第6話 ツリーハウスを作ってしまう
ジョーンヌが中々いい見晴らしと木の形状に何か
触発された様で、ヴェルトやグリを始め隊員達を
集めて力作業を始めるのだ。話しを聞いて爺さま
二人も職人魂に火が付き細かい作業を嬉々として
進めている。同じく話しを聞いたブロンも笑顔で
承諾する内容だった。
戦から帰ったばかりなのに全員が無我夢中で作業
を進める、納屋に有る木材を片っ端から引っ張り
出して加工したりと大忙しなのだ。
ニュイと一緒に洗濯を手伝いながらネージュは目
を細めて遠くを見ると、男達が何やら動き回る姿
と賑やかに何かを話す光景だった。
「凄く楽しそうですね、皆さんは本当に仲が良く
て凄いな。」
「そうね、本当に仲が良いわ。でも久しぶりなの
よ皆が楽しそうに何かを一緒にするのって、ネー
ジュのおかげよ。」
ネージュが「私?」と不思議そうな顔をして何か
を聞こうとしたが、リラやフルーに呼ばれてすぐ
に畑へと笑顔で歩いて行った。
ニュイは楽しそうな彼女達を見送る。数年前も同
じ様に皆がそれぞれに仲良くやっていた。
そんな日々のなか、ブロンはミモザと結婚すると
決まり誰もが喜んでいたのだから。二人は幸せ一
杯だったのに、まさかミモザが亡くなってしまう
事が起きるなるなんて誰も思いもしなかった……。
思い出して瞳から涙が落ちてしまうのを慌てて拭
う、ニュイもまだミモザの死を受け入れきれずに
いたのだ。母親の自分がこれだものね息子のブロ
ンの心の支えになんてなれやしない、情け無い母
親だと思っていた。
そんな中に現れたネージュだ、一瞬にして皆が城
内が明るくなったのだ。そして昨夜のブロン姿や
今の皆が楽しそうな事が嬉しくて仕方ない。
ネージュがここに来てくれた事に心からニュイは
感謝していた。
「まさか、ここまで早く作るとは!」
「ネージュは目が少し悪いだろう?万が一がある
からな、早く完成させないと木から落ちる可能性
もあるだろ、梯子に手摺りもいるよな。」
ヴィオレが驚く中、ジョーンヌ達が満足気にまだ
未完成だがツリーハウスをお披露目していた。
朝から始めて昼過ぎにはほぼ出来上がるほどなの
だから、皆の機動力にはびっくりしてしまう。
「しかし、ネージュは木に登って寝ていたとはね、
身の為とは言えやっぱり山猫だな。」
グリが笑って木を見上げて、ブロンも確かにと木
を同じ様に見上げて「夜、木に登って行く様は猫
にしか見えなかったよ」と笑うのだが、ヴィオレ
と後から来たニュイが呆れた。
「まあ、貴方も立派な山猫だったわよ。」
リラとフルー達が畑から籠を仲良く運びながら戻
って来た。男達が集まって楽しそうなのに気付い
て籠を一旦玄関脇に置き、ヴィオレやニュイも居
るので輪の中に入る。
「どうしたの?大勢で集まって。」
「木の板とかノコギリ?何を作っていたの?」
不思議そうなリラ達二人の背後からネージュも顔
を出してキョロキョロしながら
「確かに木の板が沢山有りますね。」
そんなネージュにジョーンヌとグリが声をかける、
呼ばれて「何んですか?」とネージュが近付くと
ブロンが手を差し出すから、つい「お手?」と言
いながら手を置いたらジョーンヌが吹き出してい
た。ブロンに手を引かれて昨日のブナの木に近づ
くと梯子らしき人工物が見えて驚く、夜だが木の
枝位置を確認するに見て回ったがそんな物は無か
った筈だ。そのまま視線を上に向けて続く梯子ら
しき物体に困惑する。
「えっ?えっ?」
ブロンの方を見て「登るかい?」と聞かれて何度
も頷いてから、手で梯子を確認したらそのまま駆
け上がる様に登って行った。ヴェルトがびっくり
しながら「登るの速いな!」と笑う。
木の枝に上手く連なる様に梯子が掛かり登り易い、
目が見え難くても木に登っていたのだから、梯子
が有れば楽々なのだ。そして上に上がり切っても
っと驚いてしまう、昨夜寝た場所に板が敷かれて
いてまるで部屋のようになっているのだ。少しだ
け壁板が作りかけであったり、まるでベランダの
様な場所もあるのだ。
立ち尽くしたままのネージュ、後から上がって来
たブロンが声を掛けると静かに振り返って「降り
ます」と静かに降りて行き皆の前に行くと、
「あの、これは…いったい。」
ネージュが喜ぶかと始めたが、思った反応じゃな
いからジョーンヌ達もブロンも戸惑ってしまった。
「いや、あのままだと登り下りが大変だと思って
な、後壁とか窓とか屋根がまだなんだけどね。寝
るにも雨避けはあった方がいいかなと、慣れるま
では木の上の方が落ち着くかなって。まだ完成し
てないんだが……気に入らなかったかな?」
「…そんな、私の為に?皆さん……」
ジョーンヌ達が困った顔で頷くのを見て、ネージュ
がボロボロ泣き出すから慌ててしまい。
「あっ、いや、ご…、」
「ありがとうございます!」
ネージュがいきなり飛びつくようにジョーンヌに
抱きついてきた。
「嬉しいです!凄い!嬉しい!素敵です!
ありがとうございます!」
そういいながら、全員に喜びながら抱きつきお礼
を言って廻ってから笑顔一杯で叫ぶのだ。
「もう一回登って良いですか!」
ジョーンヌ達が笑って。
「何度でも、ネージュの場所だ。」
と笑うとネージュはまた抱きついて「ありがとう」
と叫んできゃーきゃー喜びながら梯子を登って行
くのだ。
ヴェルトとグリがびっくりしながら。
「結構声が出てたな!」
「喜び方がまた可愛いですね。」
リラとフルーが「私達もいい〜?」と上に向かっ
て叫ぶと「来て!皆の場所だよ〜」と叫んでいる。
声を抑えないでいる事にブロン達も安心して微笑
んでいた。
「中々の驚き方でドキドキしたよ。」
と一瞬やり過ぎか、失敗だったかなと思ったジョ
ーンヌがホッとしながら、「明日は」とグリ達と
建築の続きを話している。
ブロンが「ありがとう」とジョーンヌの 肩を掴む
と「お前も喜ぶから作っただけさ」と笑って明日
も力仕事頼むぞと背中を叩いた。
皆がそれぞれツリーハウスからの景色を堪能した
後にブロンが登って行くと、沈む夕陽を眺めなが
らベランダ辺りに座って動かないネージュが居た。
「ブロンさん、ありがとうございます。」
「おっ、何故俺だと?」
「足音の感じですから多分ですけど、当たりまし
たね。」
凄いなとネージュの横に座って景色を眺めた、何
度か登って眺めた事のある木だが違った感じに見
える、広がる金色の畑がオレンジ色に輝いて風に
なびいて行くのだが、ネージュと眺めているから
だろうか不思議な気分だった。
「小麦畑がいい感じだ、もうすぐ収獲だな。」
「あの、言ってなかった事、腕怪我させちゃった
事誤ってなかったでしょ、ごめんなさい。
あの、命も助けて貰ってるし…何か色々として貰
ってる、こんな素敵な場所まで…」
隣で膝を抱えたネージュが気不味そうに話しだす、
色んな事が嬉しいのだろうがチラリと見上げる顔
が少し困っている風なのだ。ブロンからすればど
れもが大した事では無いが遠慮しなくいで欲しい
とネージュの肩を撫でて。
「あぁ、腕か?ネージュを背負っても問題無いか
ら大した事はない。ここも皆が喜んでやっただけ
なんだ、じい様達も楽しそうだったんだから、逆
にお礼を言いたいぐらいさ、ありがとう。」
ブロンがそう言いながら頭を撫でてると、ネージ
ュが脇腹に抱きついてお礼を何度も言うのだが…
胸の感触がくすぐったかったのは内緒だ。
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