第50話 そう簡単には終わらないよね
置物にMPを注いでいく。
すぐに大きな反応はなかったものの、置物はMPを注ぎ始めてから薄らと光を纏うようになった。
これはどのくらいMPを注げばいいのだろうか。LVアップとかでようやくMPが1000を超えたところだけど、ワイバーンの卵を孵化させるためには5000必要だったから、それを考慮すれば私の素のMPだけだと最悪、というか高確率で足りなくなるだろうね。
まあ一応、その可能性も考慮してここに来る前にMPポーションをあるだけ持って来ているけれど、最後の最後で足りないという事態だけは避けたい。ここにいる段階で今更ではあるけれど。
ただでさえストーカープレイヤーがうろついているというのに、何度もこことセントリウスを行き来するのはリスクがあるし面倒だ。
ここに来るまでに数本作れるだけの素材は手に入っているけれど、本当に足りなくなった時は、最終手段としてフレチャ内でアイテムの取引が出来るから、それを使って兄からMPポーションを融通してもらうことも検討しておこう。
しばらく、というほど時間は経過していないけれど、MPを500程注いだところで、目印となってい置物が強く発光した。
多分これでMPを注ぐのは終わりということだろうか。
「眩しい……ん? ……ああ、そういう」
予想していたよりも少ないMPで終わったことに安堵していたのだけど、目の前の光景を見てまだ終わっていないことを理解した。
眩しさで目を閉じていたためすぐに気付けなかったが、MPを注いでいた目印の置物から一筋の光が草原の中に向かって伸びていた。
光の筋の先を確認する限り中心には向かっていないので、その先に向かったら終わりということはなさそうだ。おそらくその光の筋が指し示す先にも同じような置物があるのだろう。
スタンピードの影響を受けないようにしていた上で、誰にも見つからないように隠していた物だから、こうもあっさり、置物1つにMPを注いだくらいで幻影魔法が解除できるようには出来ていないよね。この感じだと次の1つで終わりってこともないだろうし、MPポーション足りるかな。
不安が過る。
他のプレイヤーに比べてMPの回復速度が【MP自動回復量増加(小)】のお陰で早くなっているとはいえ、次も同じ量が必要となれば3つ目からはMPポーションを使う必要があるだろう。
持ってきたポーションとインベントリの中に入っている素材、自動回復の量を考慮すれば、7つはどうにか出来そうだが、それ以上となればMPの回復を待つ必要が出てくる。
まあ、草原の形と光の筋の伸び方からして最後には魔法陣というか魔法円っぽい感じに繋がりそうだし、多くても全部で6個、6箇所かな。全部繋げたら六芒星の形になるみたいな感じで。もっと多かったり少なかったりするかもしれないけど。
まだ時間に余裕はあるとはいえ、もたもたしていたらログアウトの時間が来てしまう。ささっと進めていくとしよう。
置物から伸びた光の筋に従って進んでいくと、予想通り2つ目の置物が存在していた。
既に探していた場所だったのでそこ行った時におかしいと思ったのだけど、1つ目とは違い全体のほとんどが土の中に埋まっていた状態になっていたため、そのため先に見つからなかったようだ。
文字通り、草の根を分けるほど細かく探してはいなかったので、上数センチも出ていない物を見つけることはさすがに無理だ。
しかしこれ、少し前に見つけたゴーレムと同じで経年で埋まったって感じなのだろうけど、最初に見つけたものが埋まっていなくて、2つ目が埋まっているというのは不自然ではある。うーん、先にこっちが見つからないようにしておいたとかそんな感じなのだろうか。
それか、沢山同じような物があるとさらに何かあると思われるからかも? うん。若干メタ視点ではあるけれど、こちらの方が可能性は高そうだね。もしかしたら、全部埋めると見つからなくなるからという単純な理由なのかもしれないけど。
そんなことを考えながら、1つ目と同じくMPを500注いだところで光を強く発した。そして1つ目と同じように光の筋が伸びて3つ目を指し示したので、それに従いその先へ移動することにした。
最終的にMPを注いだ置物の数は3つだった。3つめの置物にMPを注ぎ終えたところで、最初の置物に向かって光の筋が伸びるただけで次の物へつながる筋は伸びて行かなかったので、MPを注ぐのはこれで最後ということだろう。
六芒星の魔法円になると思っていたのだけど予想が外れたな。その代わり消費したMPの量は500×3箇所で1500で済んだので良かったのだけど。
ただね。3つ目が終わった後に最初の物と繋がったのに何の変化もないから、どうしていいのかわからない状態なのだよね。
1つ目に光の筋が伸びているみたいだから、一応確認のために向かっているけどそこで何もなかったら完全に手詰まりになってしまう。
何かしら変化はあると良いのだけど。
1つ目の置物の場所まで戻ると新たに別方向、左右他の置物に伸びている光の筋からして新しく出た光の筋は草原の中心にむかって伸びているようだ。
その光景を見て安堵から、小さく息を吐く。
ともかく、中心に向かって伸びているということは次が最後ということだろうか。
光の筋に従って草原の中心に向かう。そして、その筋が指し示している物を見つけた。
「これかな」
最後の1つとして指し示された物は最初の置物を見つける前に見つけていた、少し成長している木の芽のような物。最初に見つけた時よりも少し大きくなっているような気がするけど、それと同じものだろう。
初めて見つけた時の表示は不破壊オブジェクトになっていたけれど、置物にMPを注いだからなのか今は薄らと光を放ち、【鑑定】で表示される内容に変化が生じていた。
[(ハウジングオブジェクト)ガーディアントレントドール Ra:Le Qu:A Du:1 / 750]
稀代のドールマスターが生み出したハウスへの不法侵入を防ぐ能力を持つトレント型のドール。移動速度は遅いものの自律行動可能。攻撃性能はないが、攻撃を反射する能力を持ち侵入しようとする者を阻み敷地内に入れないように行動する。
保有MPの枯渇により行動停止状態。そのため能力が使用できないため、経年劣化などの外的要因により耐久値が著しく低下している。
保有魔力:0 / 10000(休止状態)
オブジェクト能力:アタックリフレクション
オートリペア(損傷)
配置可能エリア:所有ハウジングエリア(ハウス内不可)
ガーディアントレント……ドール? というか
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