13.バグを見つけられるみたいです。ところで……バグって何?

 カオス・スパイダーとの激闘を経て、絶対権限プライオリティは5になったはずだ。

 これまでの経験からすれば、またスキルが成長しているかもしれない。


 僕は早速、スキルを起動して確認することにした。


『チート・デバッガー!』



――――――――――

絶対権限プライオリティ:5

現在の権限で使用可能な【コード】一覧

 → アイテムの個数変更

   (▲エクスポーション▼)

 → 魔法取得

   (▲ブラックホール▼)※習得中

 → ユニットデータ閲覧

 → バグ・サーチ(NEW)

――――――――――


「アレス様。それがカオス・スパイダーを打ち破ったスキルなのですか?」


 興味津々といった様子で、兵士たちが僕を見ていた。


「うん。外れスキルだとは言われてるけど、アイテムが取り出せたり、魔法を覚えたりと便利なスキルだと思う――今回覚えたのは……」


 何だろう、これ?

 僕は(NEW)と書かれた文字を読み上げた。



「『バグ・サーチ』……なんだこれ?」


 首を傾げるしかなかった。

 今までに覚えた「アイテムの個数変更」「魔法習得」「ユニットデータ閲覧」と違って、今回の効果は、名前から中身を想像できなかったのだ。



「アレス、またスキルに新しい効果が追加されたの?」

「うん。『バグ・サーチ』だって……? なんだろうね、バグって?」


 僕は記憶をたどり――



「あ!」


 思い出したのは、チート・デバッガーが成長するときに聞こえた文言だ。


――――――――――

バグ・モンスターを討伐しました。

―――――――――


 僕のスキルは、おそらくは何か条件を満たすと成長していくスキルだ。

 そのきっかけは【バグ・モンスター討伐】であることが、多かったように思う。



 そのことをティアに話すと、


「なるほど――つまりはスキルを成長させるきっかけを探すための効果ってことかしら……」


「スキルを成長させるためのスキル? そんなの聞いたことがないよ?」

「アレスのスキルは、何もかもが規格外だもの。有り得ないことじゃないわ」


 前例のないスキルを、これまでの物差しで測っても意味がないとティア。

 ……確かに考えていても、埒が明かないか。



「実際に試してみるしかないよね。『バグ・サーチ!』」


 僕はバグ・サーチを選び、指でポチっと押した。



「どう?」

「う~ん……?」



――――――――――

【コード】バグ・サーチ

半径500メートル以内に【バグ】を発見しました

――――――――――


 そうして僕の視界に、突如として矢印が現れた。

 回りの反応を見るに、どうも矢印は僕にしか見えない様子だった。


 どうやら森の更に奥を指しているようだ。

 ぴょこ、ぴょこと矢印が跳ねており、そちらに進めと誘導しているようだった。



「矢印が見えたよ? 半径500メートル以内にバグがあるって――」

「え、ウソ? まだカオス・スパイダーみたいのが居るっていうの!?」


 ティアのつぶやきに、緊張が走る。

 ここに居る兵士も含めて、その脅威は身に染みて分かっていた。


「そ、それは分からない。バグってのが、具体的に何のことか分からないから」


 とはいえ普通は現れないモンスターであったり。

 ろくなものではないだろう。



「もし厄介なモンスターが居るのなら、放ってはおけないよね。少し行ってくるから、ティアはここで――」

「わ、私も付いていくわよ!」


 ティアが僕の言葉に割り込むように、そう言った。


「また危険なモンスタが居るかもしれないんだよ?」

「望むところよ! だいたい危険なのは、アレスだって同じでしょう!?」


「それはそうだけど……僕のこれは、ただの好奇心みたいなものだし。巻き込むのも申し訳なくて――」

「私は、好きで付いていってるだけよ。アレスが気にする必要はないわ!(それに、もし……アレスに何かあったらと思うと――)」


「え?」

「な、何でもない! と・に・か・く、私はアレスに付いて行くからね!」


 ティアは顔を真っ赤にして、そっぽを向いてしまった。


 向かう先に、何が居るかは分からない。

 何の得にもならないだろうに――それでもティアは、僕に付いてくると言っている。


「ありがとう、ティア。すごく心強いよ」

「それで良いのよ。今度、変な遠慮をしたら許さないんだからね!」


 ティアはピンと指を立て、そんなことを言うのだった。



 さらには話を聞いていた兵士たちも、


「わ、我々もお供いたします! 必ずお役に立ってみせます!」

「さっきは思わず逃げ出してしまいました。そんな情けない経験はもうしたくありません!」

「いざという時は、我々が盾になります!」


「は、早まらないでね……?」


 彼らの熱量に当てられ戸惑う僕。



 そうして僕たちは、チート・デバッガーの『バグ・サーチ』に導かれるままに、森の奥に歩みを進めるのだった。

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