9.レアドロップアイテムだって簡単に手に入ります
「スライムを倒さないように攻撃するの? どうしてそんなことを?」
「まあまあ。いいからいいから」
僕はそう言いながら、スキルを使ってやくそうを取り出した。
「こんな感じ?」
ポコッ
ティアが素手で、軽くスライムを撫でた。
これでもダメージ与えられるんだなあ――と思いながら、僕はすかさずやくそうを使う。
どれだけ手加減してもHPが13しかない相手に99回も攻撃するには、回復を交えないといけないのだ。
「95 96 97 98――えいッ!」
やがてティアが、スライムを消し飛ばした。
するとスライムがぷるぷるっと震えて、
「アレス、説明してもらうわよ! ――って、何よこのアイテム!?」
光の粒子になって消えたスライムは、見慣れないアイテムを残していったのだ。
「どうやらユニットデータ閲覧で見た通りだね。スライムはダメージを99回与えたら『ぷにぷにジュース』を落とすみたい」
「スキルの効果で分かったの?」
「うん。落とすアイテムとレアドロップ品とか、バッチリ見れたよ?」
「スライムがこんなもの落とすなんて、見たことも聞いたこともないわよ? アレス、これ……とんでもない新発見じゃない!?」
スライムは、やくそうしか落とさないというのが常識だった。
僕たちも領内のモンスターと戦うことは多かったが、こんなドロップアイテムは見たことがない。
スライムに99回も無心に攻撃する者は居ないだろうし、当たり前だった。
「あ、向こうにキラー・ホーネット!」
――――――――――
【コード】ユニットデータ閲覧
ドロップ:ーーー
レア :毒蜂の羽
※ 氷属性の技で撃破
▲特殊情報▼
――――――――――
これまた領内では珍しくもない蜂状のモンスターだ。
「アレス、こいつもレアドロップ品を持ってるの?」
「ううん。こいつは毒蜂の羽しか持ってない。氷属性の技で倒すと落とすんだって」
「……こいつは、知ってる通りなのね。ならサクッと――『氷華!』」
ティアが剣を抜きながら、一気に駆け抜けた。
少し遅れてキラー・ホーネットに氷の花が咲き、一瞬で絶命させる。
ドロップしたアイテムは予想通り『毒蜂の羽』。
「う~ん? どうやらドロップアイテムを持っていないみたいだね。毒蜂の羽がレアドロップ品の扱いなんだ……」
僕は首を傾げる。
よく分からないけど、そういうものだと受け入れるしかなさそうだ。
◆◇◆◇◆
その後、僕たちはいくつかのモンスターを倒しながら、街道を進んでいった。
『ユニットデータ閲覧』で見たことがない敵は、すべて調べてから突き進む。
「ティア、そいつは――氷属性と炎属性の攻撃を同時に当てて倒す……だって。ティア、『せーのっ!』で攻撃しよう」
「ふふん。任せなさい!」
『ファイア・ボール!』
『アイシクル・シュート!』
ときにはタイミングを合わせて攻撃することで、レアドロップの条件を満たす。
「ティアは凄いよね? 剣術だけじゃなくて、魔法も使えるんだから」
「それを軽々とこなすアレスが言うと、嫌味に聞こえるけどね……!」
「僕は母上から教え込まれたから。ティアは独学でしょ?」
「私は一緒にクエストを受けた冒険者に教わったわ」
「そうなんだ。剣だけでも一流なのに、すごいね……!」
「え? だって魔法が使えたら戦術幅が広がるってアレスが言ってたから――って、違う違う! たまたまよ、たまたま!」
ティアが顔を赤くして、ぶんぶんと顔を横に振った。
どうしたのだろう?
ティアが倒したモンスターに近づき、落としたドロップアイテムを拾う。
「あ、また見たこと無いアイテムね」
「やった! レアドロップアイテムゲットだね、絶好調!」
冒険者になったら、クエストの報酬やドロップアイテムで生計を立てるのだ。
最悪、賢者の石を量産して店に売ればどうにかなるが、できれば冒険者らしい生き方をしたいと僕は思っていた。
「絶好調すぎるわよ。……アレスのそれ、本当にずる過ぎない?」
「え? そうは言っても……外れスキルだよ。これぐらいは鑑定士が居れば、すぐに分かるんじゃない?」
たしかに便利なスキルだと思う。
今後、冒険者としてやっていくには、非常に役に立ちそうなスキルだ。
それでも少しだけ便利なだけで、ティアがここまで驚く理由が分からなかった。
「……あのねえ。鑑定士って、そんなに万能じゃないのよ?」
「そうなの?」
「ええ。知り合いの冒険者に聞いたことがあるけど……」
いわく、敵のHPが見えるってだけ一流。
初見の敵の弱点を見抜けるならば、超一流で勧誘合戦が起こるほど。
冒険者に混じってクエストをこなすことも多かったティアが言うのなら、間違いないのだろう。
「……でも、どっちも普通に見れたよ?」
「だから訳が分からないって言ってるのよ。ましてはドロップアイテムの解析なんて――聞いたこともないわよ?」
どうやらこのスキルは、一流の鑑定士をも
「そうなんだ。なら外れスキル持ちの僕でも、鑑定士としてなら、どこのパーティに受け入れて貰えるのかな?」
「いやいや、アレス……。たぶんそれどころか――いいえ、その時が来れば分かるわね」
ティアは引きつった笑みを浮かべるのだった。
そんな調子で僕たちは街道を突き進み、ついにカオス・スパイダーの縄張りらしき場所にたどり着いた。
数人の兵士がモンスターの監視に付いており、緊張した空気が流れている。
僕は見張りの1人に声をかけた。
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