「元気してる」

「してるよ」

「そろそろ会いたいな」

「私も会いたい」

「仕事が終わらんし金がない」

「別に私もお金払うよ」

「いや、年下に払わせたない、遠いしなかなか会えんな」

「そうだね、いつだったら時間があるの、そっち行こうか」


彼と私の立場はいつの間にか逆転していた。最初は私が素っ気なかったのである。連絡はせず、くれば返す。今思うと娼婦のようで、しかしこ綺麗な見た目がそれを却って魅力的なものにしていたのかもしれない。彼からの連絡は続いていたが、私の精神は彼に囚われていたため、いつの日にか私が連絡をするようになった。


私が熱をあげるほど、彼の熱が冷めていくのを感じた。


そして、大事に思うからこそ、彼を思い返して、彼が私の肉体以外の何かを求めているのではないことに気づき始めた。しかし、一度思い出したら彼が自分からいなくなることがなかった。


「私は好きよ」

「俺は彼女いらないんだ、彼女ができると、構ってやれないのに依存してしまう。勉学に集中したいんだ。嫌いとかではなく」


彼の言葉はその当時の私には微塵もわからなかった。嫌悪も感じられず、笑顔な彼がなぜ私と交際しなかったのかは私を混乱させた。


しかし、今思えば、恋に盲目になる己が一番理解のできる言葉だったのである。自らの夢のために、恋まで欲張ると、己の信念を突き通せなくなる性分は私の生来持つ実直な性質だったのである。


私と彼との物語はこれにて結した。

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