第5話 諸々込みでめんどくさい

 その後、言葉通りにレポート作成が待っていると思ったが、マーナは自身の言葉を訂正した。

「これからレポートを、と思っていましたが、その前に病院へ行き、身体検査をしてもらいましょう」


「今検査するのと、明日検査するのとで結果が違うことももしかしたらあるかもしれません。まだ病院の空いている時間にいきましょう」


 おや、と虚をつかれたが、確かにいち早くやるべきかもしれない。

 なにせ自分はこの体の身長も体重も詳しくは知らないし、肉体が変化したことによってなんらかの不安要素があるかも。そう考えると理に適っていると言えなくもない。いやだが、この肉体はフェルたちが用意したのだから不調などあり得るのだろうか。


 そういえばこの体については詳しく聞いていなかったと反省するが、もしかしたら不調どうのではなく、今の状態を記録することが目的なのであろうか。


 そう考えリリィは提案を快諾し、その後マーナはこんな言葉を告げた。

「ここからは、私だけではなく、町長にも同行してもらいます。もう少しでこちらに着くそうなので少々お待ちください」


 おそらくは、いち役場職員が全部背負うような案件ではないのだろう。世界初の来訪者などといった御大層な肩書は伊達ではないのだから。

 待っている間はマーナとお話をしながら先ほどよりも格段に気楽に過ごした。


「そういえば、魔法を知らないと言っていたのにどうやって魔力検査をしたんですか?魔力の操作方法なども知らないのでは?」

 単純に疑問なのだろう。不審というほどでもないが気にはなるといった様子のマーナ。


「ん〜、こう、グッて感じで指先から血を流すように…」

「あー、まあ、集中すれば誰でも出来ますからね。そこまで変なことでもなかったですね」

 という会話をしたり。


「うーん、胸って邪魔ですね」

「それはまあ仕方ないですよ。大きいですもんね」

「そうですね、でもこんなに違和感があるなんて…」


「なんだか変な言い方をしますね。まるでいきなり胸が成長したみたいなことを言うなんて」

「それはまあ、元の世界では男だったので」

「えっ…!じゃあ、もしかして異世界に移動する際には性別が変わってしまうとか、そういう可能性も…これは早めに身体検査をしたいですね」

 と、マーナが落ち着いた雰囲気を崩して驚いたり。


 そんなふうに会話を弾ませていると、マーナよりも少し年上だろうか、40代後半といった感じの男性が視界に映る。しっかりと整えた髪に肩幅のある体格はスーツをより格好良く見せつけてくる。

 どうにも入り口の方から真っ直ぐに来る様子からして町長で間違い無いだろう。


 男性はリリィの近くに来ると、言葉を発する。

「はじめまして、私の名前はガドル・ベレードと申します。若輩者ではありますが、この町の町長をさせてもらっています」

 腰を折り、軽く礼をするそのガドルに、リリィも椅子から立ち上がり挨拶する。


「はじめまして、リリアナといいます。よろしくお願いします」

 同じく腰を折ると、ガドルは大人の雰囲気が滲み出る笑みを見せた。

「これは礼儀正しいお嬢さんだ。私の娘にも見習ってほしいものです」


 そんな社交辞令もほどほどに、マーナが、

「お疲れ様です町長。早速ですが、すぐに病院へ行き、リリアナ様の身体検査を行いましょう」

 有無を言わせぬ物言いに、そんな態度でいいのだろうかと不安になるリリィ。だがそれは杞憂だった。


「まったく、兄使いの荒い妹ですね。こちらは今来たばかりだというのに。しかし善は急げと申します。それではいきましょう、リリアナ様」

 この二人は兄妹なのか。言われてみれば確かに茶色の髪も同じで、目元のキリッとした感じも似ている。二人して役場に勤めているとは、なかなか堅実な性格をしている。


 そうしてリリィは役場を出て、再度道を歩く。ガドルが先導し、マーナはリリィの隣という配置で道の端、歩道の部分を進んだ。


 そしてふと思い至り、胸元を見やる。胸に抱いたフェルはローブの上からすっぽりと隙間に入り込むような形になっており、少々息苦しそうだったので、位置を変えた。これからは頻繁に様子を窺った方がいいのかもしれない。


 というか自分で動けばいいだろうにと思う。しかし、フェルは下手に動いて落ちてしまう方が面倒だと考えたのかもしれない。そう思うと、なんだか納得がいく気がした。


 先ほど来た道を逸れて、しばらくすると白を基調とした、これまた大きな建物とご対面する。

 これも役場と同じくそれほど目立ったところは見当たらなかった。


 入り口の自動ドアを通ると、中の様子がよくわかる。

 外観と同じく白を基調として、清潔感を醸し出すつくりとなっていて、ところどころに木材を使った壁や柱が見られる。


 外から見た時も大きいと思ったが、室内はもっと広く感じられた。都会にある総合病院の雰囲気によく似ている。入り口のすぐそばには数多くの長椅子が置かれており、その椅子は受付を待つ人で彩られていた。


 すると人々は町長の姿を目にして「おや、町長」「スーツで病院に来るのは珍しくない?」「どうしたんだろ」とざわつく。


 そんな反応をよそに、受付へ行こうとする二人をハッとしたリリィが引き止める。

「ごめんなさいマーナさん。私お金持ってないです」

 少々青ざめた表情のリリィに、マーナは安心させるように笑って説明する。


「安心してください。この世界では子どもを出産すると、戸籍登録をし、魔力検査も行います。そして戸籍を登録したその後1ヶ月は病院と治癒院での治療費が無料になるのです」


「あ、そうなんですね。よかったぁ…ん?治癒院ってなんですか?」


 安堵の声をもらした後、聞き覚えのない単語に反応する。


 するとマーナは親切に説明してくれる。

 治癒院とはすなわち治癒の魔法やそれに類する能力によって傷を治すための機関らしい。


 元々魔法による治癒は肉体の損傷に対する効果が大きく、反面、体内での異常、つまりは病気などにはめっぽう効果を発揮出来なくなるという特徴を持つのだとか。ゆえに役割によって機関を分けているのだそう。


「病気だと思ったら病院へ行って、ケガならば治癒院と覚えれば簡単かもしれません。まあここと同じく大きなところでは併設してあることも多いので、そこまで気にする事はないかもしれないですが」

 なるほどと頷く。役場の職員らしく、説明は得意なのだろう、わかりやすい覚え方まで教えてくれた。


 そんなことはともかくマーナは病院の受付へと歩いてゆく。遅れぬように後を追うリリィ。ガドルも隣にいる。

「すみません、先ほど町長が連絡した件で、フィッツ先生はいらっしゃいますか」


 受付でマーナがそう告げると、

「少々お待ちください、今お呼びしますので」

 と返し、奥へ行こうとする女性。


 しかし、時間は一分もかからなかった。

「おや、町長からの連絡だったのにどうしてマーナがいるんだい?」

 そう言いながら奥から出てきたのは白衣を着た女医と思しき人物。歳の頃はマーナと同じく40代と見られ、気安い態度からおそらく二人は友人なのだろうと推測できる。


 薄く緑がかった髪を後頭部でお団子にまとめて、それによって露出した耳には普通ではありえない特徴が見られた。尖った耳はこれでもかというほどに己が存在を主張してくる。

 緑の髪も、尖った耳も、リリィの常識にはないものであり、町中でも同じ特徴を持つ人がいたがこうして目の前にいるとやはり驚きを禁じ得ない。


 だが、そんなリリィをよそに大人たちは言葉を交わす。

 受付から出てきた女医は朗らかな笑みを浮かべていた。

「兄さんは隣にいるわ。それよりゼレーナ、あなたどうして受付のところにいるの?」

 口調から堅苦しさが抜けているので、マーナの友人という推測は当たりだったようだ。


「そりゃ、今は若くて優秀なのが多くてね。それに今日は来る人も少ないし、予約も入ってないんだから堅いこと言いなさんな」

 気の良いおばさんと言った様子でおどけてみせるゼレーナという女性に、今度はガドルが話しかける。


「こんにちはフィッツ先生。今回連絡した理由は彼女のことについてさ」

「おお、町長さん。こんにちは。彼女ってのは、そこにいる綺麗な子のことかい」

 そういうと、リリィとゼレーナは目線が合う。


「あの、はじめまして、リリアナといいます。よろしくお願いします」

「ああ、よろしく。あたしはゼレーナ・フィッツだよ。一応医師と治癒師の両方の免許があるから、困った時はあたしのところへおいで」

 治癒師、というのはおそらく治癒院での治療を担当するものの資格なのだろう。文脈から容易に理解できた。


「それで?この健康そうな子がどうしたっていうんだい?この町の子じゃ無さそうだけど」

「見てもらった方が早いわ。ちょっとそこの受付で彼女の魔力検査をしてもらえる?」

 その言葉を聞き、ゼレーナはもう一度受付に入り、手元で操作を行う。すると役場で見たように卓の一部が開き、板の形状をした検査機が露わになる。


「それではリリアナ様。これに触れてください」

 先ほどと同じように手を触れ、魔力の線を板に繋ぐ。いまだたどたどしく時間がかかるがもう三度目ともなると数秒早くできるようになった。


 浮かび上がるディスプレイ。もう慣れたがやはりどういう技術なのかは気になるところだ。その画面を見たゼレーナは訝しげな表情を見せる。

「ん?戸籍登録がほんのちょっと前?どういうことだいこれは。いや、こんなところで話すのも邪魔になるね。3人ともちょっとおいで」


 ゼレーナは建物の少し奥の方まで3人を連れてゆく。

「んじゃ、私の診察室で話をしよう。ここだよ」

 中に入ると、そこにはこれまた白く簡素な机と椅子が左側に置いてあり、反対側にはベッドが配置されている。そして部屋の隅に椅子がもう一つある。患者用のものだろう。普通ならばその机にはパソコンが置かれているのだろうが、それは無く、大きくスペースを空けている。


 ゼレーナは奥から椅子を二つ持ってきて皆が座ると話を切り出した。

「それじゃ、その子のことを教えてくれるかい?戸籍登録から一時間も経ってないなんておかしいだろう。まさか今生まれたわけでもあるまいし」


「そうね、それについては詳しく説明するわ」

 そう告げた後、マーナはリリィの事情を話す。

 おそらくは異世界から来たであろうこと。その証拠に戸籍と魔力を登録していなかったこと。そして危険思想は抱いていないであろうということも。


「いやいや、戸籍のことから異世界から来たっていうのはまあ信じてもいいけどさ、リリアナさんには悪い言い方だけど悪さをしないだなんて言い切れないだろう?」

 当然の反応だ。けれどマーナはこれに即座に反論する。


「大丈夫よ。リリアナ様は本当にこの世界のことを知らないみたいだし、なにより敵意がないから。私が保証するわ」

 力強くそう返す。するとゼレーナはやれやれといった様子で椅子の背もたれに体重をあずける。


「ふう、ま、あんたがそこまで言うなら信じようかね。そもそも身体検査をすればある程度はわかることだし、マーナは確かに昔からいろんなことに気付くヤツだからね」

 そういうと、ゼレーナは空中にただようパソコンもどきを起動させ、画面と手元のキーボードを操作する。薄く水色に光るそれは何度見てもSFチックで格好いいと思うリリィだった。


「それじゃあ、これから身体検査をするんだけど、その前に説明をしておこう。リリアナさんは人が生まれ持つ体について知ってるかい?」

 質問されるが、何のことだかわからないリリィは首を傾げた。


「ふむ、異世界とやらにはそういう教育がなかったってことか。まあ、簡単に説明するよ」


「人間はね、生まれた時点で二つの体を持っているんだ。一つは肉体で、もう一つは精神体。この二つは離れることなく、同じ座標に存在し続ける」


 へー、と短く相槌を打つ。ゼレーナは話を続けた。

「それで、肉体に血液が流れているように、精神体には魔力が循環している。そして肉体は生命を維持し、精神体は心を維持する。言い方を変えれば精神体は魂って言ったほうがわかりやすいかもね」


 なるほどそれは確かにわかりやすい。なんだ、この世界には説明が上手な人しかいないのか。

 そんなリリィの胸の内を知らぬゼレーナは話を締めくくった。

「とりあえず、身体検査っていうのは肉体だけじゃなく、精神体の異常も見つけることができるんだってこと」

 わかったかい?という言葉にリリィははい、と元気に応えた。


「いい返事だ。それじゃあまずは身長と体重を測ろう。身体検査はそのあとだね」

 そういうと移動を始め、ある部屋へと入る。

 ちなみにフェルはマーナに預けており、ガドルを含めた三名は部屋の外で待っている。


 部屋の中には円盤状の板が置いてあった。体重計に見えるが、身長を測る道具が見当たらない。


 そう思い、周囲を見渡しているとゼレーナに指示される。

「じゃあ、その板の上に乗って、背筋は伸ばしてね。あ、それとかかとを揃えておいてほしい」

 指示に従い、円盤の上へそろりと乗り姿勢を正すと、それじゃあ測るよ、とゼレーナが告げた。


 その瞬間、円盤が白く輝き、リリィの足元に魔法陣のようなものが現れた。

 光る幾何学模様は足の裏から頭のてっぺんまでをゆっくりと通過し、頭上10センチに到達すると役目は終わったとばかりに消え去る。


「ふむふむ、よし、それじゃあ今度は身体検査だ。また移動するよ」

 おや、もう終わったのか、と拍子抜けしてしまう。身長と体重を同時に測ったのだろう。なんともハイテクなものだ。


 今度は少し遠くまで歩き、先ほどよりも大きな部屋に入る。二人と一匹はまた部屋の外で待機だ。

 その中にはベッドが置いてあった。目立つものはベッドの両端に付いた大きな円盤。他に何かがあるかと思いきや特に何も見当たらない。

「これが身体検査の魔器だよ。肉体と精神体の精密検査ができるんだ」


「一度、ローブは脱いで、そこのカゴに入れておいてくれ。下着だけになったらベッドに横たわって」

 指示通りにローブを脱ぐ。リリィはスポーツ用のような下着を露わにして円盤付きのベッドの上へ。


「目は開けてても閉じててもいいからね」

 言い終わるや否や、両端の円盤がまたもや白く光り、両方に別々の魔法陣が現れる。それらはリリィの体を交差する様に通過してゆく。よく見れば二つの魔法陣は異なった模様を描いており、肉体と精神体とで検査する魔法陣が違うのだなと考える。


「よし、それじゃあおしまいだよ。お疲れ様。服を着て、部屋の入り口で待っていてね」

 ゼレーナの優しい声色にうなずき、リリィはローブを着て部屋を出る。

 マーナとガドルに無事に終わったことを伝え、リリィはフェルを抱えて二人と一緒にゼレーナを待つ。


「そういえば、マーナから聞きましたよ。リリアナ様は元は男だったと。もしや女性扱いするのはやめた方がいいでしょうか」

 少し不安そうにガドルが言葉を発した。知らなかったとはいえ気分を害してはいないか気になったのであろうか。


 しかしリリィはこれに首を振る。

「いえ、私もこんな姿で男だと言い張るつもりもないので、女の人として扱ってくれると助かります」

「そうですか。そう言ってもらえると気が楽になりますね」

 どうやら安心したようだ。表情から不安が抜け落ちたように見える。


 ほどなくして、ゼレーナが扉を開けて三人の前に立つ。

「結果がわかったよ。とりあえず、リリアナさんの肉体も精神体も健康だね。ちょっと精神体の魔力に揺れが見られるけど、生まれたばかりの赤ん坊も同じような状態だから大きな問題はないね」


 何事もなくて良かったとリリィが胸を撫で下ろしていると、ゼレーナは唐突に真剣な表情へと変わる。

「それと、精神体は心を維持している関係上、精神をある程度反映させるんだ。検査した結果、リリアナさんには危険思想を持つ人の精神体の特徴が見られなかったから、マーナの言葉は正しかったってわけだね」


 なるほど、ゼレーナが言っていた検査すればある程度わかるという言葉はこういうことだったのか、サイコパス診断みたいな役割も兼ねているとはすごいな。


 世界間ギャップに驚くリリィにゼレーナはいきなり頭を下げてきた。

「それで、申し訳ない。リリアナさんが悪さをするかもと言ったことはここで謝ろう。本当にすまなかった」


 誠心誠意、謝罪をする。ゼレーナのそれは彼女の正直さを示していた。

「いえそんな、顔を上げてください。それに私だって同じ立場だったら必ず疑うと思います。気にしないでください」

 ゼレーナがいきなり頭を下げるものだから、リリィも慌てた様子で首を振る。


「そうかい?それならよかった。気の良い子だね。ありがとうよ」

 快活な笑みを浮かべるゼレーナに、リリィも安堵の表情を浮かべるのだった。



 その後、検査結果はのちに異世界研究に使うかもしれないのでゼレーナがしっかりと管理するということになり、病院を出てゼレーナと別れる。

「じゃあね、聞いてると思うけど1ヶ月は病院も治癒院も無料だから遠慮せずにおいでね」


 世話好きなのだろう。良い人だと思いながらリリィは感謝して、病院を離れてゆく。

「ありがとうございます。それじゃあ、また」

 三人は役場へと戻った。


 それからはレポートのため、役場内の小さな部屋に入りマーナとガドルと三人で悪戦苦闘を繰り広げた。こう書こう、ああしようとレポートは事細かにリリィの事情を綴る。ちなみにフェルは二人の前では喋ることもできないので、黙ったまま部屋の中を歩きまわり退屈そうにしていた。


 元の世界の詳細について、自分の簡単な生い立ちについて、この世界へと来たことは自分の与り知らぬ事象であるという嘘も交えて作成した珠玉の一作である。

 詳細を言うことは出来ないので仕方がないのだが、嘘をついていることに引け目を感じてしまうのはなぜだろうか。おそらくは今日一日世話になり続けたからだろう。


「これでレポートは完成ですね。あとは同意書を明日作って、町長は書類をまとめてチェックをしてください」

 マーナが言うとガドルも嘆息混じりに応える。

「そうですね。これらは私がサインをしなければ」


「それでは、これから晩ご飯でも食べに行きましょう。リリアナ様の分の料金は経費で落ちるので領収書を書いてもらえば大丈夫です」

 気がつけば外はもう暗く、どれほどレポートに集中していたのだろうかと思うほどに時間が経っていたようだ。腹の虫が今にも声を上げてしまいそうなほど空腹を訴えてくる。


「私からも口添えしておくのでリリアナ様はお金のことは気にしないでください」

 ガドルも柔和な笑顔で二人の背中を押す。


 どうやらガドルはもう少しやることがあるそうなのでリリィはマーナと二人でご飯を食べることにした。

「それでは町長、お疲れ様でした」

「ガドルさん、今日はありがとうございました」


「はい、お疲れ様です。リリアナ様も、また明日」

 ガドルに挨拶をしてから、二人は部屋を出る。ここまで来るともはや慣れた様子でマーナの後ろを迷わず付いてゆく。


 リリィは今日一日のことを思い返す。12時間にも満たないのにこんなにも密度の高い一日は生まれて初めてだった。初めて見るもの、触れるもの。


 あらゆるものがリリィに刺激を与えるが、しかし、現代に近い文明レベルというだけあって、諸々込みでめんどくさいことの多かった日であった。

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