第3話 逃げ出さなかったことを後悔した2人
「とりあえず兄さんの話は置いとくとして、兄さんはクレアさんといったい何の話をしていたんですか」
まだ本題に入ってすらいないにもかかわらずいきなり気まずくなってしまった空気を変えるために話を逸らすロベルト。
「それがな、クレアとアルトの話を…」
「「失礼しました」」
「ちょいちょいちょいちょい!俺まだ言い終わっとらんのになに 2人とも颯爽と帰ろうとしとるんや」
まさに秒速で来た道を戻らんとする2人の手を掴んで何とか返さないように引き止めるロイ。
「そりゃクレアさんがアルト関連の話をしてたとなると…ねえ」
「帰りたくもなりますもの」
ロベルトとセルレアはさも当然だといわんばかりの雰囲気で互いに顔を見合わせた。
「…一応聞いとくけどなんでや?」
「「惚気話と言うか親バカ話はもうお腹一杯」」
クレアは典型的な親バカ…などと言っては世間一般の親バカとされる類の保護者達に失礼といえるレベルでアルトを溺愛しているため2人はアルト関連の話を散々聞かされているある意味被害者であり、その手のものに付き合わされるのはほとほとうんざりしているのである。
彼らの名誉の為にも言っておくが彼らは基本優しいし大抵の相手であればどんなないよの話であれ最後まで聞き届けるが、クレアのアルト自慢的な話となると話は別となるとなる。
何時間も続き話の終わりが中々見えてこないうえに上にそこら辺のバカップルといわれる類の輩でも泣いて逃げ出したくなるレベルの甘すぎる話を聞かされ続けるため、2人の穏やかな性格と勇者としての忍耐をもってしても話を終えた後は数日徹夜で働き続けたサラリーマンの如く瀕死のような状態に陥るため2人は本能レベルでこの話を避けたがっていた。
「今回はそういうんじゃないわ。そもそもクレアが悲鳴をあげている時点でその手の話やないことぐらい察してくれ」
「ああ、そういえばそうでしたね。すっかり忘れてました」
「そんなすぐ忘れることができる話のせいで俺は犯罪者扱いされてたんだけどね」
ついさっきまで連行されそうになったために流石に流しきれないロイが皮肉を込めて若干ひきつった笑顔で2人を見ながら愚痴る。
「それは一旦忘れて、クレアさんとどんな話をしていたんですか」
「はあまええわ。何処から話せばええかな?まあとりあえずアルトの告白クレアをが振ったみたいや」
「「えっ、何故?」」
「なんでそんなに驚かれているんだ?」
ようやく現実世界に戻ってきたクレアが2人のあまりの驚くように疑問を抱き尋ねる。それに対してロベルトとは互いに隣を見ながらおそらく相手も同じ事を考えているであろう事を確認する。
「だってそれは…ね?」
「ええ、意外と言いますか」
普段から仲睦まじいなどとは程遠いほどにゲロ吐きそうなほどマグカップ一杯に砂糖しいか入っていない飲み物を飲まされ続けるような光景を見せ続けられている2人としては何故あれで血がつながっているわけでもあるまいに告白されて承諾しないのかの方が理解できなかった。
ロベルトとセルレアとしては2人がくっつくのなら早めにくっついてほしかった。そして仲間としては最低かもしれないが2人だけの新居でも見つけてさっさと引っ越して、今まで自分たちが多大な被害を受けてきた迷惑この上ないアルトへの自慢話などは近所の奥様方にでも手土産として差し上げてほしいと思っていた。
「そりゃアルトが告白してくるくらい私LOVEなのは嬉しい事だがな。へへへへへ」
クレアが勇者として毅然とした態度を取り続けていた頃の面影などまるで見られないデレデレ顔になった瞬間、またしてもクレアによるアルトの自慢が始まったと思った2人は本能的に退席せねばととソファーから腰を上げるがロキによって腰を降ろされた。
「待てい、話は最後まで聞いていけ」
「すいません。今のクレア様の発言で体が反射的に」
「僕も。それで発狂した原因はなんだったんですか」
正直もうロキを振り切って今すぐリターンしたい気持ちだったがとりあえず話だけでも聞こうかと事の経緯を尋ねると、待ってました言わんばかりにリヴェリアが話し出した。
「そうだ、聞いてくれ2人とも!ロイの奴がアルト誰かと結婚したらこのホームから、私から離れて結婚相手と住むと言っているんだぞ!」
ロベルトとセルレアにはクレアが何故そこまで問題視して慌てふためいているのか最初分からなかった。
「「え?それ当たり前の事じゃない(です)か」」
「何を言っているんだ2人まで!ロイに汚染されたのか」
「さらっと人の事を汚物扱いすな!」
「貴様はほぼそれと同類、いわば親戚みたいなものだろう。何を言っているんだ?馬鹿なのか。ああ、馬鹿だったなすまん」
「今の自分にだけは言われとうないわ!」
この時点でロベルトとセルレアの脳内には『早くこの場から立ち去った方がいい』という信号がビリビリ送られていたが、責任感の強さとおそらく今ここで離れたらまた厄介な問題になって帰ってきそうな予感から、2人は入って来たドアへと向かいたい衝動を抑えて留まっていた。
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