ペイパードール

〇ヘルス店「ペイパードール」・個室・中

   バスタオルを腰に巻いて、ベッドの縁に座っている東城卓也(26)。

   水色の薄手のワンピースを着て東城の隣に座るMOE(22)。

   MOEはうつむいて東城に体を寄せている。

   MOE、顔を上げて、

MOE「ねえ、勝ち組さん」

東城「どこが勝ち組なんだよ」

MOE「一流企業の正社員さんなんでしょう」

東城「たまたま、コネがあっただけだよ。それに一流じゃない」

MOE「謙遜するのね」

東城「してないよ」

MOE「可愛い彼女とかいるんでしょう」

東城「いないよ。いたらこんなとこには来ない」

MOE「こんなとこね」

   東城、MOEを見て、

東城「ごめん。そんなつもりじゃ」

MOE「いいのよ。こんなとこだもの」

   MOE、微笑んで卓也を見る。

MOE「でも、君なら彼女なんていくらでもできるでしょう」

東城「それがさ、上手くいかないんだよ。生まれてからずっと」

   東城、微笑んでMOEを見る。

MOE「誰とも付き合ったことがないなんて言わないで」

東城「まあ、成り行きでってことはあったけど、好きだった子にはみんな振られて

 る」

MOE「それ本当に好きだったのかな」

東城「どうゆうこと」

MOE「そのままの意味だよ。君が振られるとは思えない」

   東城、MOEの目を見る。

   MOEも東城の目を見る。

   しばし、お互いを見る東城とMOE。

東城「好きって言えなかったんだよ、どうしても」

MOE「好きになった子には」

   東城、MOEを見たまま、首を縦に振る。

MOE「いけませんね」

東城「わかってるよ。それに最近は、面倒くさくなって、好きならないようにとか考

 えたり」

MOE「末期ですね。そうゆう人よく来るけど」

東城「あのさ、この際だから俺たち付き合ってみない」

MOE「えっ」

   東城、MOEを見ずうつむいたまま、

東城「実際、MOEちゃん好きだし」

   東城の顔を覗き込む、MOE。

MOE「君ねえ、そうゆうことを言うときは、ちゃんと相手の顔見ないと」

東城「やっぱりそう」

   ゆっくりとMOEを見る、卓也。

   MOE、うなずきながら、

MOE「そうだよ」

   微笑む、MOE。

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