ザンジバル

〇居酒屋「ザンジバル」・中(夜)

   店奥のカウンター席に並んで座る、東城と宮内哲夫(26)。

   徳利を傾け、宮内の持つ猪口に酒を注ぐ東城。

   徳利を置き、自分の前に置かれた、酒で満たされた猪口を軽く持ち上げる東

   城。

   東城、宮内を見て、

東城「カンパイだ」

宮内「何に」

東城「お前との再会に」

宮内「そんなに会ってなかったか」

東城「しばらくな」

宮内「そうか、そんなに会ってなかったか」

   宮内、猪口の酒を飲み干す。

   徳利を持って、宮内の猪口に酒を注ぐ東城。

東城「部署が違うだけでもな」

   東城、徳利を置く。

宮内「そもそも俺は、昼間は会社にいない」

東城「どこでサボってる」

   猪口の酒を飲む、東城。

   徳利を持つ、宮内。

宮内「鋭いな。実は今日はその話をしたくてな」

  東城の猪口に酒を注ぐ、宮内。

  宮内、徳利を置いて、東城を見る。

東城「それで呼んだのか」

宮内「まあ、そんなとこだ」

   宮内、ニヤつきながら徳利を持つ。

宮内「付き合ってる子がいて、たまに会って

いる」

東城「仕事中にか」

   猪口の酒を飲む、東城。

   東城の猪口に酒を注いで、徳利を置く宮内。

宮内「お前も、てきとうに遊ばないと」

東城「その子とは遊びなのか」

宮内「断じて違う。ただ、お前は遊びすらしてないだろう。いい店を教えるから、ま

 ずはそこに行け」

東城「キャバクラとか」

宮内「いや、酒は飲まない方がいい。真剣に話をするなら酒はいらない」

   宮内をじっと見る、東城。

東城「もしかして、そこはフーゾクか。真剣にとか言って」

宮内「いや、東城。お前はバカにするかもしれないが。お互いに何も隠すものがない

 んだ。こんな真剣なことはないだろう」

   宮内、猪口の酒を飲み干し、東城を見る。

東城「宮内、付き合ってるって」

宮内「きっかけはどうであろうと、今は違う」

東城「辞めたのか」

宮内「店を移っただけ」

   宮内を見る、東條。

   東城、ニヤリと笑って、

東城「それ、逃げられたんじゃないの」

   宮内、語気を強めて、

宮内「断じて違う」

東城「連絡取れてるのか」

   宮内、手酌で酒を飲み始める。

東城「お前、移った店も知らないんだろう」

宮内「知ってるさ」

東城「本人から聞いたのか」

宮内「友人から聞いた」

東城「そうなんだ」

   東城、徳利を宮内から取り上げて、自分の猪口に酒を注ぐ。

宮内「おい、お前」

   東城、徳利を軽く振って宮内を見る。

東城「もうないじゃないか」


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ペイパードール 阿紋 @amon-1968

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