愛い鳴き声を上げて腰が跳ねている。

涙が溢れさせながらブロンの首にしがみつき震え

る可愛い鳴き声に安心しながら、もっと良がらせ

飛ばしてたいと指を花芯からゆっくり下へとなぞり、溢れた蜜口に中指をゆっくり入れてみるが狭

いのだ。蜜が有るが狭い「え?」と思いながらも

ゆっくり指を埋めて行くと「いっ…」ネージュの

甘い鳴き声じゃない事に涙で濡れた顔を見て


「ここは、まさかまだ!」


困った顔で小さく頷く赤い顔のネージュを見てホ

ッとし抱き締めていた。今手を出しているくせに

安堵しながら抱き締めてしまう。

「よかったな……」ブロンが呟く言葉にネージュ

が不思議そうに聞き返した。


「まさか、暴行されていたと?」


ブロンは抱き締めながら、あんなに怯えていたし

死のうとまでした。何より身体中傷だらけだった

事を言われる。ネージュも何となく気遣われてい

たのは分かっていたし、毎日一緒に寝てくれてい

た事は実は不思議だったのだ。

ただ、側に居てくれる事で小さな物音すら怖くて

眠れ無かったのが嘘の様に眠れたから、多少甘え

ていた所があった……ブロンを独占しても誰にも

怒られないのだから。


「もしかして、心配して一緒に寝てくれてたんで

すか?」


「いや、まあ、最初はそれもあるが……。ネージ

ュと寝ると良く眠れたのもあるし、その、まあ、

出来る限り側に、一緒に居たいのが本音だが……。

ただ、もっと相応しい男がいるかもしれないと…」


絞り出す内容は嬉しい言葉なのだが最後の歯切れ

悪い呟きに、ネージュは胸の奥がざわつき。


「…あの行くなって、ガルグイユさんと私がどこ

かに行くって事だったんですか?どこにってまさ

か、ここを離れる様な話しなのですか?」


びっくりする程、困った表情をするブロンに何だ

か呆れてしまうネージュ。


「何でそんな話に?私行くなんて言ってないし、

ガルグイユさんは竜でしょ?」


「その、気に入ったからつがいにすると…」


「…番?鳥とかの番?あの、私の気持ちは?」


俺が勘違いして…と決まり悪そうにするのだ。

ネージュは呆然としてしまう、自分より大人で格

好良くて、隊長で体格のいい男性があんなに慌て

て出て来た理由と自分の気持ちがぐちゃぐちゃに

なってしまう。


「無理…。」

「えっ?」


情け無い男だと思われたとブロンは血の気が引く

のが分かった。どんな死闘より怖い気持ちになる

しネージュの瞳から涙が溢れるのが辛い。


「無理です、もう無理です。」

「……」


ただ、続くネージュの言葉は思っていたのとは違

っていた。


「他の誰かの側では眠れないんです無理です。

ブロンさんと一緒に居られないんだったら、私は

どうしたらいいんですか?私捨てられたくない。」


ネージュが泣きながらブロンのシャツを掴んでい

た。同性なのに眠れなかったが、異性いやずっと

怖かった男性なのにブロンの側なら何の不安も無

いのだ。そして抱き締められた暖かさや匂い、そ

れらに包まれる幸福感や独占したい想い。

好きな気持ちを伝えなくても側に居てくれるから

安心だったのにと捨てられそうだった事に涙が止

まらなくなる。


「違う、違うんだ俺は一緒に居たい。すまない、 臆病な俺が悪いんだネージュを離したくないのに、

手離せないのに。」


ネージュを力一杯抱きしめながら、ブロンの目に

も涙が溢れる。簡単に諦めれる訳が無い程に彼女

の存在が心の中を占めているのに、伝えも確かめ

もしないまま手離そうとした自分が情けなかった。


「本当に馬鹿だな、俺はネージュを胸に抱くとこ

んなに安心出来るのに誰にも取られたくないのに」


「ん、バカです。凄く…。

私ブロンさんが好きなんですよ、大好きなんです。

どうしてくれるんですか?ちゃんと最後まで飼っ

てください。捨てないで。」


「だ、誰が捨てるものか!いや違う、俺を嫌わな

いでくれ頼む。」


ネージュがもうっと怒った声を洩らし、ブロンの

胸を押しながら腕から少し離れ、素早くブロンの

両頬を摘みネージュは頬を膨らませる。


「なんですか変です!好きだって言ってるでしょ

どうやったら嫌いになれるんですか?」


膨れたネージュと頬を引っ張られたブロン、なん

だか間抜けな姿に二人で顔を見合わせたまま笑い

出していた。単にお互いが好きなだけの事だろう、

逆に離れる理由を探さなきゃならないのだから、

抱き締め合いながら二人で笑っていた。


それこそ誰かが無理矢理にでも二人を離さない限

り、いやそんな事は絶対に起き無いだろうと思っ

ていた。

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