第41話 製作アイテムの習熟度
簡易エンチャントで必要な数だけ森熊の毛皮を強化した後、それに強化剤を使うのだけど、強化剤は液体状のアイテムなので毛皮に掛けて使うわけなのだよね。液体のアイテムをこのまま掛けても大丈夫なのだろうかと、少し不安になった。
こぼれないのかなこれ。いや、こぼれるよね? このままかけたら絶対毛皮から垂れる。しかも、これだと毛皮1枚分にしか使えないから……あっ。そうか強化剤を作った鍋に毛皮を入れてそこで使えばいいのか。
製作する物を決めた後にかたしていた鍋を机の上に置く。その中に簡易エンチャントで強化した森熊の毛皮を入れ、その上から強化剤をかけていく。
これから製作する物が腰・胴用の2枠装備なため使う強化剤は2つなので、1つ目の強化剤をかけ終えると2本目も同じように鍋の中にある森熊の毛皮にかけていく。
強化剤は毛皮に掛かるとそのまま染み込んで行き、鍋の底に溜まるようなことはなかった。
……これは別に鍋は必要なかったやつだな?
強化する素材を纏めて置いておいてその上から掛ければ問題なかった感じかも。次からはそのまま使うことにしよう。
強化剤を掛け終わった毛皮を鍋から取り出す。見た目的には何の変化はないし、【鑑定】してみたけど説明文にも変化はない。
これは簡易エンチャント強化した素材と同じパターンで、内部データだけ変化するみたいだね。SASが少し上がっているから何かしらの変化があったことはわかるけど、それ以外は何もわからない。この素材を使ってアイテムを作ってみないと本当に強化されているのかわからない厄介なタイプ。
まあ、だからガルスはとりあえず一回使ってみろって指示を出したのだろう。
強化剤で強化した森熊の毛皮を使い上級採取師のツナギを作り始めて30分ほど。ようやく服が完成した。途中、【木工】でボタンを【細工】でピンを作った所為で少し時間がかかったけれど、その分納得できるものが出来たと思う。
[(防具)採取師のツナギ+ Ra:C Qu:B Du:120/120 SAS:72800]
採取師のために作られた服。戦闘用ではないが、採取中に襲われ難いように、なるべく自然に溶け込むような色合い、また採取時に負担なく体を動かせるようなデザインになっている。
装備部位:胴・腰
追加能力:STR+20 VIT+20+2 DEX+2 LUK+2
装備効果:採取アイテムのQuアップ(小) VIT+11 DEX+10 LUK+11
つよ……いのかな? 採取用の装備としては強いような気もする。普通の装備として見ればステ1つ毎の上昇量がそこまで大きくないから微妙だけど、ステータスの総上昇量は78とまあまあ。今装備している胴と腰の防具の合計が82だからそこまで差はないね。
というか、それを考えれば採取系の装備としてはかなり強いのか。ステータスアップ以外の装備効果が1つしかないから、そこで差があるのだけど。
ただやっぱり、ステが上がるのが4種もあるから、浅く広く感はあるかな。それに採取系の装備としてはSTRが上がる必要ないし、無駄感があるね。
それで強化剤の効果だけど、追加能力のSTRとVITの+20表記は森熊の毛皮を簡易エンチャントして得られたものだろうから、他の+2の表記が強化剤の効果なのだろう。となればQu:Dで本来の性能から+20%するだけの性能が今作った強化剤にはあるということだ。装備効果の中途半端な数値はボタンとピンの追加分かな。
これでQuが上がったらどのくらい防具の性能を上げることができるのだろうか。まあ、この時点で作ることができるレシピだから上位版もあるだろうし、そこまで大きな数値にはならないよね。良くて30%かな。
「おう、出来たのか」
「あ、はい」
製作物が出来上がったのを見計らってなのか、丁度いいタイミングでガルスが私の所に来た。
「これにしたのか。ちゃんと強化剤は2つ使ったか?」
ガルスの問いに私は首を縦に振って答える。
「ならいい。確認していいか?」
「どうぞ」
ガルスは私が作った採取師のツナギを手に持って確認していく。【鑑定】を使っていないのかじっくりと観察している。
「問題はないな。強化剤の方もしっかりと効果を発揮している。他の追加効果も乗っているが、これはさっき光っていたやつだよな?」
「そう」
「となると【錬金】によるものか。上昇量としてはかなり大きいがASの増加が駄目だな。Quと性能は悪くないが物にしては高ぎる。完全に製作者が使う用だな」
まあ、それ目的で作ったからね。本当に売るつもりだったら簡易エンチャントは1回か2回に抑える。そうしないとこれと同じで能力の割にASが高すぎるて売れなくなる。
「ま、これで強化剤の使い方も効果の出方もわかっただろ」
「うん」
「それじゃあ次は、と言いたいところだが、この先に進む前に強化剤をもう少し安定して作れるようにならないと駄目だな」
ぬ? もっと作れと?
「出来ればQu:Bで安定させられるようになるのが目標だな。それ以上だと、素材のQuも絡んで来るから安定させるのは相当難しいが、それ以外であればそこまで素材の良し悪しはあまり影響しない。さすがに低Quの素材しか使わないとなるとCが限界だろうが」
え? もしかして装備とか元から数を作らない物以外、習熟度とかのマスクデータが存在している?
そういえば最近ポーションは殆どQu:Bで固定されているな。使っている素材のQuは結構ばらつきがあるのだけど、そういう理由だったのか。たまにQu:Aが出来るけど、ガルスの話が本当ならそれは素材の影響ということのようだ。
私が首をかしげて考えている姿を見て納得していないと思ったのか、ガルスが続けて説明する。
「基本的に製作数の少ない消費アイテムはQuが安定し難い。それは、そのアイテムに対する理解度が低いからだ。だからいくつも同じアイテムを作ることでQuを安定させることができる。普段から使うような消費アイテムであれば、意識せずとも数を作ることになるからこれを気にする必要はないのだが、強化剤となると頻繁に数を作るものでもないからな」
「あぁ、たしかに」
強化剤とかはたしかに必要なとき以外はほとんど作らないだろうね。使う素材の事を考慮すると委託に流してもほとんど利益が出ないし、他のプレイヤーに売るメリットもそれほどない。使用目的を考えれば、自分で使う分くらいしか作らない物だ。
「それに数を作っていれば失敗する確率が減るし、大成功の確率が上がる。消費アイテムに関してはなるべく数を熟しておいた方が良いんだ」
「そうだったんですか」
横で話を聞いていたのかもちもっちがそう言葉を出した。
ポーションでたまに出来るQu:Aはこれが起因しているのもありそう。大成功って程じゃないけど成功って感じかな?
「もちもっちには同じタイミングで説明したと思うが、まさか聞き流していたのか?」
「すいません。もしかしたら他のことを考えていて聞いていなかったかもしれません」
「今回は気付けたからよかったが、次からはしっかり聞いておけよ。聞き逃しても質問されない限り再度説明することはないからな」
「はい」
私も気を付けておかないと。
聞き逃すようなことは今のところないけれど、たまに他のことを考えながら話を聞いている身としては、明日は我が身になりかねない。
特に説明などは聞き逃していたとしても、聞き逃していたことに気付けないと質問すらできない。今回のような内容なら普通質問するような内容ではないから致命的だよね。知らなくても問題はないけれど、知っていた方が良い情報だし。
「そういうわけでアユはもう少し強化剤の製作だ」
「わかりました」
ちゃんとした理由があるからしっかりやるよ。ただ、素材の方が足りないから委託で買うか取りに行かないといけないけれど。
ますは今持っている素材で作れるだけ作って、その後はギルドで委託をのぞいてから第3エリアかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます