第5話:魔力確認・ダウンシャー公爵フランシス視点

 俺にはどうしても早急のやっておかなければいけない事があった。

 それは自分の今現在の魔力量がどれだけあるのかの確認だ。

 こういう転生や憑依物の定番としては、莫大な魔力量や驚くほど強力なスキルが与えられている事が多い。

 自分の今の力を正確に知らなければ、ジェラルド侯爵との戦い方が決められない。


「ここが我が家の練兵場だ。

 まずはジェラルド侯爵が仕掛けてくるであろう魔術や呪術を返すための、補助の魔法陣を描く事にする。

 その後でここでの訓練が外に悪影響を及ぼさないように結界魔法陣を描く」


「「「はい」」」


 本当は以前から屋敷を覆うように作られている防御魔法陣を改良したいのだが、そんな事をすると内通者に知られてしまうから意味がない。

 まあ、防御魔法陣が無効化されていないか確かめる必要はあるがな。

 俺はチャッチャと屋敷の防御結界を補助する防御魔法陣を描いた。

 休むことなく結界魔法陣も描いた。

 ヒルフォード王国一の名門貴族であるダウンシャー公爵家の王都屋敷は驚くほど広大で、練兵場も騎士団が訓練できるほど広い。


「まずは錬金術でどれだけ多くの素材が錬成できるか確かめる」


「「「はい」」」


 攻撃魔術から試さなかった事に三人とも驚いているな。

 確かに普通なら長巻を使うウィリアム君と連携する攻撃魔術を試すところだ。

 だが元のダウンシャー公爵フランシスと融合した俺に莫大な魔力量があったとしたら、最弱の火魔術を使ったつもりで三人を焼き殺してしまうかもしれない。

 そんな事になったら一生後悔してしまうからな。


「三人とも私の後ろにいなさい。

 死にかけた事で魔力量が増えてしまい、魔力を上手く操れないかもしれない」


「「「はい」」」


 三人とも真剣な表情になった。

 その表情から推察すると死にかけて能力に覚醒する事はこの世界でもあるようだ。

 俺は設定していないが、この世界を成り立たせるために備わったのだろう。

 まずはエリクサーを何もない所から創り上げることができるかだ。

 大気と水分と地中に含まれている成分を魔力で強引に集めて融合させて、エリクサーを創り上げられたら俺の魔力量は神以上だろう。


(エリクサー創作)


 エリクサーを創り出す呪文など分からない。

 心で想い想像するだけで創り出せたら最高だ。

 ご都合主義のゲームやラノベではよくある無詠唱魔術の基本かもしれない。

 まあ、そんなことができるのは神にも匹敵する魔力があるという前提が多い。

 俺もそうだと信じ込んでやるしかない。


 できてしまった。

 あまりにも簡単にできてしまった。

 一緒に想像していた、いかにもな入れ物まで創生されているから笑ってしまう。

 本来なら莫大な魔力が必要なのに、ろくに魔力を消費した感覚もない。

 後ろにいた三人がアングリと口を開けて驚愕している。

 どう言い訳したものだろうか。

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