第5話 年齢関連の話は死を招く
「それで、クレアさんはどんな女性ならアルトとの結婚…というか今のクレアさんの容認度からすると交際かな?を認めるんですか」
「?その2つはどっちも似たようなものだろう」
(まあ交際まで至った相手と破局になるなんて事はエルフの間では基本ありませんからね)
((世間一般では違うけど、貞淑なエルフ視点から言えばほぼ同じようなものだからわからなくもない。この程度の価値観の違いならば全然大丈夫。できればこの調子でいってほしい))
とりあえずクレアがアルトの婚約者に求めるハードルを知るために話を変えたロベルト。それに対して第一声が思っていたよりまともなものだったため3人は安堵した。
「まぁ…そうだな。いろいろあるが結論から言うと私の様な女性であれば認めてやらないこともない」
まるで自慢気にドヤ顔しながら語るクレアだったが他にはその意図が伝わっていなかった。
「すまん、大雑把過ぎて分からんのやけど」
「なんだそんな事も分からんのか?私の特徴を言ってみろ」
「エルフ」→セルレア
「超親バカ」→ロベルト
「年齢3け…『ゴーン』痛ったぁー!頭が!頭がー!」→ロイ
クレアの…女性にとっての逆鱗に触れてしまったためロイの頭に世にも恐ろしいゲンコツが振り下ろされて人の頭からは決してなってはいけない音がロイの頭に響き渡り、あまりの激痛に床を転げまわった。
流石に見かねたロベルトが懐からエリクサーを取り出してロイの頭にぶっかけて治療した。
「あっぶな。もうちょっとで俺死ぬとこやたんやけど」
「今のは兄さんが悪いよ」
「女性に対してデリカシーがなさすぎます」
抗議するものの2人とも明らかにロイに非があるとわかっているため味方になるどころか逆にロイを諭した。
それが気に入らないロイは殴った張本人を睨むが目を合わした瞬間に怯えた表情に変貌した。
「ロイ…もし次同じことをいってみろ。今度は貴様の頭蓋骨が原形を留めていないと思え」
アルトと接する時、或いはアルトの話をしている時を除くとあまり表情を崩さないため冷たく見られがちなクレアだが、この日始めて彼女の普段と怒っている時にまとった雰囲気がいつもとまるで違うことをその場にいた全員が痛感した。
「それからロベルト、私は別に親バカと言われる類ではないではない。世間一般より少しだけ過保護なだけだ。それとロキは後で燃やす」
(((クレア(様)レベルで少しなら世間の母親達は冷徹や虐待と言われるレベルなんだけど(ですけど)))
普段からベルに対して世間一般の母親の域を超えたあまりに過度なクレアの接し方を目にしている3人からすれば、とても少しだけの範囲で留まっているものとはとても思えなかった。
「クレア自分過保護の意味わかっとんのか?」
「なんだ急に。少なくとも貴様よりは理解していると自負しているが」
(((いや、それはない)))
「ほなら言うてみ」
「子供を養育する際の過度な甘やかし。必要以上に面倒を見ようとする事を指していると認識しているが?」
「………」
「どうしたのだ黙りこくって?ああそうか、やはりお前の誤認しているものとは違うものだったか。恥を晒したくないのなら今度からちゃんと勉強して知識を身につけてから人に確認するのだな」
クレアが説教気味に呆れ顔でロイに語る中、ロイは隣のロベルトとセルレアと目線を交わすことで会話していた。
(なぁなんで言葉の意味を理解するくせに自分の行動がそれに該当してると自覚しとらんのや?)
(アルトにかすり傷でもつこうものなら真っ先に血眼になって負傷させた相手を探そうとするくらいなのにね)
(人を評するのと自分を評する才能が全く別なように知識として意味を理解できていても実際に正しく認識する能力はまた別なのでしょう)
(普段はどっちもありそうだけど…)
(アルトが絡むと目が腐るちゅうことやな)
(それを言うなら目が曇…いや、どちらにしてもはずれてない気がするから否定しかねるね)
(まぁとりあえずその件は置いといて)
「それで話それたけどクレアの言う私の様なとは具体的にはどのような要素を指しているんや」
「一言で言えば完璧な女性だ」
クレアが発言し終えた後、つっこみたい気持ちを堪えながら、なんとも言えない気まずい静寂なひと時が流れた。
(アルトを引き取る前ならまだしも今やと完璧どころか欠陥だらけやないかい!)
(無礼ですよロイ。クレア様は完璧なお方です。ただ他の方にない特殊な+αがあるだけです)
(かっこよく言い換えとるけど実際はクレアのはダメダメの部分の塊やからな)
(あのクレアさんの奇行も+αって言えば他者より優れてるみたいに聞こえるから不思議だね。言葉の有用性をヒシヒシと感じるよ)
(そうやな。見方を変えれば人目をはばからず
(………)
敬愛するクレアの罵倒を見過ごせず何とか擁護しようとするもロイとロベルトに現実を突きつけられて返す言葉をなくす沈黙するセルレアであった。
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