第46話 目的地に着いた…のだけど

 

 森の中から廃村に戻り一旦ログアウト。

 移動中に突然フィールドBOSSのシーサーペントとの戦闘開始アナウンスがあって驚いたけれど、すぐに終了したことに呆気に取られた。

 ログアウトしてから調べた感じ現段階で勝てるような相手ではなかったし、プレイヤーがサウリスタの沖合に出る方法も確立していなかったから当然の結果だったのだろう。LV60のレイドBOSSとか、たぶんもう一回レベルキャップ解放しないと勝てないだろうし。


 そして、夕飯を食べた後に再度ログインしたところで認識阻害の効果を確かめるために一時的に兄とフレンド状態を解除した。

 兄が既にログインしていることはわかっていたので、そのまま兄たちがいる場所に行き効果を確かめた。


 結果として、認識阻害の効果がしっかりと発揮されていることがわかった。

 兄1人だけ私の存在に気づかないというのは見ていて少し滑稽で面白かったのだけど、フレンド状態を戻した後に解除されていたことに気づき絶望したような表情の兄を見て結構罪悪感を覚えたので、次は先に断りを入れてからすることにしよう。

 思えば、装備している物を変えて近付くタイミングさえ知らせなければ検証はできたからね。


 認識阻害の効果を確かめた後はインベントリの中身をギルド倉庫に預けるために一旦セントリウスに戻った。ギルド倉庫に使わないアイテムを預けた後は第3エリアには戻らずにその足でガルスの工房へ行き、手持ちの素材で製作できるだけの強化剤を作り、他のアイテムを作りながらログアウトの時間まで熟練度稼ぎをし続けた。



 翌日の朝、いつもより少し早い時間にログイン。そしてすぐに宿屋を出て第3エリアに向かう。


 昨日、本に書かれた場所へ向かった時間はリアルの昼過ぎだった。

 よく考えてみれば平日とはいえ、昼を過ぎれば他のプレイヤーの数もそれなりにいるわけだ。そんな中でコソコソと何かあると言わんばかりの態度で森の中に入っていけば、気になってついてくるプレイヤーが居てもおかしくはない。

 まあ、昨日ついてきていたストーカークランのプレイヤーたちは常習犯らしいから、コソコソしていなくてもついてきていたとは思うけどね。


 だから、プレイヤーの数が少ない朝早い時間に向かってしまうことにしたのだ。さすがにストーカークランのプレイヤーとはいえ四六時中ずっとログインしていることはないはず。というか連続ログイン制限があるから不可能なのだけど。


 そいうわけで他のプレイヤーが増える前にさっさと森の中に入ってしまおう。森の中に入ってしまえば偶然でもない限り、他のプレイヤーと遭遇することはないだろうからね。


 リアル早朝の時間帯はゲーム内だと昼に当たるのでシャドウダイブは使えない。出来ればシャドウエスケープを使いながら移動して森の中まで移動したいところだけど、残念ながらそれは出来ないので昨日以上に警戒しながら森の中に入る直前にシャドウダイブを使いすっと中に移動。


 後ろから他のプレイヤーが追ってきていないかの確認をしながら途中、素材があったとしても拾い易い場所以外にあるものは無視して出来る限り時間をかけずに先に進む。

 途中で何度か遭遇したフォレストベアを無視するか一撃で倒し、同じく遭遇したフォレストスラッシュディアは流石に無視は出来ないので弱点をついて短時間で倒す。

 幸い、複数体で出てくるあの犬は出てくることは無かったので、割りと余裕で森の中を進むことができた。


 しばらく進んだところで後ろから他のプレイヤーが追ってきていないと確信が持てたので、移動速度を落とす。

 MAPを確認すると昨日到達した所よりも少し奥の方なので、ここからは慎重に進んだ方がいいだろう。ただ、昨日今日とここに来るまでに遭遇したエネミーの種類から、ここから先で出現するエネミーの種類が変わるような感じはない。


 まあ、代わりにエネミーの出現率はフィールドの奥に進めば上がるのが常だし、同じエネミーでもLVが上の個体が出てくるようになると思うので、ここに来るまでと同じように倒せるかは不明だ。そこは注意しておいた方が良いだろうね。それに昨日のように突然グランドディアが出てくる可能性もあるので、怪しい反応があったらすぐに逃げられるよう警戒もしておく。




 しばらく警戒しながら進むこと2時間弱、ようやく目的地に到着。


 途中、またグランドディアに遭遇するかもしれないと警戒していたのだけど、遭遇するどころか影を見ることもなく杞憂に終わった。その代わり新規エネミーとしてトレントが出て来たけれど、襲われるよりも先に気付けたので苦戦するようなことはなかった。

 トレントを倒した際にトレントの木材が手に入った。モンスター素材や鉱石素材は結構種類があるのだけど、木材は余り種類が無いので意外と貴重な素材だと思う。なので、気付いた時には倒すようにしよう。


 目的の場所として本に記載されていたここは、他の場所に比べてポッカリと何もない空間が広がっていた。

 森の中に草原が広がっている、そんな感じの場所。昨日、グランドディアに遭遇した後で休憩をとった場所よりも広い空間なわりに本当に何もなく、確実にここには何かあります、といった感じの場所だった。ただ、何かあるにしても目立つようなものは一つもなく、物が手に入る、というよりもここで何かに遭遇します、といった感じの方が想像しやすい場所だ。


 さて、後は本に書かれていた目印となっているものを見つけないといけないのだけど……それ、どこにあるの? ちょっとでも目立つような感じのものなんて何もないのだけど?


 まさか、目印として指定されている物が消失しているとかじゃないよね? 森の中にある朽ちかけの倒木とか、たぶん100年前にあったスタンピードの結果だろうし、家とかもぼろぼろになっているから、それもないとは言えない。もしくは別のフラグを踏まないと次に進めないとか。

 ……ありそう。


 ざっと見渡した限り、草しか生えていない森の中に存在する開けた空間を前に私はどうしたものかと頭を悩ませた。

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