彼は多忙だった。


連絡は時々くるものの、勉学と交際でなかなか足繁く通うことは叶わず、ホテルで逢瀬をしたり、私は飽くことのない欲求を他人に求めていた。


しかし、欲求は満たされていると言うのに、なぜだか空虚なのだ。

私の体を這う他人の手はただの怪物にしか思えず、私の体を凌辱するようだった。


なぜだろう。


私の中に入る彼は、なぜだか一人違ったのだ。彼が腹の内で私をどう思っていたのかは私には知ることができない。しかし、彼の一部は私にぴたりと嵌まって次第に精神を蝕んでいった。


いつしか私は彼のことばかりを考えるようになっていた。

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