第42話 コート新調


 ガルスの指示で強化剤を作り続けること3日。


 どうにかQu:Bの強化剤が出来始めたので、まだQuが安定しているとは言えないけれど一旦強化剤製作は止めにする。

 理由は、シンプルに素材が無いから。そもそも強化剤は2種類あるからどちらも同じようにQuを安定させるには相当な数が必要になるのは明確。


 まあ、そんな感じでどう考えてもすぐに達成できないことはわかったので、早々に作業の方は切り上げた。

 ただ、それでも持っていた分の素材を使って強化剤は作れるだけ作ったので、それを使って早急に欲しかったコートと追加でもう1つ製作した。



[(アクセサリー)認識阻害の劣竜隠形コート+ Ra:PM Qu:B Du:150/150 SAS:ー]

 とあるプレイヤーが作り出した身に着けるだけで認識阻害能力を得ることができる黒味を帯びたセミロングコート。表側に認識を阻害するモンスターの素材を用い、防御性能を上げるために裏打ちとしてワイバーンの翼膜を使用している。また、あるモンスターの素材をエンチャントすることにより更なる効果を得ている。

 追加能力:認識阻害(微) 風属性付与(微) VIT+44 MND+46 AGI+12

 装備効果:気配希薄化(小) 認識阻害(小) 風属性耐性(小) 静音(小) 刺突耐性(劣) VIT+30 MND+20 



 レシピにあった普通のコートを参考に作っていたにも拘らず、何故かPM装備になってしまった。まあ、途中いろいろ付け加えたのが原因かもしれない。

 いきなり製作品の名前を決めなくてはならなくなってしまったので、性能から適当に無難な名前? をつけたのだけど、ワイバーンの素材以外何を使ったのか分からない名前にしてしまったのはちょっと失敗したかもしれない。


 このコートの問題点を上げるとすれば、ワイバーンの翼膜を使ったから刺突攻撃に劣耐性がついてしまったこと。これは刺突属性の攻撃を受けた時にこのコートの性能を半分しか発揮できない上に、耐久値を通常より多く消費してしまうものだ。まあ、その代わりに異常に高いステータスアップがついているのでそれで補えないこともないから良いのだけど。


 というかワイバーンの素材を使うとここまでの性能を出せるのか。フィールドBOSSだしその素材を使った装備が弱いわけがないけれど、それでもここまでステータスが上がるような装備になるとは思っていなかった。しかもこのコート防具枠じゃなくてアクセサリー枠なのだよね。やばいよ。


 でもガルスに作ってもらった[森岩影狼のコート]に比べれば装備効果のVITは落ちているし、能力の数も少ない。

 ステータスアップ分は素材の影響だろうから別としても、能力の数はガルスの腕の良さを示しているよね。


 私も出来れば隠蔽系強化の能力を付けたかったのだけど、結局付けられなかったし、これでも4種類……いや5種類か。それだけの素材を使っている。ワイバーン、森影狼、影黒兎、紫隠梟、それと黒曜羊。

 紫隠梟と黒曜羊は第1エリアのレアBOSS。影黒兎は第2エリアの森に出るウエストリアに生息している影ウサギの上位種。

 どれも出現率が低すぎて手に入れられた素材の数が少なかったけれど、思い切って使ってみた。残念なことに最後に出した黒曜羊の素材の効果は一切出なかったけれど。


 それで、もう1つの方は頭装備。こっちは主に【細工】で製作したもので、コートに隠蔽能力強化の能力がつかなかったから急遽製作した感じ。それでもしっかり強化しているから、十分な性能は叩き出している。



[(装備)認識阻害眼鏡 Ra:Uc Qu:A Du:120/120 SAS:64800]

 付けた者を他の者から認識し難くする眼鏡。戦闘時に激しく動いてもズレないよう、蔓とその先の部分には特殊な加工がされている。レンズは入っているが伊達であり、怪しく光を反射する以外に特別な能力はない。あくまでもこの装備の本体はフレームである。茶縁。

 追加能力:隠蔽能力強化(中) 認識阻害(微) VIT+10 MND+20 INT+15

 装備効果:認識阻害(中) 隠蔽能力強化(小)  VIT+10 MND+10 



 作ったのは眼鏡。他の候補もあったのだけど無難な物にした。ベネチアンマスクとかパンダの被り物とか鳥面とかいろいろ。さすがに隠蔽能力がついたとしてもその物自体で目立ちそうだし視界も悪そうだから却下したのだよね。たまに派手な物を付けているプレイヤーを見かけるけど、嘘でしょって思って2度見しちゃうよね。それに作ったとしても付ける勇気はないし。


 能力は隠蔽系に全振りしているから、認識阻害と隠蔽能力強化以外の効果はないけれど、今まで装備していた装備に比べて雲泥の差なので不満点は何もない。前の装備が弱すぎたってことでもあるのだけど。


 コートを装備した上でこのメガネを装備すればフレンド登録しているプレイヤー以外にはほぼ私だと気づかれないようになったはず。

 ああ、同じ工房に出入りするってことでもちもっちとはフレンド登録をすませている。毎回誰? って反応をされるのは嫌だし、もちもっち自体問題のあるプレイヤーでもないからね。


 ついでに、この装備を見たガルスからは性能は良いがエンチャントによるゴリ押し感がすごいという評価をもらっている。褒められていたのかどうかはわからないけれど、実際その通りだし、そもそも私は錬金をメインにやっているのだから、この言葉は今のところ褒め言葉として受け取っている。


 他の装備の更新は終わっていないけれど、主目的だったコートの新調も終わったし、新しく頭装備も作ったから、しばらくの間は別のことでもしよう。


 まずは強化剤を作るための素材がなくなってしまったからそれを集めにいけないといけないかな。

 一応、兄に採取依頼を出しているとはいえ、復興の合間にしか採取に行けないだろうし、あくまでもフィールドに出るついでに採取してもらっているだけだからどうしても集まる数は少ない。

 やっぱり自らフィールドに出て集めた方が良いはずだ。


 あとは、結構放置してしまっているあの日記に書かれていたハウスについてだね。なるべく早くあの日記に示されていた場所まで行って、どういうものなのか、次の流れはどうなのかを確認しておいた方がいいだろうね。

 どう考えてもすんなりいくとは思えないし。


 では、早速第3エリアの方へ向かうとしよう。



_____

これでようやく第3エリアが主な活動場所になります。

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