第7話 人類最強はストーカーの究極体だった


「何よりアルトの全てを知る人物だ」

「全て?」

「そうだ。アルトの諸々の好みは勿論、目覚めてから起床までにかかる時間から始まりベッドに入ってから就寝までにかかる時間までのアルトの全ての行動とそれからに要する時間。そして常にアルトの側におり、あの子の心情を完璧に把握でき、時には最適な手助けが自然と行う事が出来る。そんな女性であれば」



(アカン、クレアが何言ってんのか全然わからんし、分かりとうないんやけど)

(僕も同じく。後半は一見するとマトモに聞こえるけど前半の方があまりにも酷すぎて、前半の内容入れつつ後半聞くとアルトを理解しているからというより掌握していてコントロール出来る事が条件に聞こえてくるよ)

(起床やら就寝やらを完璧に把握ってのが入ってる辺り文字通り常に一緒にいるって事やな)

(そしてそんな状態で常にアルトの心を理解して最善のサポートという無理難題)

(アルトのことを熟知していると言うか…それもうただのストーカーだよね?)

(そうやな擁護のしようのない変態やな)

(そうでしょうか?結婚相手が自分のことを深く理解してくれていると言うのは嬉しいものではないですか)

(アホ抜かすなセルレア!お前まで駄メルフ菌に感染するやない!深さの度合いが違いすぎるわ)

(失礼な!私は…いえ、私達は正常です…多分)

(よう考えてみい、結婚もしとらん相手が自分の起床、就寝の時間知っとるとかそれベットの下に潜り込んどるか部屋を盗撮しとるっちゅう事やぞ)

(!!)


ほんの一瞬であったが想像した瞬間にセルレアは全身の毛が逆立つほどの嫌悪感に襲われて身震いした。


(それ抜きしても自分の行動の全てを把握してるちゅうだけで………セルレアはどう思う?)

(ごめんなさい不快感通り越しておぞましさしかありませんでした。存在そのものが恐怖でしかないですね。私が間違ってました。残念ながら私だけが正常です)


「さすがにそこまで把握するのは現実的に無理だと思うんだけど」

「何を言っている母の私ですらあの子のおはようからおやすみまでの全てを知っているぞ」


3人はあまりの衝撃に意識を失いかけた。自分の耳が腐っているかと思う程。あるいは腐っていたほうがマシと思ったほどのセリフが目の前にいる同じ屋根や下で暮らしており人類最強と謳われたエルフでもある彼女から発せられためである。


(僕は生まれてこの方初めてストーカーの究極体を目にしているよ)

(クレア様がアルトの育ての親でなければ通報するレベルですね)

(うちの認識が間違ってた。クレアが過保護やから異常者レベルの相手を求めたんやのうてクレアが変態ストーカーの異常者やから同類を条件にしとるんや)

(難易度が跳ね上がりましたね。全く別の方向に)

(そうやな、絶対に存在しないレベル。というかそんなもんが存在してたまるかってレベルやな)

(そうだね。干し草の山ではなく世界のあらゆる森の中から1つだけ落ちているビーズを見つけ出すレベルに跳ね上がったね)

(ビー玉やのうてビーズやとベルは勿論リヴェリアの寿命全てを使って捜索してもきっと見つけきれんわ)


「まあクレアの理想は一旦置いといて仮に…そう、このセルレアとかやったらアルトの結婚相手にどうなんや?」


(ちょっとロイ!)

(すまんセルレア。だけどあれ以上クレアの理想について語られたらうちらのメンタルが持たんのや)


「セルレアやったらクレアもよう知っとるし、特に不足部分ないやろ?それにアルトとの付き合いも長いしな」

「何?セルレア貴様は私に隠れてこそこそアルトた交際していたのか!」

「違いますからね!決してそのような意味ではありませんよ!ね、ロイ」


貴方のせいで巻き込まれたのだからとっと訂正しろとセルレアがロイに目で訴える。


「そうやで、単純に一緒に暮らした年月が長いってだけや」

「なんだそんなことか。紛らわしい言い方をするんじゃない」


(言うほど紛らわしい要素なかったよね)

(アルトの事で付き合うって単語に過剰に反応しとるな)

(ロイが変なこと言い出すからです。後で絶対埋め合わせをしてもらいますからね)


「まぁ確かにセルレアであれば容姿も性格も申し分ないしアルトのことを理解している点でも及第点を与えられる」

「そ、そうか。セルレア良かった…な?」

「………」


(全くよくありません。どこにいい要素があるんですか)

(状況と相手が相手なだけに褒められてるはずなのにここまで全然嬉しくなさそう場面も珍しくだろうな)


こうしてロイの発言によってセルレアはクレアの標的?の的にされてしまい、巻き込んだ元凶であるロイを呪い殺す勢いでこれでもかと睨みつけるセルレアであった。






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