第43話 つけられている?
セントリウスから防壁を抜けて廃村へ向かう。
途中、ゴフテスとの再戦ウィンドウが出たので移動時間短縮のために戦うことに。
あっさりとは言わないまでもそこまで苦戦することなく戦いを終え、BOSSエリアの外へ出た。
外へ出ればすぐに廃村に直行になるので特に移動することなく村の中へ。
最近復興度が50%を超えた廃村の中は、少し前、ワイバーンの卵の件の際に訪れた時に比べて整った感じに見える。あの時はもう少し掘立て小屋の数があったと記憶していたが、今では小さいながらもしっかりとした家がいくつか並んでいるのが確認できた。
最初にここに来た時はもう少し時間がかかるものと想定していたけど、現状を見る限りこの状況ならそう時間はかからないかもしれない。
廃村の中を確認しながら歩く。リアルでは平日の昼過ぎという時間の関係で兄たちは誰もいないが、特別用事もないため会う必要はない。
途中、私が最初に訪れた時に放牧地かもしれないと想像していた場所の前を通りかかったのだけれど、そこは耕され畑になっていた。もとより元あった形通りに復興する必要はないので問題はないと思うけど、他の似たような場所も同じように畑に変わってしまっているので少々畑の面積が多いようにも感じる。
これからはこの村を使うのはプレイヤーの方が多いだろうし、これでも良いのかな。
ん? いや、村が復興すればここにも住民が来るだろうし、やっぱりプレイヤー目線だけで復興進めるのは良くないのでは?
まあ、その辺の調整は兄たちがやるだろうし気にしなくてもいいか。
それで、平日の昼とはいえ私と同じようにログインしているプレイヤーはそれなりにいる。その中を歩いて新しく装備しているコートとメガネの効果を確認していく。
軽くプレイヤーの近くを移動することで確認してみたけれど、今のところ認識阻害と隠蔽強化の効果は機能しているのかはわからない。
一応、私の存在に気付いているプレイヤーも居た。しかし、多くは一度見ただけでそれ以上こちらに視線を向けることはなく作業に戻っていった。
うーん。これじゃあ単純に興味がないだけなのか、認識阻害の効果が出ているのかがわからない。何となく反応を見る限り興味がないだけみたいだし、効果の確認は出来ないか。
いっそのこと、一時的に兄のフレンド登録を切って確認してみるって手段があるのだけど、それはそれで後が面倒だしなぁ。
そもそも認識阻害の効果を確認するには作業中のプレイヤーは向いていない。もとより、私を私と認識、もしくは2位と認識した上で気にしているプレイヤーでないと効果を発揮しないはず。
これはもう少し適当に歩き回って、私の事を気にするプレイヤーが居なければ効果があったと思えばいいだろうか。そこまでしっかりと確認したい訳ではないし、時間もかける予定もない。
しばらく廃村の中を歩き回ったものの、認識阻害の効果をあまり実感できないまま30分ほど時間が過ぎた。
これは駄目だね。やはりここは兄を実験台にするしかないか。ログイン時間を合わせてフレンドを解除したことを悟らせないようにしないといけないから面倒なのだけど、仕方ないか。
そうなると、兄たちなら夜にはログインしてくるだろうし、そのタイミングか合わなければ明日にでも確認すればいい感じか。
そう判断して私はインベントリの中を確認した後、廃村からフィールド出て当初の目的である素材集めと本に書かれたハウスを探しに向かうことにした。
廃村を出てから道なりに少し進んだ所で一旦足を止め、道の脇に広がる草原の中に入り、素材を集めることにする。
長時間ここで採取をする意味は薄いし、今回は1時間くらい続けて、それから森の中に入ることにしよう。
周囲を見渡すと同じように素材を集めているプレイヤーの姿が背の高い草の間からちらほら確認できた。そして採取に集中しているのか他のプレイヤーに興味がないのかこちらをじっくりと確認してくる様子はない。
中には最近のアプデで出現するようになったエネミーと戦っているプレイヤーも居るようだ。
まあ、前と違ってエネミーが出てくるようになって他のプレイヤーを気に掛けるほどの余裕はなくなったし、気にしたところで大して意味もないから普通はこういう反応だよね。
そう考えながら私のもとへ飛び掛かってきた新エネミーであるビッグラビットの攻撃をギリギリのところで躱し、攻撃を加える。NAMEの通りただ大きいウサギだとしても、第3エリアに出現するエネミーだけあってさすがに1撃では倒すことは出来ない。とは言え、分類上はフォレストベアと同じ獣カテゴリのエネミーなので特殊な攻撃をして来るわけでもなく、難なく倒せる相手だ。
数度攻撃をかわしつつ、こちらから攻撃を加えることであっさりとビッグラビットのHPは尽き、いくつかの素材を残しポリゴンになって消えていった。
手に入った素材は毛皮と肉。まあ、多少質が良くなったウサギ素材だね。正直そこまで倒すことに旨みはないかな。倒し易い部類ではあるけど、倒したところで素材は微妙か。LVも16だし貰える経験値も少なそう。
そこからしばらく、草原で採取できる素材を集めつつ襲って来るエネミーを捌いていった。中には虫系のエネミーであるシザーマンティスが出て来たが、ビッグラビット同様にそこまで強いエネミーではないので苦戦することはなかった。
一応このエネミーはモンスターに分類されるので極々稀に魔石(極小)をドロップするらしいのだけど、今回は1度も手に入れることはなく予定の時間になってしまったので、魔石に関してはまだ次回ということに。
次があるかはわからないけどね。
草原を抜けて森の中に入っていく。今回進む方向は、私が最初に居た初期地点とは異なる方向。廃村から伸びる道を中線としたらほぼ真逆の方向へ進むこととなる。
マップを見る限りイスタット方面、いやそれよりはもっと第3エリアの奥の方、北側へ進むことになるのか。
古きヴァンパイアの日記に載っている地図って結構大雑把な物だから、廃村から見た方向とおおよその場所しかわからないのだよね。
一応、その場所はマップのマーク機能を使って記録してあるから、それを確認しながら進めば迷うことはないだろうけれど、もうちょっと正確な位置を示せるような地図を載せておいて欲しかったかな。マップもそこまで細かく表示されている物ではないし。
まあ、宝探しみたいでこれはこれで面白いとは思うのだけど場所がねぇ。
森の中ってことはフォレストシャドウウルフが当たり前のように出て来るだろうし、位置的にフォレストスラッシュディアも出てきそう。
どちらも今なら倒せる相手になってはいるけれど、他のエネミーと違って楽に倒せる相手ではないから面倒なのだよね。
一応フォレストスラッシュディアなら逃げることは出来る。しかし、フォレストシャドウウルフは群れで襲い掛かって来るので基本的に逃げることは不可能なのだ。それに群れであるので一戦闘ですべて倒すのに時間がかかるうえ、戦闘中はいつも以上に気を張らないといけないから精神的にも疲れる。
そんなことを考えても、森の中を進まないと目的地にはたどり着けないので、行かないといけないのだけど、面倒だと思うのは仕方ないよね。
そんなことを考えながら周囲を【感知】で探りつつ、【隠蔽】を意識して慎重に進んで行く。
この辺りは始めて入る方向ではあるが、その森の中は今まで入ったことのある場所とそう変わることはなく、背の高い木々が生い茂り、その葉が日の光を遮る。それを透過した光が淡く地面を照らしていた。
1時間程進んだが、今のところ採取できるアイテムに変わりはない。遭遇したエネミーも今のところフォレストベアだけなので、こちらも変わりはないだろう。
フォレストシャドウウルフも【感知】の範囲に入ってきている様子はない。
順調に進めているかな。このまま行けば何事もなく目的地にたどり着けるかもしれないね。
そう思った瞬間、【感知】が反応し、それにより表示された簡易マップに自身以外の存在が表示された。
位置的に私の後方20メートルといったところにいるようだ。
突然現れたことで一瞬、フォレストシャドウウルフかもしれないと警戒したのだけれど、マップに表示されている点の色から非敵性存在、プレイヤーもしくは住民であることがわかったので、危険性は低いと判断し警戒を少し緩める。
一旦足を止め【感知】のマップをしっかりと確認する。表示されている数は6。纏まって移動していることから住民というよりもプレイヤーのようだ。
プレイヤーなら問題ないと思うけど、この広い森の中で偶然、私の後方辺りに纏まっていることってあるのだろうか? もしエネミーを狩っていたとすれば、獲物の横取りなどを警戒して逆に離れていくと思うのだけど。
まさかとは思うけど、後をつけられていたわけではないよね?
―――――
サブタイトルは後で良いのを思いついたら修正します
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