第24話 指名手配犯! ってお前は!?
周囲を見渡し安全そうなルートを選んで進み、アイテムを手に入れながら途中襲い掛かってきたエネミーを倒しつつ、荒れた山肌を登ること2時間が経過。
これまでにエンカウントしたエネミーは3種類。坑道内にもいたムーブロックとこいつの上位種と思われるロールロック。
ロールロックはムーブロックに比べて動きの速いエネミーで、岩の体をしているくせにコットンマウス並みの早さで動き回ってきたため、対処が面倒だった。まあ、ムーブロックの上位種らしく魔法系スキルには凄く弱かったから、攻撃が当たりさえすれば倒すのは難しくなかったけど。
そして、最後に1匹。ロックイーターという全長2メートルくらいのオオトカゲ。たまに動物系の番組で見るインドネシアに居るような奴で、全体的にごつごつしていた。
ロックイーターという名前の通り岩を主食にしているようなエネミーで、その所為なのかやたらと表皮が堅かった。しかも他の2種とは異なり魔法系が弱点という訳でもなかったので最初は普通に手間取った。
堅い表皮を持っているからかあまり移動速度は速くなかったのと、途中でよくあるお腹側が柔らかくて弱点ということに気付き、それ以降はシャドウニードルを使うことで手間取ることなく倒せるようになった。
こいつがドロップする素材は見た目通りのごつごつした堅い表皮と太い尻尾だ。【裁縫】で使うには熟練度が足りなさそうな感じなので当分は簡易エンチャントに使うか、使えそうになるまで放置する予定だ。尻尾については正直美味しそうには思えないけど食材扱いだった。
あ、ロールロックがドロップする素材は、大半がただの石でたまに銅鉱石と言った感じだった。銅鉱石をドロップする確率は4回に1回、25%くらいだったので良いとは言えないけど、石しか落とさないムーブロックに比べれば大分マシではあるけど。
見える範囲にある採掘ポイントで鉱石を採掘しながら山頂へ向かって移動していく。
現段階の標高がどの程度なのか正確にはわからないけど、目に見える範囲に植物が生えている様子はないため、それなりに標高の高い位置まで移動してきているのだと思う。
新たな採掘ポイントを見つけたのでツルハシを使って鉱石を採掘する。
前にガチャで手に入れた中級ツルハシは既に破損してしまっているけれど、今は総合委託で予備として購入した同じ中級ツルハシを使っている。普通のツルハシでもよかったのだけど、何となく質の良い物を使いたかったので中級を購入したのだ。ついでに上級ツルハシも購入することは出来たけれど、装備条件が【採掘】の上位スキルが無いと駄目だったため購入はしていない。
採掘ポイントから鉱石が転がり落ちる。
今回手に入れたのは銀鉱石。悪くはない。当たりの部類だろう。ここ10か所くらいの採掘ポイントから出たアイテムは鉄鉱石・銅鉱石・銀鉱石の順で多い。石は殆どでなくなった。
そう言えば坑道とは違って爆弾石や爆弾岩がほとんど出ていないけど、坑道とは違って外部に晒されているから地表に出た爆弾石や岩は、雨風などの影響を受けて爆発してしまったという事なのだろうか?
「――――!!」
ん? 人の声? いやエネミーの鳴き声かな?
無心で採掘ポイントから鉱石を採掘をしていると、どこかから何かの音が聞こえて来た。聞こえてきた感じから山の上の方から聞こえて来た気がしたため、山頂方向へ視線を向ける。
「――――ぇ!」
また聞こえて来た音、というか声からしてプレイヤーのようだ。
ここまで登って来るまでに数人のプレイヤーとすれ違っているので、ここよりも高い場所に他のフレイヤーが居てもおかしくはない。だけど、今聞こえてきている音からしてこちらへ向かってそれなりの早さで移動してきているらしいことはわかる。
足場の悪い場所で走る、しかも下に向かってとなれば自殺行為に等しいと思うのだけど、何か理由があるのかな。……無い方がおかしいか。単に勢いが付き過ぎて足が止まらなくなってしまった可能性もあるけど、そうであれば早い内に転んで無理やり止まってもいいんだし、そうしない理由があるのだろう。
声の元を探していると、少し離れた上の方に後ろに何かを引き連れて山を走り下りてきているプレイヤーと思われる人影が3つが見えた。
こちらに近付いて来ているルートではないので問題は無いと思うけど、人影が近付いて来ると同時に地面の揺れが強くなってきている気がする。3つの影の後ろに舞う砂煙で見えづらいけど、もしかして複数のエネミーにでも追われているのかもしれない。
場合によっては数匹こちらに来るかもしれないから、もうちょっと離れた方が良いかな。
そう思い、場所を移動する。出来れば隠れるくらいはしたいところだけど、大きな岩とか隠れる場所が無いので出来ないし、シャドウダイブにしても今は日中なので影が少なく、所々にある岩の影に入ると最悪何かの衝撃で岩が動き、影が無くなりかねないので避ける。
まあ、余程他のプレイヤーのことを考えないプレイヤーではない限り、
「ぁぁああ?! あそこにプレイヤーが!!」
「あっち行けあっち!」
「ちょうどいいから擦り付ける!」
「いや駄目だろ!?」
そう叫びながらこちらに近付いてくるプレイヤー3人組。先頭を走っているプレイヤーが私に後ろに付いて来ているエネミーを擦り付けるって言っているけど、その後ろから付いて来ている2人は否定的。1人は私に避けるようジェスチャーを出している。
ただ、先頭を走っているプレイヤーの後ろをそのままついているから口だけかな。咄嗟について行かないという判断が出来ていないだけかも? 一応、避けるように指示を出してはいるし。
迫ってきているプレイヤーから逃げるように斜面を登る。足場の悪いところを登っているから速度が出ないため、戦闘になった場合を考えて装備を元に戻しておく。
「おい!? このままだとMPKになりかねないから進路変えろ!」
「偶然ならMPKにはならん!」
「はぁ!?」
口に出している段階で偶然はないよね。システム的にもアウト判定だと思う……と言うかあのプレイヤーたち、今まで見たことが無いマークを頭上に掲げているけどレッドNAMEだ。
うーん? あのマーク、最近どこかで見たような……掲示板かなぁ。
「偶然じゃない判定されても、どうせもうレッドなんだよ! なにやっても結果は変わらねぇ!」
「そ、そうだけど」
「いやいや?! 捕まったら絶対刑期増えるでしょ!?」
…………あ、ギルドから手配されたレッドNAMEプレイヤーに付くマークだ。見たのはイスタットの総合ギルドに張られている指名手配書に載っているやつだったかな。
ふむ、なるほどこれならわかり易い。ここに居なかったら多分もう見つかっているくらいには目立っているね。
「もういっそここで死んだ方が楽になれるのでは!?」
「街には戻れない。一部とはいえプレイヤーから恨まれているだろうから確かにそうかもしれない?!」
「俺は諦めねぇゾ! このまま逃げ切ってやる!」
あぁ、なるほど。この人たち坑道閉鎖の原因を作った人たちか。まあ、どの道レッドNAMEだし倒しても問題ないよね。1人明らかにあきらめの悪いのもいるみたいだし。
「そこのプレイヤー逃げ――」
「ごめんなさ――」
「「あ」」
「は?」
普通に採取に来ているあまり戦闘が得意ではないプレイヤーだと思われていたのか、私が足を止め武器を構えたことで3人のプレイヤーが呆けたような声を上げた。
「ですよねー。はは……」
「っざけっ!」
「あれ待って、このプレイヤー……」
猛ダッシュで駆け下りてきているため、攻撃されそうだと気付いてもそう簡単に進路を変えることが出来ず、3人はそのまま私の方へ突っ込んで来る。
それに合わせてまだ少し離れた位置にいるプレイヤーに向けてダークショットを放つ。
「ああああ!! クソがあっ!」
「あふん」
「いや、なんで??」
既にある程度ダメージを受けていたのか、首などの弱点に当たらなかった攻撃で1人がポリゴンとなった。残り2人の内1人は攻撃を受けたことで転び、1人は無理やり攻撃を避けた。
「ゲブン!?」
転んだ1人が後ろから付いて来ていたエネミーに轢かれて死亡。残りの1人はすぐに体勢を整えて逃げようとしていたので追撃を放つ。
よく見たら、追って来ているエネミー1匹だ。これならどうにかなるかもしれない。
「っしゃあ!! あ」
躱せたことを喜んでいたプレイヤーの後頭部に【血魔法】で作ったレイピアが刺さり、それが止めとなったのかポリゴンに変わっていった。
≪ワールドアナウンス
イスタットのイグレベス坑道で罪を犯し逃亡していた異邦者:レンスが討伐され、これにより投獄されました。
イスタットのイグレベス坑道で罪を犯し逃亡していた異邦者:アーベントが討伐され、これにより投獄されました。
イスタットのイグレベス坑道で罪を犯し逃亡していた異邦者:カンタルプが討伐され、これにより投獄されました。≫
≪ワールドアナウンス
イスタットのイグレベス坑道で罪を犯し逃亡していた者たちが全て投獄されました。これにより異邦者に対するイグレベス坑道の入場禁止令が解除されます≫
坑道の閉鎖が解除されたようだ。まあ、喜びたいところだけど今はそれどころじゃないのだけど。
「グロロロロ……」
いやまさか今の3人を追って来ていたのがこんなエネミーだったとは想定していなかったなぁ。
[(レアモンスター)ロックワイバーン LV:28 Att:土・毒]
HP:7326 / 8750
MP:518 / 560
スキル:■
状態:―
まさかのワイバーン君の再来! しかもおそらく亜種という。
……勝てるのだろうか、これ。
―――――
隠れる場所がほとんどない場所でしかも夜ではない環境
ついでにゴフテスよりも強い
指名手配犯の3人については逃げている途中で偶然ここを見つけ、隠れていた感じです。今回の流れは、手を出してはいけない相手に手を出してしまった結果です
※エピソードタイトルにある『お前』は、ワイバーン君のことです
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます