第47話 幻視


 ※一部設定の変更のお知らせ

 ヴァンパイアの別荘を隠すために使われていた魔法を迷彩魔法から幻影魔法に変更します。内容の変更はありません。

 迷彩程度じゃ他のプレイヤーにもバレますよね。迷彩じゃあ周囲に同化するだけだし……ということでの変更です。該当するエピソードに関してはすでに修正済みです。

 今更の変更で申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

 ――――― 



 

 とりあえずもう一度本の内容を確認する。


『目的地に着いたら目印となる置物に魔力を流し、その後に表示される指示に従って進めると幻影魔法が解かれ別荘が見えるようになる。そしてこの本を使いハウスがある土地の中に入り、所有者の設定を済ませればその別荘は君のものだ』


 うん。およそ覚えている通りだ。

 それで、問題はその目印が見当たらないことなのだけど、本には置物としか書かれていないからどんなものなのかよくわからないのだよね。

 もしかして目印って結構小さいのかな。

 その置物のサイズが小さいのなら辺り一面草が生い茂っているし、その下に隠れてしまっているとかはありそうだ。


 それに家を隠すために幻影魔法をかけた当時は人が住んでいたはずで、そうなれば家の周辺は手入れをしていただろうから、こんなに草が生い茂ってはいなかっただろう。

 この状態は本を書いた人にとって想定外のことなのかもしれない。まさかこの本が見つかるまでに100年もかかるとは思っていなかっただろうし。


 まあ、流石にハウスを受け取る依頼になっているから、依頼を進めるために必要な目印がなくなっているということはないだろう。となればこの草原の中からその目印を見つけ出さないといけないのか。

 一瞬で草刈りとかが出来れば楽なのだけど、そんなことは出来ないし面倒だなぁ。でも見つけたらハウスが手に入るからやるけど。


 意を決して草原の中に入る。

 【感知】を使った限り少なくともこの場所にはエネミーはいないようだ。これなら探すのが楽なので助かる。

 足元に生えている草の丈は膝より少し下。大体30センチくらいで大きいので40は言っていないくらい。廃村を出てすぐの草原よりは背が低いので、地面に落ちている物を探すのは楽そう。

 あそこは草丈が1メートル近いから中を進んでいくのも大変だ。それに草丈があるせいでその中にエネミーが居ても気づくにくいし、意外と気が向けない場所である。まあ、その分小麦とか採取できるアイテムが多いからプレイヤーがいなくなることはないのだけど――


「っ!?」


 草原に入って数歩進んだところで突然目の前に巨大な何かが現れた。

 咄嗟に距離を取ろうとしたことでまだ手に持っていた本を落としかけ、再度落とさないようにインベントリの中にしまう。


「シュロロロ」

「え? 大きな蛇?」


 ここに来るまでも何度も【感知】を使い、周囲の状況を確認していし、草原に入る前に使った【感知】ではエネミーを示す赤い点どころか敵対状態ではない存在を示す点も存在しなかった。

 なのになぜ目の前に出て来たのか。これだと何もないところから目の前の大蛇が出て来たということになってしまう。


 シャドウダイブで草の影の中に隠れていた? いや、シャドウダイブは草の影には入れない仕様だったはず。

 シャドウダイブはある程度サイズのある影にしか入れないし、固定された物が影の上にある場合は入れない。草は後者の固定物に該当するから入れないのだ。


 どういうことなのか。

 目の前に存在する蛇はとても巨大だ。見る限り頭から尾の先まで10メートル以上はありそうだ。胴回りに至っては、周囲に生えている草丈よりも太い。

 どう考えても今まで気づけなかった要素がない。


「シャァー!」


 疑問は尽きない。しかし、そんなことはお構いなしに目の前も突如として姿を現した蛇は攻撃してくる。


 噛みつこうと口を開けた状態で迫ってきた蛇の頭をかわす。

 サイズがとても大きいので迫力があり怖いが、大きい分そこまで早い攻撃ではないので回避するのはそこまで難しくはない。

 攻撃を回避したところで【鑑定】を使い相手を探る。



[(もンスター)ファントム・パイソン Lv:28 Att:毒]

 HP:4250 / 4250

 MP:280 / 280

 スキル:■

 状態:‐‐


 

 普通に強い。

 分類がモンスターだからレアだったりユニークだったりするわけでもないので通常のモブエネミー扱いなのだろうけど。

 【鑑定】で見た感じ強さで言えばロックワイバーンの次くらいには強そう。まあ、ロックワイバーンはレアモンスだけど。

 ただMPが低めなので、そこそこ早いパワーファイターって感じだろうか。それなら回避して攻撃を繰り返せば普通に勝てると思う。特殊行動はあるだろうから断言はできないけれど。


 

 しばらく攻撃を躱して攻撃の流れを繰り返していたのだけど……こいつ思ったほど強くはないな? というか弱い?

 たぶんフォレストスラッシュディアより弱い。フォレストベアよりは強いだろうけど、フォレストシャドウウルフ単体と同じかそれよりも弱いかもしれない。

 今ならあの犬単体であればそこまで苦戦はしないし。群れで来たら話は変わるけどね。


 VITとMNDが高いのかダメージが通り難いので倒すまで時間は掛かりそうだけど、ほとんど苦戦することはなさそう。

 そもそも攻撃パターンが噛み付きと大きな体を使った薙ぎ払いしかないから躱すのが容易。しかもほとんど移動しないし、蛇型のエネミーでよくみられる、巻き付き攻撃や尻尾を使って攻撃をして来ることも一切ない。そもそも、本当に狙って攻撃しているのかも怪しいし、さらにHPを削っても特殊行動をしない。

 モブエネミーの中には特殊行動をしないのもいるけれど、このクラスになればない方がおかしい。


 これはちょっと不自然だよね。確実とは言えないけれど。

 ただ普通に倒せそうだから。そういうエネミーってだけの可能性も、うーん?


 HPを確認するために【鑑定】を使ったことであることに気付いた。


 【鑑定】で表示されている情報の中にあるエネミーの分類、モンスターじゃなくてもンスター。『モ』がカタカナじゃなくてひらがなになっているのだけど。これはどういうことなのか?

 ただの誤字? ううん、分類の表記だからこのエネミーだけ間違っている何てことはないはず。なら意図して間違えているということ。

 って、よく見たら私の方にスタック(10)の幻視の状態異常が付いているのだけど!?

 状態異常が付与されているような攻撃は食らっていないし、それらしきスキルを食らった覚えもないのにどのタイミングで食らったのだろうか。


 

 ―――――

 本文中にも出ていますがもンスターのもは誤字ではないです。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る