第25話 カッチカチやぞ!
硬い。凄く硬い。
ダメージが通らない。
カッチカチである。
ロックワイバーンと戦い始めて10分ほど。ようやく与えたダメージが1000と少しを越えた。少し前にHPが70%を下回ったことでロックワイバーンが特殊行動のストンプをして来たけど、事前動作があからさまだったのでそれは少し距離を取った上でジャンプして回避できた。
ローリスクなダメージ源だった爆弾石は使い切った。まあ、元から数が少なかったから戦闘開始数分も経たない内に無くなったけどね。
「ダークランス」
出来ればブラッドウェポンで攻撃したいことろだけど、ブラッドウェポンってどうしても普通の武器に比べてDuが低いし、攻撃する度に減るDuは普通の武器よりも多い。その分手元に戻せばDuを修復することが出来るけど、MPを対価にして修復しているため安定して修復できるわけでもない。
しかも、表皮の硬い部分にブラッドウェポンを当てるといつも以上にDuが減る仕様。ロックイーターと違ってDuの減り難い柔らかい部分がほとんどないこいつでは、ブラッドウェポンが使えないので厄介極まりない。
おそらく柔らかいであろう関節に対して攻撃をしたいところだけど、常に動き回っているような相手には無理な話。
ゴツイ見た目とはいえワイバーンである以上翼持ちで、翼と言うか翼膜がおそらく一番柔らかいところのはずだけど、こいつはここも硬い。翼膜ならさすがに貫通すると想定していたのにしなかったから、貫通耐性持ちの可能性が高い。
故にまともにダメージを出せるのは【闇魔法】だけ。【影魔法】と言うかシャドウニードルは固定の影が無いと発動がほぼ不可能だから、基本的に走り続けている状態かつ陽の出ている時間ではまともに使うことが出来ない。
ロックイーターみたいに移動速度がそこまで早くなければ使えないことはないのだけど、ロックワイバーンは普通にアッシュボアくらいの速度で移動しているから無理だった。
ためしにと使ってみた【毒魔法】も効果はほとんどなし。まあ、属性からして毒は効かないことは理解していたけど、麻痺もスタックがほとんど溜まらなかったのは想定外だった。毒属性のベテュードには効いたから効くかもしれないと思っていたけど、まさかの耐性持ち。
これまでの経験からして毒属性持ちのエネミーは総じて【毒魔法】で取得できる状態異常は効かないと思っておいた方が良いかな。思えばベテュードも効果があったとはいえ効きやすかったわけではないし。
「……」
ロックワイバーンが走り回る。その際に踏みつけられ壊れる採掘ポイント。
止めて、壊さないで! 鉱石が! と思うけれど、止めることも出来ずにただそれを回避しながら横目で見ることしかできない。
採取ポイントとかって破壊された場合どうなるのだろうか。普通に採取した場合はゲーム内12時間で復活するのだけど、破壊された場合はよくわからない。そもそも破壊できるとは思っていなかったし。
まあ、自分を優位に立たせるために採取ポイントを破壊するプレイヤーが出る可能性もあるからいずれ復活すると思うけど、どれくらいの期間でポイントが復活するのだろうか。
追いかけ回されながら時々回避。そして攻撃。
常にロックワイバーンよりも斜面の上になるように立ち回る。そうすることでロックワイバーンがことらに向かって来る時の速度を多少でも削ぐことが出来、回避することが容易になる。反対に私が斜面の下になれば逆にロックワイバーンの移動速度が速まる可能性があり、回避が難しくなるから、それは避けるべきことだ。
うーん。何か某狩りゲーをしている気分。ん? いや、今やっていることはほぼ同じことかも?
あのゲームは狩るのが主目的とは言え、武器や防具を作るための素材を手に入れる目的で獲物を狩るのが基本なのだから、今と状況は一緒ではないだろうか。
そう思ったらロックワイバーンがあのゲームに出て来る岩竜に見えて来た。まあ、あそこまで岩っぽくはないしスマートだけど。いやでも攻撃パターンは似てる?
「っダークブラスト」
あっと危ない。
若干パターンに入りかけていたからどうでもいい事を考えていた結果、ロックワイバーンが尻尾でそこら中に散らばっている礫をこちらに向けて弾き飛ばしてきていた。咄嗟に最近覚えたスキルを使ってこちらに飛翔する石礫いしつぶてを打ち落とす。
もう少し気付くのが遅かったら対処が間に合わなかったところだ。戦いの最中は余計な事を考えないで集中しないと駄目だね。
ダークブラストは【闇魔法】30%で覚えたスキル。
10%で覚えたダークバーストとは違い自分を中心にした攻撃ではなく、前方に闇属性の爆風を打ち出すもの。射程が短い代わりに威力と攻撃範囲がそこそこ広い攻撃魔法で、チャージの時間は普通、次に撃てるようになるまでちょっと長め。
ダークバーストよりはましだけど、射程が5メートルも無いから結構近付かないといけないし、発動時間が短いので使いどころが難しい。
今回みたいに正面から来る遠距離攻撃を打ち落とすのに使うことが出来るけれど、これも何処まで効果があるかわからないし一時的に視界が制限されるのもあまり良くない。それに他のスキルと違って2次スキルで覚えた物だからなのか、消費MPが最低でも50と結構高い。
今は問題ないけど、ブラッドウェポンを使っている時は形の維持とDuを回復させるために意外とMPの消費が激しいので、そういう時にはあまり使えないスキルだ。
やっぱり障壁とかの防御が出来るスキルを取得した方が良いかな。さすがにこういう回避が難しいフィールドでの戦闘もあるから、シャドウダイブ頼りの回避からそろそろ脱却した方が良い気がする。
「ギャアオアアァァア!」
「ダークショット」
迫って来るロックワイバーンに攻撃を当てる。ちまちま攻撃してそろそろHPが半分を切るか切らないかと言ったところ。
本当に時間が掛かる相手だ。ここまでで30分以上が経過している。
坑道の奥に居たゴーレムとは違って、どうにか倒せそうな感じがするから戦っているけど、このままだとまだ1時間近くはかかりそう。まさかこんなところで私の火力不足を実感するとは思っていなかった。
ん? いや、別に火力が低いわけではないか? 本来ならパーティーを組んで戦うべき相手にソロで挑んでいるのだからこれが普通かもしれない。
Du減るのを許容してもブラッドウェポンでの攻撃をしてみる? Duが減るとはいえダメージが0というわけではないので、多少の足しにはなるだろうか。
「ピアース」
スラッシュでは下手な部分にも当たってしまうのでピンポイント攻撃を選択する。狙いは目だったけどちょっとズレて目じり付近に当たった。
「ギャアアア!?」
目を狙われ、その近くに攻撃を受けたことでロックワイバーンが悲鳴を上げる。
あれ? 目から攻撃が外れたから弾かれると思ったけど普通に刺さったね。
Duの減少量はやっぱり多い。でも、最初に攻撃した翼膜よりは減りは少ない。
ううーん。意外と頭部は柔らかい? それとも目元だったから柔らかかったのか。……後者かな。頭蓋はどう考えても硬いだろうし。
「あっと」
定期的に使っていた【鑑定】を見ればロックワイバーンのHPが50%を切っている。
特殊行動がくる。そう思った時には既にロックワイバーンは何か、力を溜めるような姿勢を取っている。
「グゴギャアアアア!!」
咆哮。
ブレスなどの遠距離攻撃でなかったのは良かったけど、咆哮の衝撃を受けると同時に私の体は硬直して動けなくなる。
そしてロックワイバーンの咆哮が終わると同時に視界の端に表示されるスタン(3)の状態異常。
スタン(3)だから3秒間は何をしても動くことは出来ない。
視界に映る状態異常のマークを確認した後視線を戻すと、咆哮を終えてすぐにこちらへ突進してきているロックワイバーンが視界に映った。
攻撃してからすぐにある程度距離を取る戦い方をしていたから多少の距離はあるため、攻撃を食らう前にはスタンの状態異常から回復できるはず。ただ、さすがに横に回避するのは間に合わないかな。
―――――
ロックワイバーンは打撃攻撃に弱い。
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