第23話 たぶんないと思う

 

 更新遅れて本当に申し訳ないです。

 ―――――



「グオォオン!?」


 兄の攻撃が効いたのか、オーレスワイバーンが短く唸った。しかし、その後すぐに兄に向って噛みつこうとしているのか体をひねりながら首を伸ばす。


「ギャオッ!」

「あっぶねぇっ!?」


 寸でのところでその攻撃を躱した兄に再度追撃が行かないよう、オーレスワイバーンの頭に向かって攻撃を放つ。


 私の攻撃が当たったことでできた一瞬の間に兄はぎりぎり攻撃が当たらない場所まで退避した。


 オーレスワイバーンのHPを確認すれば、兄の攻撃は私がした攻撃のダメージを抜いても100近いダメージをたたき出しているので、有効な攻撃ではあったようだ。しかし、それよりもその攻撃そのものが気になった。


 今兄が使った攻撃を取得することが出来ればもう少し攻撃の幅が広がるよね。重撃って言っていたし、今回の相手みたいに物理的に固くてそこそこ魔法に対しても耐性がある相手にはかなりいいスキルだと思う。

 すぐに詳しく聞きたいところだけど、さすがに今聞くわけにはいかないし、この戦いが終わったら聞くことにしよう。


『サンクス』

『あ、うん』

『ん? どうした』

『大丈夫。何でもない』

『そうぉっと!?』


 スキルのことを気にし過ぎて生返事をしてしまったことで、兄に少し気にされてしまった。反省。


 しかし、ふむ。今の攻撃で割と兄の方にヘイトが向いているようだし、2回目の設置型爆弾もそろそろ使えそうかな。

 これまでちょこちょこ使えそうなタイミングを見計らっていたのだけど、ずっと突撃され続けていて、そうする隙が無かったのだよね。やっぱりこういった場面ではソロよりも複数で挑んだ方がやりやすい。多くなりすぎると逆に邪魔になるのだけども。


『爆弾、設置するから』

『地雷?』

『そう』

『了解。気づかれないように誘導しておくわ』

『よろしく』

 

 そう言うと兄は逃げつつもオーレスワイバーンを引き付けるように攻撃を始めた。


 兄がヘイトを引き受けてくれている間に設置型爆弾をオーレスワイバーンが通過するルート上に設置する。最初の時とは違い、設置した後なるべく見つからないように爆弾の上に砂を被せて軽く偽造していく。

 【罠】スキルには設置した罠を発見され難くする効果もある。今やった砂を被せたところで効果が上がるかはわからないけど、こういうちょっとしたことでも効果が上がることもあるので余裕があればしておいた方がいいのだよね。ほんの少しとはいえ熟練度も上がるだろうし。

 



 2回目の設置型爆弾でダメージを与えてからオーレスワイバーンの攻撃の激しさが増し攻撃できる回数が減ってしまった。


 オーレスワイバーンの残りのHPは4割強。こちらは大きなダメージを受けていないけれど、残り時間はおよそ1時間といったところ。今のペースでは討伐できるかそうかは微妙……どころかおそらく間に合わない。


 兄が来てくれたことでダメージ自体は与えられているけれど、どうしても私自身の火力が足りていない。


『もしかしてこれ、背中の上とか安地だったりしないか? 背中に乗れれば攻撃は届かなさそうだし、ワンチャン一方的に攻撃出来たり』


 タイムリミットが迫る中、あまりダメージを与えられていないからか兄がそのようなことを言い出した。


『……たぶんないと思う』


 多少攻撃できる時間はあるとは思うけれど、安全地帯ってことはないと思う。


 確かにオーレスワイバーンは体が大きいし、他のワイバーンに比べて体が固そうだから背中に乗った相手には攻撃できそうにないけど、そんなわかりやすい安全地帯があるとは思えない。直接攻撃できないまでも何かしら間接的に攻撃できる手段は持っていると思う。

 よくある攻撃だと地面に背中をこすりつけるように転がるとか。あるいは他の部位に比べてほとんど攻撃が通らないとか、単にすぐ振り落としてくるとか。

 ものによっては背中から毒ガスを出す相手も居そう。さすがにオーレスワイバーンがそれをしてくるとは思えないけど。


『確認してみないことにはどうかはわからないだろ』

『まあそうだけど』


 まあね、それはそうなのだけどね。露骨な場所だから逆にそういう設定になっている可能性がないとは言い切れないけども。


 うーん、でもやっぱりないよね?


 とはいえ、このまま続けても時間切れになりそうだから、何か別のことをして状況を変えていく必要はあるのは確か……なのだけども。

 

『このままだと時間微妙だし、ちょっとやってみるわ。駄目そうならすぐ離脱するけど、死んだらすまん』

『ん』


 そう言うと兄はオーレスワイバーンの背に乗るタイミングを計り始めた。

 設置型爆弾を当ててからヘイトは私の方に向いているし、たぶん乗ること自体はそこまで難しくはないと思う。

 ただ、その後どうなるかまではわからない。


「せいっと!」


 兄が突進に合わせてワイバーンの背にむかって跳躍する。普通に跳んだだけでは直接乗るに高さが足りないと判断したのか、壁を使って2段ジャンプの要領で高さを稼ぎ、そのままワイバーンの背に器用に着地した。


「ギャガア!?」


 突然自分の背中へ今戦っていた相手が乗ってきたことに驚いたオーレスワイバーンが、今まで聞いたことがないような声を上げる。


『行けるじゃん』

『そうだね』


 まあ、スキルさえあればたぶん乗るだけならそこまで難しくない。問題はこの後。乗ったまま攻撃をすることが出来るか。どれくらいそれを続けられるかなのだけど。


『足場は悪いがとりあえず攻撃してみるか』


 そう言いながら兄が背に乗りながら攻撃していく。今まで向かってくるオーレスワイバーンを回避して、その隙に攻撃するという繰り返しになっていたのだけど、背中の上に居ればそのようなことをする必要もないので連続で攻撃を繰り出している。

 ただ、足場が悪く少しバランスが取り難いのかオーレスワイバーンの背中にある棘のようになっている鉱石をつかんで攻撃しているため、今までのようにダメージを出せていないみたいだ。


「ガアアァァァアアア!!」


 やはりと言うか背中に乗って攻撃をしてくる兄を嫌がり、オーレスワイバーンが兄を振り払おうと体を大きく振るう。しかし、兄は背中にある鉱石につかまって落とされないように耐え、その合間に攻撃を加え続けている。


『案外このままいけるんじゃないか。これ!』


 思いの外上手くいっているせいか、ちょっと調子に乗っているようだけど、想像していたよりも兄が背中の上で奮闘している。

 ダメージも結構出せているし、もしかして本当に安全地帯……あ。


 そんなことを考えていたところでオーレスワイバーンの動きが変わり、今度は背中を地面に擦り付けるつもりなのか翼をたたみ姿勢を低くし始めた。


「あ、やべうおぁっ!?」


 調子に乗って攻撃していたため、反応が遅れた兄がオーレスワイバーンのデスローリング? に巻き込まれかけていた。


 寸でのところで回避はできたみたいだけど結構ダメージ食らっていそう。とはいえ、ちょっとの間なら背中の上に乗って攻撃できるのがわかったのは収穫と言えるかな。

 スキル的に私にはできないからあまり参考にはならないけど。


 ん、おや? オーレスワイバーン、思いきり巣を巻き込んで転がっていっているけど、あれ大丈夫なのかな。

 自分たちが守っていたはずの巣を自ら巻き込んで壊すとか、何となく不具合の気配がするのだけれど。

 

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